陥没乳頭(陥没乳首)の仮性・真性のイメージ図

陥没乳頭(陥没乳首)は、成人女性の約10%に見られる状態で、多くは仮性・真性のどちらかに分類されます。保存療法で改善する軽度のケースもあれば、手術が必要なケースもあります。

本記事では、陥没乳頭の原因と分類を解説します。保存療法と手術の違い、費用や保険適用の条件も、形成外科専門医監修のもとで紹介します。ご自身がどちらに近いか、チェックしながら読み進めてください。

この記事でわかること

  • 陥没乳頭(陥没乳首)の原因と、仮性・真性の見分け方
  • 保存療法で様子を見てよいケースと、手術が必要なケースの違い
  • 乳管温存法・乳管切離法という2種類の手術方法の違い
  • 手術の流れ、ダウンタイム、費用の目安
  • 保険が適用される条件と、対象にならないケース

陥没乳頭(陥没乳首)とは

陥没乳頭とは、乳頭(乳首)が皮膚の下に埋もれ、十分に突出していない状態です。成人女性の約10人に1人が経験する、身近な症状のひとつ。決して珍しい状態ではありません。

片側だけ陥没している方もいれば、両側に見られる方もいます。思春期から気づく方が多い一方、出産や授乳をきっかけに相談に来られる方も少なくありません。

似た名称の状態に「副乳」があります。これは脇や胸の周囲に余分な乳腺組織が生じるもので、陥没乳頭とは原因も対処法も異なります。混同しないよう、まずは診察で状態を正確に確認しましょう。

主な原因

陥没乳頭の原因は一つではなく、複数の要因が重なって起こると考えられています。

  • 乳頭を支える乳管束の発達不足
  • 線維状の索状物(瘢痕組織を含む)が乳頭を下方に引っ張ること
  • バストの発達に対して乳腺・乳管の発育バランスが崩れていること

先天的な要因が中心ですが、加齢や急激な体重変化をきっかけに目立ち始める方もいます。思春期の一時期だけ気になり、その後落ち着く方もいます。

陥没乳頭の分類|仮性と真性の見分け方

仮性陥没乳頭と真性陥没乳頭の違いをあらわす抽象的なアイコンイラスト

陥没乳頭は「仮性」と「真性」の2タイプに分けられます。どちらに当てはまるかで、必要な対応が変わってきます。

タイプ指でつまんだときの反応主な対応の方向性
仮性陥没乳頭刺激で一時的に突出する保存療法で改善する可能性がある
真性陥没乳頭刺激しても出てこない手術での改善を検討する方が多い

真性の場合は、汚れが溜まりやすく不衛生になりやすいほか、炎症や感染を起こしやすい傾向があります。授乳を希望する方では、赤ちゃんがうまく吸えず授乳障害につながることもあります。

セルフチェックの一例として、乳輪の外側から指で軽く圧迫し、乳頭の突出具合を確認する方法があります。ただし、力を入れすぎると皮膚を傷つけることがあるため注意してください。ご自身での判断が難しいときは、自己流のチェックだけに頼らず、一度専門医の診察を受けてください。

保存療法で様子を見てよい場合と、手術が必要な場合

軽度の仮性陥没乳頭では、保存的なアプローチだけで改善が見込めることがあります。一方、真性陥没乳頭は保存療法の効果が乏しく、手術が選択肢の中心になります。

保存療法としては、専用の吸引器で乳頭を牽引する方法が知られています。テーピングで一時的に突出した状態を保つ方法も一般的です。

  • 吸引器による牽引:1日数回、継続して使用することで突出を促す方法
  • 専用テープでの固定:外部刺激で突出させた乳頭を一時的に保持する方法

効果には個人差が大きい点に注意が必要です。圧が強すぎるテープやグッズは、うっ血や皮膚トラブルの原因になることがあります。自己流での長期使用は避けてください。数ヶ月続けても改善が乏しい場合は、手術を検討する目安になります。

今回の記事作成にあたり、当院の過去の相談内容を編集部で確認しました。10代・20代のうちは保存療法から試す方が多く、改善が乏しければ手術に進むという流れが目立ちました。

市販グッズ・自己流ケアの注意点

インターネット上には、テープや輪ゴムなどを使った自己流の矯正方法も紹介されています。しかし、強すぎる圧迫や長時間の締めつけは血流障害や皮膚のただれを招くことがあります。

市販グッズを使う際も、赤みやしびれを感じたらすぐに使用を中止してください。改善が見られない状態を自己流ケアだけで長期間続けるのは避け、早めに専門医へ相談してください。

手術による治療|乳管温存法と乳管切離法の違い

手術の流れをあらわす抽象的な医療アイコンイラスト

手術には「乳管温存法」と「乳管切離法」の2種類があり、将来の授乳希望の有無で選択します。どちらも局所麻酔で行う日帰り手術です。

術式方法授乳機能向いている方
乳管温存法乳管を残したまま索状物を処理し、乳頭を引き出して縫合温存を目指せる将来の授乳を希望する方
乳管切離法乳管を切離して乳頭を外に出し、再発を防ぐ失われる授乳希望がなく整容性を重視する方

乳管温存法は授乳機能を残しやすい術式です。ただし索状物の処理が不十分だと、乳管切離法よりも再発リスクがやや高くなる傾向があります。乳管切離法は再発しにくく整容的に優れますが、授乳機能は失われます。

手術の流れ

手術は局所麻酔下で行われ、一般的に次のような流れで進みます。

STEP1 局所麻酔と乳頭の牽引

局所麻酔を行った後、糸を使って乳頭をゆっくり引き出します。

STEP2 小切開と原因の除去

乳頭に小さな切開を加え、陥没の原因となっている索状物を選択的処理します。

STEP3 縫合

形が整った乳頭の傷口を丁寧に縫合します。

STEP4 固定器具での保護

ドーナツ状の固定器具で乳頭を保護し、再陥没を防ぎます。

手術時間は片側30分〜1時間程度が目安です。両側同時に行うことも可能で、その場合も日帰りで対応できます。

術後の経過とダウンタイム

術後の通院は数回程度で、日常生活への影響は比較的少ない手術です。経過の目安は次のとおりです。

  • 手術当日:患部を濡らさないようにし、抗生物質と鎮痛剤を内服
  • 翌日〜抜糸まで:翌日からシャワー可能。毎日消毒と軟膏塗布を継続
  • 抜糸後(1〜2週間後):紙テープで固定しながら軟膏でケア
  • 傷跡は時間の経過とともに目立ちにくくなっていきます

仕事や学校は、翌日から通常どおり過ごせる方がほとんどです。ただし激しい運動や患部への強い刺激は、抜糸まで避けてください。

入浴は抜糸後、医師の許可が出てから湯船に浸かるようにしてください。下着は締めつけの少ないものを選ぶと、患部への刺激を減らせます。

メリットとデメリット・リスク

手術には整容面・機能面のメリットがあります。一方で、再発や感覚の変化といったリスクも、事前に正しく理解しておきましょう。

メリット

  • 乳管温存法を選んだ場合、授乳機能の改善が期待できる
  • 不衛生になりやすい状態が改善し、炎症・感染のリスクが下がる
  • 見た目の変化により、心理的な負担が軽くなったと感じる方が多い

デメリット・リスク

  • 索状物の処理が不十分な場合などに、再発する可能性がある
  • 乳管切離法を選んだ場合、授乳ができなくなる
  • 出血・感染・一時的な感覚の変化などのリスクがある

これらのリスクは、術式の選択やアフターケアで最小限に抑えることが可能です。診察の際に、ご自身の希望と合わせて医師に確認してください。

費用の目安と保険適用の条件

費用と保険適用の目安をあらわす抽象的なアイコンイラスト

陥没乳頭形成術は、条件を満たせば健康保険が適用される手術です。ただし、単なる美容目的の場合は保険給付の対象外となる点に注意してください。

保険診療上、陥没乳頭形成術は「授乳障害のある陥没乳頭に乳頭形成を行った場合」などに算定される手技です。診察時に、授乳障害の有無や既往を確認したうえで適用の可否を判断します。

  • 片側:約23,000円(保険適用時の自己負担目安)
  • 両側:約46,000円(保険適用時の自己負担目安)

費用は自己負担割合や診察内容によって変わります。麻酔や追加処置の有無によっても金額が変動するため、正確な費用は診察時に個別にご確認ください。

こんな方は陥没乳頭形成術の相談を検討してみてください

次のような状態に心当たりがある方は、一人で悩まず専門医への相談を検討してみてください。

  • 指でつまんでも乳頭が出てこない、または刺激してもすぐ戻ってしまう
  • 乳頭周辺が汚れやすく、炎症やにおいが気になる
  • 授乳を希望しているが、うまく吸ってもらえるか不安がある
  • 水着や下着姿になることに心理的な抵抗がある

大切なのは、自己判断ではなく専門医による正確な診断。まずは仮性か真性かを診察で確認し、保存療法から始めるか、手術に進むかを一緒に検討していきましょう。

監修医からのコメント

統括院長の岡博史は、陥没乳頭の相談について次のように述べています。「思春期からの相談だけでなく、出産・授乳を機に来院される方も多い状態です。仮性か真性かによって方針が変わるため、まずは診察で見極めることを大切にしています」

「当院は2008年から皮膚科・形成外科の手術に対応しています。患者様の希望に沿った術式選択を心がけています」

形成外科医の鳥海正博も、術式選択の重要性について補足します。「乳管温存法と乳管切離法は、どちらが優れているという単純な話ではありません。将来の授乳希望を丁寧に伺い、患者様ごとに術式を提案しています」

編集部でも術式ごとの特徴を比較しました。授乳希望の有無という一点だけでも、選ぶべき方法が大きく変わることが分かりました。自己判断せず、診察でしっかり相談してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 仮性陥没乳頭と真性陥没乳頭は、自分で見分けられますか?

指で軽くつまんだときに乳頭が突出するタイプは、仮性陥没乳頭に分類されます。刺激しても出てこないタイプは真性陥没乳頭です。自己判断が難しいときは、診察で正確に見極めましょう。

Q2. 陥没乳頭は保存療法だけで治りますか?

軽度の仮性陥没乳頭であれば、吸引器やテーピングなどの保存療法で改善が期待できます。真性の場合は保存療法の効果が乏しく、手術が中心の選択肢になります。

Q3. 陥没乳頭形成術は必ず保険が使えますか?

授乳障害など機能的な問題がある場合は保険適用の対象になり得ます。単なる美容目的の場合は保険給付の対象外です。適用の可否は診察で確認します。

Q4. 手術後、授乳はできますか?

乳管温存法を選んだ場合は、授乳機能を残すことを目指せます。乳管切離法を選んだ場合は授乳機能が失われるため、術式選択の際によく相談してください。

Q5. 手術のダウンタイムはどのくらいですか?

翌日からシャワーや通常の生活が可能な方がほとんどです。抜糸は1〜2週間後が目安で、激しい運動は抜糸後まで控えてください。

Q6. 未成年でも陥没乳頭形成術を受けられますか?

未成年の場合は保護者の同意が必要です。年齢や発育状況により方針が異なるため、まずは保護者同伴で相談してください。

Q7. 手術跡は目立ちますか?

乳輪の色や陰影に沿って切開するため、傷跡は比較的目立ちにくい部位です。個人差はありますが、時間の経過とともに赤みが落ち着き、なじんでいく方が多い傾向にあります。気になる場合は、診察時に傷のケア方法も相談してください。

まとめ

陥没乳頭は「仮性」と「真性」に分かれ、タイプによって保存療法で経過を見るか、手術に進むかが変わります。真性で授乳や衛生面の問題が大きい場合は、手術での治療が現実的な選択肢になります。

手術には乳管温存法と乳管切離法の2種類があり、将来の授乳希望の有無で選び方が変わります。手術時間は片側30分〜1時間程度で、日帰りが可能です。

保険適用の条件も含めて、まずは形成外科専門医の診察で状態を確認することから始めてください。仮性か真性かを見極めることが、治療方針を決める第一歩。

関連する記事として陥没乳頭の原因やセルフチェックの解説記事もご覧ください。あわせて副乳の見た目の特徴と治療法をまとめた記事も参考になります。


本記事はヒロクリニック形成外科・皮膚科 統括院長 岡博史監修のもと制作しています。医学博士・日本皮膚科学会皮膚科専門医です。

形成外科医 鳥海正博(日本形成外科学会専門医・医学博士)も、監修に加わっています。(監修日:2026年7月)

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【参考文献】