非ケトーシス型高グリシン血症

概要

アミノ酸の一つであるグリシンを分解する酵素である、グリシン開裂酵素系の活性が先天的に欠損しているために体内にグリシンが蓄積する、先天性アミノ酸代謝異常症の一つです。生後数日で意識障害、呼吸困難、など脳症様の症状で発症することが多いです。中枢神経系の障害による症状が大部分を占め、肝臓や腎臓などの他の臓器障害は基本的に認めません。

新生児期の急性期の症状は重篤であり、大部分の症例で人工呼吸器による呼吸管理が必要になります。急性期を脱した後は中枢神経の障害を残すことが多く、生涯にわたる療養が必要になります。発症に男女差はなく、我が国における発症頻度は50~100万出生に1人と推定されます。

疫学

患者さんの数は、100名未満と考えられます。この病気の発症は、全国で毎年1~2人です(発症に男女差はありません)。

原因

中枢神経系、肝臓、腎臓のミトコンドリアに分布する、グリシン開裂酵素と呼ばれる複合酵素系がその構成酵素をコードする遺伝子の変異によりその活性を失うために発症します。グリシン開裂酵素はグリシン異化の主経路であるため、その欠損により血漿や髄液などの体液中に大量のグリシンが蓄積します。グリシン開裂酵素系は、4つの構成酵素(P-、T-、H-、L-蛋白質)からなる複合酵素です。

P-、T-、H-、L-蛋白質は、それぞれGLDC、AMT、GCSH、DLD遺伝子にコードされている(ただし、DLD遺伝子がコードしているL蛋白質は、ピルビン酸脱水素酵素複合体などの構成蛋白であるE3と共通で、この蛋白の異常は、高乳酸血症などを呈するリー(Leigh)脳症となりNKHにはならない)。大部分の症例で、GLDC遺伝子またはAMT遺伝子の遺伝子変異を認めます。グリシンは中枢神経系で神経伝達物質として働くため、中枢神経系でグリシンが蓄積することで神経障害を来すと推定されているが、その発症機序はいまだ明らかではありません。

ETHE1遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

新生児型と乳児型の2病型があります。

①新生児型症例の80%を占め、典型と考えられます。出生後数時間から数日以内に哺乳力低下、昏睡、吃逆、筋緊張低下、呼吸障害、などの症状で気づかれ、NICUに入室することが多いです。意識障害を伴う呼吸障害は重篤で、人工呼吸器による呼吸管理を要する症例が多いです。NICUにおける血液や髄液のアミノ酸分析で本症と診断される。新生児の急性期を乗り切った大部分の症例は自発呼吸にもどるが、精神運動発達遅滞や痙攣は改善せず、重症心身障害を残します。

②乳児型新生児期は無症状に過ごし、生後2~12か月で筋緊張低下、発達の遅れ、痙攣、などの症状が出現してくる非典型例を乳児型と呼んでいます。新生児型に比べ生命予後は良いです。幼児~学童期には、衝動的行動、注意欠陥・多動性障害様行動、自閉症様行動、など行動面での異常を示します。軽度から中等度の知的障害を示します。大分部の症例はてんかんを持つが、欠く症例も存在します。

【参考文献】

難病情報センター – 非ケトーシス型高グリシン血症