発達性およびてんかん性脳症11型(Developmental and epileptic encephalopathy 11)

医療

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 11という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは生後数ヶ月のお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症11型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE11(ディー・イー・イー・ジュウイチ)と呼ばれることが一般的です。

また、原因となる遺伝子の名前をとってSCN2A関連神経発達障害やSCN2A関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えており、近年ではこちらの呼び名の方が一般的になりつつあります。以前は、大田原症候群や早期乳児てんかん性脳症(EIEE)と診断されていたお子さんの中に、この遺伝子変異を持つ方が多く含まれていることがわかってきました。

この病気は、乳児期、特に生後間もない時期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れが見られるという特徴があります。その原因として、SCN2Aという特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や11型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、単に重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、特にお子さんに合ったお薬選び(プレシジョン・メディシン)において非常に重要な指針を得たということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症11型(DEE11)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE11は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この11型は、SCN2A(エス・シー・エヌ・ツー・エー)という遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかになっています。

SCN2A遺伝子の変異は、DEE11のような重度のてんかんだけでなく、良性家族性新生児てんかんのような軽度なタイプや、てんかんを伴わない自閉スペクトラム症知的障害など、幅広い症状の原因になることが分かっています。これをSCN2A関連疾患と呼びます。

DEE11という診断がついた場合は、その中でもてんかん発作のコントロールが難しく、発達への影響が大きいタイプであることを意味します。しかし、この病気は遺伝子の変異のタイプによって効く薬がはっきりしている場合があり、適切な治療によって症状が改善する可能性を秘めています。

主な症状

DEE11の症状は、特徴的なてんかん発作、発達の遅れ、そしてその他の身体的・行動的な特徴の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、生後数日以内の新生児期、あるいは生後3ヶ月以内の乳児期早期にてんかん発作が始まります。

発症時期による違い

DEE11(SCN2A関連てんかん)において、発作がいつ始まったかという情報は、治療方針を決める上で非常に重要です。

一般的に、生後3ヶ月未満(特に新生児期)に発症する場合は、脳の神経細胞が興奮しすぎるタイプ(機能獲得型)であることが多いとされています。

一方で、生後3ヶ月以降に発症する場合は、神経の機能が低下しているタイプ(機能喪失型)である可能性があります。

発作のタイプ

発作の形は様々ですが、以下のようなタイプがよく見られます。

焦点発作は、体の一部(片方の手足や顔など)がピクピク動いたり、視線が偏ったりする発作です。

強直発作は、手足が突っ張って硬くなり、顔色が赤くなったり青くなったりする発作です。

全般強直間代発作は、全身が硬直したあとにガクガクと震える大きな発作です。

てんかん性スパズムは、両手を広げてお辞儀をするような動作を繰り返す発作です。

難治性

DEE11のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。一日に何度も発作を繰り返すこともあります。しかし、後述するように、原因に合ったお薬を使うことでコントロールできる場合があります。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、中等度から重度の発達の遅れが見られます。

精神運動発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、歩くといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、知的障害を伴います。言葉による会話は難しいことが多いですが、声のトーンや表情、全身の動きで快・不快などの感情を伝えることができるお子さんもいます。

筋緊張の異常

赤ちゃんの頃は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。体幹(体の中心)が弱く、姿勢を保つのが難しいことがあります。

成長とともに、逆に手足の筋肉が突っ張って硬くなる痙縮(けいしゅく)や、筋肉が勝手に動いてしまうジストニアなどの運動障害が見られるようになることもあります。

3. 行動面の特徴

SCN2A遺伝子は自閉スペクトラム症(ASD)との関連が深いことで知られています。

DEE11のお子さんにも、自閉的な特徴が見られることがあります。

視線を合わせにくい、同じ動作を繰り返す(常同行動)、こだわりが強い、人とのコミュニケーションが苦手といった特徴です。

また、痛みに対して鈍感であったり、逆に特定の感覚に過敏であったりすることもあります。

4. その他の身体症状

おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害や、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

また、胃食道逆流症(ミルクを吐き戻しやすい)、便秘といった消化器系の問題や、睡眠障害(寝付きが悪い、夜中に何度も起きる)が見られることもあります。

脳のMRI検査では、初期には異常がないことが多いですが、経過とともに脳の萎縮(小さくなること)が見られることがあります。

原因

なぜ、てんかんが起きたり、発達が遅れたりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にある電気信号のスイッチの不具合にあります。

SCN2A遺伝子の役割

DEE11の原因は、第2番染色体にあるSCN2A(エス・シー・エヌ・ツー・エー)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.2チャネル)という、脳の神経細胞の表面にある小さな穴(通り道)を作るための設計図です。

脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやり取りしています。この電気信号を発生させるために、細胞の外から中にナトリウムイオンを取り込む必要があります。SCN2A遺伝子が作るナトリウムチャネルは、このナトリウムイオンを通すための主要なトンネルの一つです。

特に、生まれたばかりの赤ちゃんの脳や、興奮性の信号を送る神経細胞において、電気信号を発生させるためのメインスイッチとして非常に重要な役割を果たしています。

遺伝子の変化による影響(機能獲得と機能喪失)

SCN2A遺伝子に変異が起きると、このナトリウムチャネルの働きがおかしくなります。ここがDEE11を理解する上で最も重要なポイントです。

機能獲得型変異

チャネルの働きが強くなりすぎる状態です。ナトリウムを通すトンネルの扉が開きやすくなりすぎたり、一度開くと閉じにくくなったりします。

ナトリウムは細胞を興奮させるアクセルの役割を持っています。そのトンネルが開きっぱなしになるということは、アクセルが踏みっぱなしの状態になるようなものです。

その結果、神経細胞が異常に興奮しやすい状態になり、新生児期や乳児期早期からの激しいてんかん発作が引き起こされます。DEE11の多くのケース、特に早期発症例はこのタイプです。

機能喪失型変異

チャネルの働きが弱くなる、あるいは働かなくなる状態です。

ナトリウムが入ってこないため、神経細胞が適切に興奮できず、情報の伝達がうまくいかなくなります。

これにより、てんかん(発症は少し遅い傾向があります)や、自閉スペクトラム症知的障害が引き起こされます。

このように、同じ遺伝子の変異でも、働きすぎてしまうのか、働かなくなってしまうのかによって、症状や治療法が異なるのがSCN2A関連疾患の大きな特徴です。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、重症型であるDEE11のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にSCN2A遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE11のお子さんの脳波では、てんかん性の突発波(スパイク)が見られるほか、背景活動(発作がない時の脳波)が全体的にゆっくりになっている徐波化が見られることがあります。

発作のタイプを特定し、薬の効果を判定するためにも定期的に行われます。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳全体や小脳が萎縮して小さくなっている様子が見られることがあります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。DEE11は症状だけでは他の発達障害やてんかん症候群と区別がつかないことが多いため、この網羅的な遺伝子検査を行って初めてSCN2A遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、原因遺伝子がSCN2Aであると分かったことで、より効果的なお薬を選択できるようになってきています(プレシジョン・メディシン:精密医療)。

1. てんかんの治療(薬選びの重要性)

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。ここで、遺伝子変異のタイプ(機能獲得か機能喪失か)を見極めることが非常に重要です。

ナトリウムチャネル遮断薬の効果

生後3ヶ月未満に発症するDEE11の多くは機能獲得型変異(アクセル踏みっぱなし状態)です。

この場合、ナトリウムチャネルを塞いでアクセルを緩める作用のある薬、つまりナトリウムチャネル遮断薬が非常に高い効果を示すことが知られています。

具体的には、フェニトイン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピンなどの薬です。

これらのお薬を使用することで、発作が劇的に減少したり、消失したりするケースが多く報告されています。これは、同じナトリウムチャネルの病気でも、ドラベ症候群(SCN1A変異の多くは機能喪失型)ではこれらの薬が悪化させる要因になるのとは対照的です。

その他のお薬

機能喪失型の場合や、ナトリウムチャネル遮断薬が効かない場合は、バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザム、トピラマートなどが試されます。

難治性の場合は、ケトン食療法(脂肪分を多く、糖質を極端に少なくした食事療法)が検討されることもあります。

2. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や、筋肉の突っ張り(痙縮)に対してアプローチします。

関節が硬くならないようなマッサージやストレッチを行ったり、楽な姿勢が取れるようにクッションを調整したりします。

座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、光や音などの刺激を使った遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、食事や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。自閉的な傾向がある場合は、感覚統合療法なども取り入れられます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(スイッチやおもちゃ、絵カードなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

3. 日常生活のケア

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。

呼吸管理

呼吸が弱い場合や、痰が出しにくい場合は、吸引器を使用したり、吸入を行ったりします。夜間の呼吸状態を見守るためにモニターを使用することもあります。

感染症対策

筋緊張が弱く、呼吸の力が弱いお子さんは、風邪をこじらせて肺炎になりやすい傾向があります。手洗いなどの基本的な感染対策に加え、流行期には人混みを避ける、インフルエンザなどの予防接種を計画的に受けるなどの対策が大切です。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症11型(DEE11)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

SCN2A遺伝子の変異により、脳の神経細胞を興奮させるナトリウムチャネルに異常が生じ、てんかんや発達への影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

新生児期から乳児期早期に始まるてんかん、発達遅滞、自閉的傾向、筋緊張低下などが特徴です。

治療の希望

早期発症の多くは機能獲得型であり、フェニトインやカルバマゼピンなどのナトリウムチャネル遮断薬が特効薬的に効く可能性があります。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールに加え、リハビリ、栄養管理、感染症予防など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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