発達性およびてんかん性脳症27型(Developmental and epileptic encephalopathy 27)

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 27という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

まだ小さなお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症27型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE27(ディー・イー・イー・ニジュウナナ)と呼ばれることが一般的です。

また、原因となる遺伝子の名前をとってGRIN2B関連神経発達障害やGRIN2B関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えています。

この病気は、乳児期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れや、体が勝手に動いてしまうような運動の症状が見られるという特徴があります。その原因として、GRIN2Bという特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や27型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症27型(DEE27)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE27は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この27型は、GRIN2B(グリン・ツー・ビー)という遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかになっています。この遺伝子の変異は、DEE27以外にも、てんかんを伴わない知的障害自閉スペクトラム症の原因になることもありますが、DEE27はその中でもてんかん発作を伴い、比較的症状が重く出るタイプを指します。

発症時期は生後数ヶ月から数歳の間であることが多く、早期発見と適切なケアが重要となる病気です。

主な症状

DEE27の症状は、てんかん発作、発達の遅れ、そして特徴的な運動症状の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、乳児期から幼児期にかけててんかん発作が始まります。

発作のタイプ

発作の形は様々ですが、以下のようなタイプが報告されています。

てんかん性スパズム:両手を広げてお辞儀をするような動作を、数秒おきに繰り返す発作です。シリーズ形成といって、一度始まると何度も繰り返すのが特徴で、ウエスト症候群と呼ばれることもあります。

全般強直間代発作:全身が硬直したあとにガクガクと震える大きな発作です。

焦点発作:体の一部がピクピク動いたり、視線が偏ったりする発作です。

難治性

DEE27のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作の回数を減らし、生活に支障が出ないようにコントロールしていくことが目標になります。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。

重度の発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、ハイハイをするといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、中等度から重度の知的障害を伴います。言葉によるコミュニケーションが難しい場合もありますが、ジェスチャーや表情で感情を伝えたり、こちらの言っていることを理解していたりするお子さんもいます。

筋緊張低下

赤ちゃんの頃に、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。これにより、運動発達がさらにゆっくりになる傾向があります。

皮質視覚障害

目そのものの構造には問題がなくても、脳が映像を処理することが苦手なために、おもちゃを目で追わなかったり、視線が合いにくかったりすることがあります。これを皮質視覚障害といいます。見えていないように見えても、光や動くものには反応することがあります。

3. 運動障害(ムーブメント・ディスオーダー)

DEE27(GRIN2B関連疾患)の非常に重要な特徴として、てんかん発作とは異なる、不随意運動と呼ばれる体の動きが見られることが挙げられます。

ジストニア

筋肉が勝手に収縮して、体がねじれたり、手足が突っ張ったりする症状です。

コレア(舞踏運動)

手足が踊るようにくねくねと動く症状です。

これらの動きは、てんかん発作と間違われやすいですが、脳波検査でてんかん波が出ていないことで区別されます。興奮した時や動こうとした時に強くなる傾向があります。

4. その他の症状

おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害や、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

また、自閉スペクトラム症のような行動特徴(視線を合わせにくい、こだわりが強い、同じ動作を繰り返すなど)や、睡眠障害、多動が見られることもあります。

赤ちゃん

原因

なぜ、てんかんが起きたり、体が勝手に動いたりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にあるスイッチの役割をする受け皿の不具合にあります。

GRIN2B遺伝子の役割

DEE27の原因は、第12番染色体にあるGRIN2B(グリン・ツー・ビー)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、NMDA受容体という、脳の神経細胞の表面にある重要なタンパク質の一部(GluN2Bサブユニット)を作るための設計図です。

脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやり取りしています。神経細胞と神経細胞のつなぎ目であるシナプスという場所で、グルタミン酸という物質が放出され、次の神経細胞にある受け皿(受容体)にくっつくことで、信号が伝わります。

NMDA受容体は、このグルタミン酸を受け取るための主要な受け皿の一つです。特に、記憶や学習、そして脳の発達に深く関わっています。

遺伝子の変化による影響

GRIN2B遺伝子に変異が起きると、このNMDA受容体の働きがおかしくなります。

大きく分けて二つのパターンがあります。

機能獲得型変異

受容体が過剰に働きすぎてしまう状態です。スイッチが入りっぱなしになったり、少しの刺激で過剰に反応したりします。

これにより、神経細胞の中にカルシウムなどが入りすぎてしまい、神経が過剰に興奮しててんかん発作が起きたり、脳の発達に悪影響が出たりします。DEE27のような重度のてんかんを伴うタイプでは、この機能獲得型の変異であるケースが比較的多いとされています。

機能喪失型変異

受容体がうまく働かない、あるいは数が減ってしまう状態です。スイッチが入りにくくなります。

これにより、神経伝達がスムーズにいかず、発達の遅れや知的障害につながります。

DEE27では、これらの変化によって脳内の興奮と抑制のバランスが崩れ、てんかんや運動障害、発達の遅れが生じると考えられています。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、重症型であるDEE27のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にGRIN2B遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE27のお子さんの脳波では、ヒプスアリスミアと呼ばれる点頭てんかんに特徴的な乱れた波形や、多焦点性スパイクといって脳のあちこちからてんかん波が出ている状態が見られることがあります。また、脳全体の電気活動がゆっくりになっている徐波化が見られることもあります。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳全体が少し萎縮して小さくなっている様子や、脳梁(右脳と左脳をつなぐ部分)が薄くなっている様子などが見られることがあります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。DEE27は症状だけでは他の発達障害やてんかん症候群と区別がつかないことが多いため、この網羅的な遺伝子検査を行って初めてGRIN2B遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

GRIN2B変異に対する特効薬というものはまだ確立されていませんが、発作のタイプに合わせて様々なお薬が試されます。

バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザム、トピラマート、ラモトリギンなどが使われることが多いです。

点頭てんかん(ウエスト症候群)のパターンを示す場合は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法という注射の治療が検討されることもあります。

また、研究段階ではありますが、遺伝子変異のタイプ(機能獲得型か機能喪失型か)に応じた精密医療の可能性が探られています。

例えば、機能獲得型変異の場合、NMDA受容体の働きを抑える作用のあるメマンチン(本来は認知症の薬)という薬剤が、てんかん発作や行動面の改善に役立つ可能性があるという報告があります。

逆に、機能喪失型変異の場合は、L-セリンというアミノ酸の補充が検討されることもあります。

これらはまだ一般的な治療ではありませんが、専門医はお子さんの変異の詳細を見ながら、適応の可能性を慎重に検討します。

2. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や、不随意運動(ジストニアなど)に対してアプローチします。

姿勢を保つための練習や、体幹を鍛える遊び、関節が硬くならないようなストレッチを行います。

座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、光や音などの刺激を使った遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、入浴や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(絵カード、ジェスチャー、スイッチなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

3. 日常生活のケア

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。

睡眠管理

睡眠障害がある場合は、生活リズムを整える工夫に加え、必要に応じてメラトニンなどの睡眠導入剤を使用することもあります。良質な睡眠は、てんかん発作の予防にもつながります。

眼科的ケア

皮質視覚障害がある場合は、見えやすいおもちゃ(コントラストの強い色や光るものなど)を使ったり、視覚以外の感覚(聴覚や触覚)を使った遊びを取り入れたりする視覚支援を行います。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症27型(DEE27)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

GRIN2B遺伝子の変異により、脳の神経伝達に関わるNMDA受容体に異常が生じ、脳の過剰興奮や発達に影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

乳児期のてんかん、重度の発達遅滞、ジストニアやコレアなどの不随意運動、筋緊張低下などが特徴です。

てんかん

難治性であることが多いですが、様々なお薬の調整でコントロールを目指します。変異のタイプによっては、メマンチンなどの特殊な薬が検討される可能性もあります。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールだけでなく、運動障害へのリハビリ、栄養管理、睡眠管理など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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