医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 6B, non-Dravetという非常に長く、複雑な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。
まだ小さなお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても報告数が少なく、希少疾患の一つに数えられます。SCN1Aという遺伝子の病気といえば「ドラベ症候群」が有名ですが、あえて「非ドラベ型」と言われたことで、情報の少なさに戸惑われているかもしれません。
この長い診断名を日本語に訳すと、非ドラベ型発達性およびてんかん性脳症6B型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE6B(ディー・イー・イー・シックス・ビー)と呼ばれることが一般的です。また、原因となる遺伝子の名前をとってSCN1A関連神経発達障害やSCN1A関連てんかんと呼ばれる大きなグループに含まれることもあります。
この病気は、乳児期早期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れや、独特の運動障害が見られるという特徴があります。その原因はSCN1Aという遺伝子の変化ですが、ドラベ症候群とは異なるメカニズムや症状の経過をたどることが分かっています。
脳症という言葉や6B型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、単に重症度を表す数字ではありません。
また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、特にお薬選びにおいて重要な指針を得たということでもあります。
概要:どのような病気か
発達性およびてんかん性脳症6B型(DEE6B)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。
まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。
発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。
てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。
脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。
つまり、DEE6Bは遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。
この6B型は、SCN1A(エス・シー・エヌ・ワン・エー)という遺伝子の変異によって引き起こされます。
SCN1A遺伝子の変異といえば、有名なドラベ症候群(DEE6A)が知られていますが、DEE6Bはそれとは異なるタイプです。
どう違うのかというと、ドラベ症候群が遺伝子の機能が失われる機能喪失型であることが多いのに対し、DEE6Bの一部では遺伝子の機能が逆に強まりすぎる機能獲得型などの異なる変化が起きていることがあります。また、ドラベ症候群の典型的な経過(発熱による発作など)をたどらず、より早い時期から発作が起きたり、運動障害が目立ったりするケースが含まれます。
主な症状
DEE6Bの症状は、てんかん発作、発達の遅れ、そして特徴的な運動障害の三つに大きく分けられます。ドラベ症候群と比較しながら、その特徴について詳しく見ていきましょう。
1. てんかん発作
多くの患者さんにおいて、生後数ヶ月以内の乳児期早期にてんかん発作が始まります。ドラベ症候群よりも早い時期(生後3ヶ月未満など)に発症することもあります。
発作のタイプ
発作の形は様々ですが、以下のようなタイプが報告されています。
焦点発作:体の一部がピクピク動いたり、視線が偏ったりする発作です。
強直間代発作:全身が硬直してガクガク震える発作です。
てんかん性スパズム:両手を広げてお辞儀をするような動作を繰り返す発作が見られることもあります。
ドラベ症候群との違い
ドラベ症候群では、発熱や入浴による体温上昇が発作の強力な引き金になりますが、DEE6B(非ドラベ型)では、必ずしも熱が引き金にならないことがあります。もちろん熱で発作が起きることもありますが、ドラベ症候群ほど特徴的ではないケースが多いです。
難治性
DEE6Bのてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作をゼロにすることだけを目指すのではなく、生活の質を保ちながら発作の頻度や強さをコントロールしていく視点が必要になります。
2. 発達と神経の症状
発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。
重度の発達遅滞
首がすわる、目でものを追う、お座りをする、歩くといった運動面の発達と、言葉を理解する、話すといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。
多くの場合、重度の知的障害を伴います。言葉による会話は難しいことが多いですが、声のトーンや表情、全身の動きで快・不快などの感情を伝えることができるお子さんもいます。
3. 運動障害(Movement Disorders)
DEE6Bの大きな特徴の一つとして、てんかん発作とは異なる、運動や筋肉の動きの問題が見られることが挙げられます。これはドラベ症候群ではあまり目立たないか、異なる形で現れる症状です。
多動性運動障害
自分の意思とは関係なく体が動いてしまう不随意運動が見られることがあります。
コレア(舞踏運動):手足が踊るようにくねくねと動く症状。
ジストニア:筋肉が勝手に収縮して、体がねじれたり突っ張ったりする症状。
これらは、起きている時に目立ち、寝ている時には収まることが多いです。
運動失調
バランスを取るのが難しく、お座りや歩行が不安定になることがあります。
4. その他の身体症状
DEE6Bのお子さんには、神経以外の身体的な課題も見られることがあります。
哺乳障害と摂食障害
生まれた直後から、おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害が見られることがあります。また、離乳食が始まっても、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

睡眠障害
寝付きが悪かったり、夜中に何度も起きたりするなど、睡眠のリズムが整いにくいことがあります。
原因
なぜ、てんかんが起きたり、体が勝手に動いたりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にある電気信号のスイッチの不具合にあります。
SCN1A遺伝子の役割
DEE6Bの原因は、第2番染色体にあるSCN1A(エス・シー・エヌ・ワン・エー)という遺伝子の変異です。
この遺伝子は、ナトリウムチャネルという、脳の神経細胞の表面にある小さな穴(通り道)を作るための設計図です。
脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやり取りしています。この電気信号を発生させるために、細胞の外から中にナトリウムイオンを取り込む必要があります。SCN1A遺伝子が作るナトリウムチャネル(Nav1.1チャネルとも呼ばれます)は、このナトリウムイオンを通すスイッチのような役割をしています。
「機能獲得」と「機能喪失」の違い
ここが少し難しいですが、非常に重要なポイントです。
ドラベ症候群(DEE6A)の場合
多くのドラベ症候群では、SCN1A遺伝子の変異により、ナトリウムチャネルが壊れて機能しなくなっています。これを機能喪失といいます。
特に、脳の興奮を抑えるブレーキ役の神経(抑制性ニューロン)でこのチャネルが働かなくなるため、ブレーキが効かずに脳が暴走しててんかんが起きます。
非ドラベ型(DEE6B)の場合
DEE6Bの一部の患者さんでは、SCN1A遺伝子の変異により、ナトリウムチャネルの扉が開きっぱなしになったり、閉じにくくなったりして、機能が過剰になることがあります。これを機能獲得といいます。
あるいは、ドラベ症候群とは異なる特殊な壊れ方をしている場合もあります。
機能獲得型の場合、ブレーキ役の神経だけでなく、他の神経細胞も異常に興奮しやすくなり、その結果、早い時期からのてんかん発作や、複雑な運動障害が引き起こされると考えられています。
遺伝について
多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。
しかし、重症型であるDEE6Bのほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。
これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にSCN1A遺伝子に変化が起きたことを意味します。
つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。
診断と検査
診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。
1. 脳波検査
てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。
DEE6Bのお子さんの脳波では、てんかん性の突発波(スパイク)が多発したり、脳全体の電気活動がゆっくりになっている徐波化が見られたりします。ドラベ症候群でよく見られるようなパターンとは異なる場合もあり、専門医による詳細な解析が必要です。
2. 画像検査(MRI)
脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。
発症初期には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳が少し萎縮して小さくなっている様子が見られることがあります。これは他の病気を除外するためにも重要な検査です。
3. 遺伝学的検査
確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。
近年普及してきた次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネル検査や全エクソーム解析を行うことで、SCN1A遺伝子の変異が見つかります。
重要なのは、変異が見つかった後に、それがドラベ症候群のタイプなのか、それとも非ドラベ型(DEE6B)のタイプなのかを見極めることです。これは症状の経過や、変異の場所、種類などを総合的に判断して決定されます。
治療と管理
現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。
しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。
1. てんかんの治療(薬選びの重要性)
ここがDEE6Bにおいて最も注意が必要な点です。
ドラベ症候群では、ナトリウムチャネル遮断薬と呼ばれる薬(カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインなど)は、症状を悪化させる可能性があるため禁忌(避けるべき薬)とされています。
しかし、DEE6Bで機能獲得型の変異がある場合、逆にナトリウムチャネル遮断薬が効果を示す可能性があるという報告があります。
つまり、同じSCN1A遺伝子の変異であっても、タイプによってはドラベ症候群でダメな薬が、DEE6Bでは良い薬になる可能性があるのです。
これは非常に専門的な判断が必要となります。主治医は、お子さんの遺伝子変異のタイプや症状の反応を見ながら、慎重に薬を選択します。
その他、バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザム、トピラマートなど、様々なお薬が試されます。
2. 運動障害へのアプローチ
ジストニアや不随意運動に対しては、筋肉の緊張を和らげるお薬を使ったり、リハビリテーションを行ったりします。
理学療法(PT)では、楽な姿勢が取れるようにクッションを調整したり、関節が硬くならないようなマッサージを行ったりします。座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギーなど、お子さんの体に合った福祉用具を作ることも大切です。
3. 発達支援と療育
早期からの療育が、お子さんの生活の安定にとって非常に重要です。
作業療法(OT)では、手先の感覚を養ったり、遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。
言語聴覚療法(ST)では、言葉の理解を促すだけでなく、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。
4. 栄養と呼吸の管理
飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。
また、呼吸が弱い場合や、痰が出しにくい場合は、吸引器を使ったり、在宅酸素療法を行ったりすることもあります。
まとめ
発達性およびてんかん性脳症6B型(DEE6B/非ドラベ型)についての重要なポイントを振り返ります。
病気の本質
SCN1A遺伝子の変異により脳神経に影響が出ますが、ドラベ症候群とは異なるメカニズム(機能獲得など)や症状を持つ先天性の疾患です。
主な特徴
乳児期早期からの難治性てんかん、重度の発達遅滞、そしてジストニアなどの運動障害が特徴です。
治療の注意点
変異のタイプによっては、ドラベ症候群で禁忌とされるナトリウムチャネル遮断薬が有効な場合があるため、専門医による慎重な判断が必要です。
原因
多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。
ケアの要点
発作のコントロールだけでなく、運動障害へのケア、栄養管理、呼吸管理など、全身をトータルでケアすることが大切です。
