熱中症に強い・弱いは遺伝子で決まる?CPT2遺伝子の驚きの影響力【YouTube動画解説】

1. 熱中症になりやすい体質と遺伝子

【質問】
「そもそも熱中症になりやすい体質などあるのですか?遺伝子と関係ありますか?」

分類主な症状原因
熱失神立ちくらみ、めまい、顔面蒼白皮膚の血管拡張による血圧低下
熱けいれん筋肉の痛み・けいれん大量の汗とともに塩分が失われる
熱疲労頭痛、吐き気、脱力感、発熱(38~39℃)脱水と塩分不足による循環障害
熱射病意識障害、体温40℃以上、ふらつき、けいれん中枢神経障害(緊急の医療対応が必要)

【質問】
「熱中症って環境の問題じゃないんですか?遺伝子まで関係あるなんて意外です」

  1. 環境要因:高温・多湿、風が弱い、直射日光 など

【質問】
「環境要因はすごく実感しています。そのほかにどんなものがありますか?」

  1. 身体要因:脱水、疲労、持病、高齢、子どもなど体温調節が弱い状態

【質問】
「高齢者やお子さんは気をつけないといけないですね」

  1. 行動要因:長時間の屋外活動、水分補給不足、暑い室内での作業など

【質問】
「わたしも今の季節に長時間外にいるとくらくらします・・・」

  1. 遺伝子要因  CPT2遺伝子の変異

【質問】
「遺伝子が関係しているとは驚きでした」

【先生】
→ 遺伝的に“熱への耐性”が弱い体質の人がいる
→ CPT2遺伝子:体温が上がる状況でエネルギー代謝に障害が起きやすい
→ この遺伝子に変異があると、筋肉のエネルギー産生が妨げられ、重症化しやすくなる

CPT2 遺伝子多型(SNP)と熱中症リスク、特に筋障害・横紋筋融解との関連について、日本人を含む研究によるデータを以下に詳しくご紹介します。


🌡️ 主要SNP:F352C(p.Phe352Cys)多型

  • F352C 多型は、CPT2酵素の活性を中等度に低下させ、**熱ストレスや絶食状態下で酵素の脆弱性が現れやすくなります
  • 具体的には、熱中症(体温40°C超)や高熱の際に、ATP産生が抑制され、筋細胞が壊れやすくなることが医学的に報告されています 。
表記意味
Phe352Cys352番目のアミノ酸がフェニルアラニンシステインに変わる
F352C上と同じ意味。1文字表記(F→C)
アミノ酸の性質変化芳香族・疎水性(Phe) → 硫黄を含む極性アミノ酸(Cys)
影響タンパク質の立体構造や安定性に影響しやすく、酵素の熱安定性が低下することが報告されています

日本人における頻度

〈質問〉

ニュースでも熱中症で倒れる方が多いと聞きます。

日本人の場合、遺伝子によって熱中症になりやすい人ってどのくらいの割合でいるんですか?

アレル頻度:約21%

  • 日本人集団において、当該多型を持つアレルが全体の約21%を占めると報告されています 。
  • 日本人一般集団におけるF352C多型のアレル頻度はそれなりに存在し、稀ではあるが完全な機能喪失型ではない「軽微なバリアント」と判断されています
  • 名古屋大学らの研究では、CPT2別の多型(例:p.V368I)についても、日本人集団の頻度と血中カルニチン値の関連を調査していますが、F352Cの機能低下とは別に報告されています

🔍 熱中症との関連研究

〈質問〉

遺伝子が原因で熱中症になりやすいって、具体的にはどういうことなんですか?

体の中で何かが起こっているんでしょうか?実際に体温40℃以上の熱中症患者を対象に、F352CなどのCPT2多型と症状の重症度や筋破壊の発症率との相関が調査されています

  • 他にも高熱状態によるCPT2機能低下が筋崩壊リスクを高める可能性が示唆されています 。

→ 特に胎児や高齢者、基礎疾患のある人ではリスクが高い

【質問】
では、もともと体温調節能力が低い小さなお子さんは、より注意が必要ですね。
妊婦さんにとっては、自分だけではなくて、胎児にとっても熱中症は心配したほうがよいですか?


🧬 要点まとめ

項目内容
注目SNPF352C(Phe352Cys)
影響エンザイム活性低下、熱耐性減少
日本人の頻度軽度変異として存在(稀)
熱中症リスク体温↑で酵素不安定→筋障害・横紋筋融解リスク上昇
臨床応用重症熱中症症例における検査マーカーとして注目

✅ おすすめ情報・次のステップ

〈質問〉

私も自分が熱中症に弱い体質なのか気になります。

自分が熱中症になりやすい体質か調べるにはどうすればいいでしょうか?

  • 疑わしい症例では、**遺伝子検査(F352Cを含むCPT2)**を検討。
  • 特に高体温・発熱・激しい運動後に横紋筋融解を起こした既往がある方は、医療機関での専門検査が有効です。
  • 常時、高温環境での作業・運動をされる場合は、事前に**予防策(クーリング、十分な水分補給など)**を講じることが重要です。

CPT2遺伝子(Carnitine Palmitoyltransferase II)は、脂肪酸の代謝(特に長鎖脂肪酸のミトコンドリア内での分解)に関与する重要な酵素をコードする遺伝子です。この遺伝子と熱中症との関係については、主に以下の点で注目されてざいます。


✅ CPT2遺伝子と熱中症の関係

〈質問〉

先程CPT2遺伝子というものが出てきましたが、その遺伝子はどんな働きをしてるんですか?

1. CPT2欠損症と代謝性筋疾患

  • CPT2遺伝子に変異があると、脂肪酸のβ酸化が障害される
  • 特に筋型CPT2欠損症では、エネルギーが枯渇しやすく、筋肉の異常(ミオパチー)や横紋筋融解症を引き起こすことがある。

2. 高熱や運動がトリガーとなる

〈質問〉

熱中症が原因で遺伝的な筋肉の病気がわかることもあるのですか?

  • CPT2欠損症の患者は、**発熱、激しい運動、絶食、寒冷ストレス、あるいは高温環境(=熱中症)**などの状況で、代謝への負荷が増し、筋崩壊(横紋筋融解)や急性腎不全を起こすことがある。
  • つまり、熱中症がきっかけで代謝障害が表面化するケースが報告されている。

3. 熱中症で横紋筋融解を起こす遺伝的リスク

〈質問〉

CPT2の変異は、どのくらいの人が持っているものなんですか?

  • 一部の研究では、CPT2の特定の多型(SNP)や軽微な機能低下変異をもつ人は、高温環境下での横紋筋融解のリスクが高まるとされています。
  • 特に日本では、温暖化や高齢化と相まって、熱中症と遺伝的素因の関連研究が進んでいます。

🔬 補足:CPT2遺伝子の疾患との関係

【質問】
「CPT2遺伝子の疾患による、新生児や、成人になってからの症状にはどんなものがありますか?」

症状誘因
新生児型重篤、心筋症、肝機能障害生後すぐ
小児型低血糖、肝障害発熱・空腹時
筋型(成人型)筋痛、ミオグロビン尿運動・高熱・ストレス・熱中症

✅ 結論

  • CPT2遺伝子の異常がある人は、熱中症などの高体温状態やエネルギー需要増加時に、重大な代謝トラブル(特に筋崩壊)を起こすリスクがある
  • そのため、高温環境での作業や運動を避けることが重要
  • 臨床的に熱中症でミオグロビン尿や筋障害がある人には、CPT2を含む代謝異常の遺伝子検査が推奨される場合があります。

【質問者】
「それって、検査しないとわからないことなんですよね?」

【話者】
→ そう、見た目ではわからない
→ 医療機関での遺伝子解析で調べられることもある

【質問者のリアクション】
「なるほど…自分が“暑さに弱い体質”かどうかを知ることが、重症化を防ぐ第一歩ということですね。