NIPT陽性スコアの真実とは?新型出生前診断で知っておくべき重要ポイント【YouTube解説】

こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。

このコラムでは、NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情ではなくデータで分かりやすくお届けしています。

健康診断で「あなたはガン陽性です」とだけ言われたら、どう感じるでしょうか?

「どれくらいの確率で病気なのですか?」「すぐに治療が必要ですか?」

誰もが不安になり、数値という根拠を求めるはずです。しかし、現在の日本のNIPTにおいて、多くの施設が提供する結果は、まさにこの状態なのです。

NIPTの結果が 「陽性」か「陰性」の二択 でしか提供されないという現実。これでは、妊婦さんとご家族の不安を不必要に大きくするだけでなく、医学的な判断を遅らせ、母体への負担を増やすという深刻な矛盾が生じています。

本記事では、このNIPTの結果の伝え方を巡る問題点に鋭く切り込み、なぜ「数字のない陽性」が危険なのか、そして母体の負担を激減させるための 「陽性スコア」 という透明性の高い情報提供の重要性について解説します。


1. 現代医学から取り残されたNIPTの「白黒判定」

1-1. 医学は「白黒の時代」から「数値の時代」へ進化

現代の医学は、もはや「陽性か陰性か」というシンプルな二択だけで診断を行う時代ではありません。

例えば、かつての梅毒検査では「陽性」か「陰性」の判断で終わっていましたが、実際には抗体がまだ作られていない感染初期の人が「陰性」と出たり、すでに治癒した人が抗体反応で「陽性」と出たりする、多くのグレーゾーンが存在しました。

しかし現在では、病気を判断する際に 「抗体価」や「ウイルス量」などの数値が必ず用いられます。数値があるからこそ、医師は「感染して間もないから経過観察」「ウイルス量が少ないから治療の有効性は高い」 といった、より正確で人命を守るための判断ができるようになったのです。

1-2. NIPTの結果はなぜ「白黒」のままなのか?

NIPTは、妊婦さんの血液に含まれる胎児由来のDNAを解析し、21番(ダウン症)、18番、13番染色体の異常(トリソミー)を早期に、99%以上という非常に高い感度で検出できる技術的に優れた検査です。

しかし、その技術的な進歩とは裏腹に、多くの施設では結果が 「陽性」か「陰性」の二択 でしか伝えられていません。

この「陽性」が、

  • 99%の確実性を持つものなのか?
  • 10%程度のグレーゾーンで、単にカットオフ値を超えただけなのか?

その 「陽性度合い」 が全く分からないため、妊婦さんやご家族は、不必要に大きな不安を抱え込んでしまいます。


2. NIPT「認証施設の罠」と数字がない3つの問題

多くの妊婦さんは「認証されている施設なら安心」と考えがちです。しかし、この 「認証」という仕組みの中にこそ、情報の透明性を奪う“罠” が潜んでいます。

2-1. 情報の透明性を奪う構造

日本産婦人科学会が定める認証施設は、ガイドラインに沿った検査しか行わないこと、また、特定の検査会社しか利用できないこと、そして遺伝カウンセリングの手法についても細かく指導されています。

そして、その認証施設が利用する検査会社からの結果は、すべて 「陽性か陰性の二択」 でしか出ないという構造になっています。

「認証されているから安心」と思って受けた検査が、実際には裏付けとなる数値情報がない「白黒の結果」しか得られない。この構造が、情報の透明性を奪い、妊婦さんの不安を増大させる最大の要因となっています。

2-2. 数字がないことによる3つの大きな問題

数値の裏付けがないことで、妊婦さんと医療現場に以下の3つの大きな問題が起こります。

問題内容詳細な影響
① 不安が大きくなる数字がないと最悪の想定をしてしまう「陽性=確定」と考え、精神的な苦痛が長引く。
② 医師との話し合いが難しくなる科学的な根拠に基づいた会話ができない医師も「異常あり」としか言えず、対応に幅が持てない。
③ 診断・判断の遅れ全員が確定検査に進まざるを得ない状況に陥る羊水検査など侵襲的検査の件数が増え、流産などの母体リスクが高まる。

本来、NIPTの目的は、侵襲的な確定検査(羊水検査など)が必要な妊婦さんを効率的に絞り込むことにあります。しかし、数字がないために、実際には問題がない確率が高い人まで「陽性」という結果だけで不安になり、リスクのある確定検査に進まざるを得ない状況が生まれてしまっているのです。


3. 母体の負担を激減させる「陽性スコア」の重要性

こうした情報の不透明性がもたらす問題を解決し、妊婦さんとそのご家族に 「選択肢」「安心」を提供するために必要なのが、「陽性スコア」 という数値情報です。

3-1. 陽性スコアとは?不安を解消するための“言葉”

陽性スコアとは、NIPTの結果が示す「陽性である統計的な確率」を数値化したものです。

これは、従来の 「陽性か陰性か」 という曖昧な表現ではなく、

  •  「陽性スコア1/100」 の場合 $\rightarrow$ 実質的には陰性に近い
  •  「陽性スコア99/100」 の場合 $\rightarrow$ ほぼ確実に陽性である

といった、具体的なリスクの度合いを理解するためのものです。

 「数字で語るなんて冷たい」と思う方もいるかもしれませんが、曖昧な言葉に怯えるよりも、「90%の確率で問題ありません」と言われた方が、心は落ち着きます。数字は、妊婦さんの不安を減らすための“言葉(優しさ)” なのです。

3-2. 行動の選択と迅速な決断を可能に

陽性スコアがあることで、妊婦さんと医師は冷静かつ合理的な判断が迅速にできるようになります。

陽性スコアの例妊婦さんの理解と行動の選択
陽性スコア 10/100「90%の確率で問題ない」と理解し、落ち着いて次のステップを検討できる。
陽性スコア 95/100「確定検査を早めに受けよう」と冷静に決断し、判断の遅れを防げる。

数字の裏付けがあることで、必要のない確定検査を回避し、真に確定診断が必要な方だけが迅速に次のステップへ進むことができるため、結果として母体の負担(侵襲的検査のリスク)を激減させることができます。


まとめ:NIPTは「伝え方」の進化が必要

NIPTは、母体から採血するだけで、胎児の染色体情報を詳しく分析できる、医学の大きな進歩です。

しかし、どれだけ技術が進んでも、 「伝え方」 が古いままでは、その進歩は人を救う力になりません。現状の「白黒判定」は、妊婦さんに不必要な不安と、侵襲的検査のリスクを強いているという点で、現代医学の基準から見て時代遅れであると言わざるを得ません。

これから必要なのは、情報の透明性です。陽性スコアは、その透明性を高め、妊婦さんとご家族に 「選択肢」と「安心」 をもたらすための第一歩なのです。

このコラムを読まれた方が、NIPTの検査結果を受け取る際には、 「その陽性には数字の裏付けがありますか?」 と、ぜひ担当医に尋ねてみてください。それが、あなたと赤ちゃんを守るための、最も重要なアクションになります。