こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。
「うちの子が、お友達をいじめているかもしれない」
もしそう聞いたら、あなたはどう感じるでしょうか?
信じられない、まさかうちの子が……と動揺し、同時に「私の育て方が間違っていたのだろうか」と自分を責めてしまうかもしれません。
実はいじめや攻撃的な行動の背景には、家庭での何気ない親の習慣だけでなく、生まれ持った**「遺伝子」**が関与している可能性があることが、近年の研究で明らかになってきています。
「遺伝」と聞くと、「生まれつきなら変えられないの?」と不安になるかもしれません。しかし、ご安心ください。遺伝はあくまで「傾向」であり、決定事項ではありません。
本日は、いじめっ子に共通する家族の特徴や、意外と知られていない「遺伝子と脳」の関係、そしてリスクを乗り越えるために親ができる具体的な関わり方について、医学的・心理学的な視点から紐解いていきます。
いじめの加害者に共通する特徴の一つに、**「共感力の欠如」**があります。
相手が泣いていても「面白い」と感じてしまったり、悪いことをしても「あいつが悪い」と責任転嫁したりする。こうした態度はどこから来るのでしょうか?
世界的に有名な心理学者、アルバート・バンデューラが提唱した**「社会的学習理論(モデリング)」**によれば、子どもは親の行動をまるで鏡のように模倣し、学習します。
親が普段何気なく行っている言動が、子どもの人格形成の「テンプレート(ひな形)」になっているのです。
ご自身の普段の言動を振り返ってみてください。以下のような場面はありませんか?
「やってしまった……もう手遅れかも」と落ち込む必要はありません。
親だって人間です。完璧である必要はないのです。
バンデューラの理論の素晴らしい点は、「失敗からの修正」もまた、子どもにとっての学習材料になるということです。
感情的に怒ってしまった後、「さっきは言いすぎたね、ごめんね」と素直に謝る。
その姿を見せることで、子どもは「間違えても、素直に認めて謝ればいいんだ」「大人でも失敗するんだ」と学びます。
親の「ごめんね」は、子どもの中に「責任を取る勇気」と「他者への信頼」を育てる、最高のお手本になるのです。
「育て方だけじゃ説明がつかないほど、冷酷な子もいるのでは?」
そう思われる方もいるでしょう。その通りです。性格や行動傾向には、環境だけでなく、生まれ持った**「遺伝子」**も大きく関わっています。
アメリカのBlonigenらによる双子研究(2003年)では、衝撃的なデータが示されています。
一卵性双生児(遺伝子が100%同じ)と二卵性双生児(約50%同じ)を比較した結果、**「サイコパス的傾向(冷淡さ・衝動性)」の遺伝率は約80〜81%**であることが分かりました。
つまり、人の気持ちを感じ取りにくい、罪悪感を抱きにくいといった気質の8割は、生まれつきの遺伝的要因が影響している可能性があるのです。
この「気質」の正体は、脳の働きにあります。
特に重要なのが**「扁桃体(へんとうたい)」**です。ここは恐怖や悲しみといった感情を感じ取るアンテナのような場所ですが、サイコパス傾向のある人はこの反応が鈍く、他人の痛みや恐怖に共感しにくいことが分かっています。
さらに、**「MAOA(エムエーオーエー)遺伝子」という遺伝子も注目されています。
これは、脳内で感情を調整するセロトニンなどの物質を分解する酵素を作る遺伝子です。
この遺伝子には「高活性型(H)」と「低活性型(L)」があり、「低活性型(MAOA-L)」**を持っていると、セロトニンの分解がうまくいかず、感情のブレーキが効きにくくなり、衝動的・攻撃的になりやすいとされています。
この遺伝子はX染色体上にあり、男性は1つしか持っていないため、女性よりも影響を受けやすい(攻撃性が表に出やすい)という特徴もあります。
「じゃあ、低活性型の遺伝子を持っていたら、将来は犯罪者やいじめっ子になるの?」
そう不安になるかもしれませんが、答えはNOです。
Byrd & Manuckらの研究(2014年)によると、MAOA遺伝子の低活性型(攻撃的になりやすい素因)を持っていても、それだけで反社会的な行動に出るわけではないことが分かっています。
リスクが劇的に高まるのは、**「低活性型遺伝子」+「幼少期の虐待(過酷な環境)」**という組み合わせが揃った時だけでした。
逆に言えば、たとえ攻撃的になりやすい遺伝子を持っていたとしても、温かい家庭環境で育てば、そのリスクはほとんど顕在化しないのです。
遺伝子はあくまで「火薬」のようなものです。火種(過酷な環境)がなければ、爆発することはありません。
親の関わり方次第で、遺伝子のスイッチを良い方向にも悪い方向にも切り替えることができる。これが最新の科学が示す希望です。
では、具体的に親はどう関われば良いのでしょうか?
遺伝的なリスクを持つ子どもであっても、それを乗り越えさせる最強の環境、それが**「無条件の愛(アタッチメント)」**です。
抽象的な言葉に聞こえるかもしれませんが、心理学的には非常に具体的な行動指針があります。ここでは特に効果的な3つのアプローチをご紹介します。
アタッチメント理論(ボウルビィら)に基づくと、子どもは「何かができたから愛される」のではなく、**「ただそこにいるだけで愛される」**という感覚(安全基地)を必要とします。
条件付きの愛ではなく、存在そのものを肯定することで、子どもは深い自己肯定感を獲得します。自分を大切にできる子は、他者を攻撃する必要がなくなるのです。
ジョン・ゴットマン博士が提唱する「感情コーチング」では、子どもの感情を否定せず、まずは受け止めることが重要とされています。
子どもが泣いたり怒ったりした時、「泣くな!」「静かにしなさい!」と抑え込むのではなく、
「悲しかったんだね」「悔しかったね」と言葉にして代弁(ラベリング)してあげてください。
「自分のどんな気持ちも、お母さん・お父さんは受け止めてくれる」という安心感は、情緒を安定させ、他者の気持ちを想像する共感力の土台になります。
先ほどのバンデューラの理論に戻りますが、親が完璧である必要はありません。
むしろ、間違えた時に「ごめん、さっきは間違えたよ」と正直に謝る姿を見せることが重要です。
「大人でも間違うんだ」「間違っても、謝れば修復できるんだ」
この学びは、子どもが将来いじめの加害者にも被害者にもならず、トラブルを平和的に解決する力(社会的スキル)を育むために不可欠な要素です。
今日は、親の習慣と遺伝子が子どもの攻撃性に与える影響について解説しました。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
1. 親は子どもの鏡
他人を見下したり、責任転嫁したりする親の姿を、子どもは「正しい振る舞い」として学習します。まずは大人が襟を正し、失敗したら謝る姿を見せることが大切です。
2. 遺伝の影響は大きいが、決定的ではない
サイコパス気質や攻撃性には、80%程度の遺伝的要因(MAOA遺伝子など)が関与しています。しかし、それはあくまで「なりやすさ」であり、環境次第で結果は変わります。
3. 「無条件の愛」が遺伝子のリスクを抑える
虐待や否定的な環境は、攻撃性の遺伝子スイッチをONにしてしまいます。逆に、「存在そのものを愛する」「感情を受け止める」という関わりは、遺伝的リスクを抑え込む強力なブレーキになります。
「忙しくて、十分に向き合えていない」
そう悩む必要はありません。
寝る前の5分、「大好きだよ」と抱きしめる。
イライラして怒った後に、「ごめんね」と頭を撫でる。
そんな小さな愛の積み重ねが、お子さんの遺伝子にポジティブなメッセージを送り続け、優しい心を育てていくのです。
遺伝子を知ることは、諦めることではありません。
その子の特性を理解し、その子に合った一番の環境(愛)を用意してあげるための、地図を手に入れることなのです。
これからも、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にするために、正しい医療情報をお届けしていきます。
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