鎌状赤血球症

Sickle-Cell Disease, HBB

概要

鎌状赤血球症(Sickle-Cell Disease:SCD)は、赤血球の主要な酸素運搬タンパク質であるヘモグロビンβ鎖(HBB遺伝子)に病的変異が起こることで発症する、代表的な遺伝性血液疾患です。変異によって作られる異常ヘモグロビン(ヘモグロビンS:HbS)は酸素が低い状態でポリマー化し、赤血球が鎌(かま)状に変形します。この変形した赤血球は血管内で詰まりやすく、組織の酸素供給障害や慢性溶血を引き起こします。

疫学

鎌状赤血球症は世界的に広くみられる遺伝性疾患で、とくにサハラ以南アフリカ、地中海沿岸、中東、インド亜大陸に多いとされています。2021年には世界で約**7.7百万人の患者が存在し、約515,000人の新生児がSCDと診断されました。5歳未満児の死亡原因として重要な位置を占めています。

原因

鎌状赤血球症は、HBB遺伝子への1塩基置換(Glu→Val、β6位)が主要な原因です。この変異がHbSの産生をもたらし、赤血球が低酸素環境下で鎌状に変形します。HBBは11番染色体上に位置し、β-グロビン鎖をコードします。

遺伝形式は常染色体劣性とされ、両親からそれぞれ1つずつ病的変異を受け継いだ場合に典型的な病型(例:HbSS)が発症します。一方で、異なる異常タイプ(例:HbSC、HbSβ-サラセミア)もあり、症状の重症度は変異の組み合わせにより変動します。

症状

SCDは多彩な症状と合併症を呈し、主に以下のように発現します:

主症状

  • 慢性溶血性貧血:赤血球寿命が短く、慢性的な貧血を来します。(遺伝性疾患プラス)
  • 疼痛発作(血管閉塞クリーゼ):細い血管への鎌状赤血球の詰まりによる激しい痛み。(ウィキペディア)
  • 手足の腫れ(幼児期):初期症状としてみられることがある。(Cleveland Clinic)
  • 感染症リスクの増加:脾機能障害に起因。(世界保健機関)

その他の症状・合併症

  • 急性胸部症候群、脳卒中・視力障害・腎機能障害などの臓器障害。(msdmanuals.com)
  • 疲労感・黄疸:溶血性貧血の影響。(Mayo Clinic)
  • 成長遅延・骨壊死・潰瘍など、慢性合併症。(遺伝性疾患プラス)

症状の現れ方や重症度は個人差が大きく、合併型によっても異なります。(疾病管理予防センター)

診断

鎌状赤血球症は以下の検査により診断されます:

  1. 血液検査:末梢血塗抹標本で鎌状赤血球の存在を確認。(msdmanuals.com)
  2. ヘモグロビン電気泳動:HbSや他の異常ヘモグロビンの同定。(msdmanuals.com)
  3. 新生児スクリーニング:出生直後にスクリーニングとして実施。(Mayo Clinic)
  4. 遺伝子検査(HBB):変異の同定により確定診断と保因者診断が可能です。

治療

鎌状赤血球症の治療は、症状緩和と合併症予防が中心です。

  • 疼痛管理:鎮痛薬や輸液による血流改善。(msdmanuals.com)
  • ヒドロキシウレア(Hydroxyurea):HbF産生を促し発作・合併症を減少。(msdmanuals.com)
  • 抗感染対策:ワクチン接種、抗菌薬予防。(msdmanuals.com)
  • 輸血療法:重症例や合併症時に実施。(msdmanuals.com)
  • 根治療法として**造血幹細胞移植(骨髄移植)**があり、適応例では長期生存が期待されます。(遺伝性疾患プラス)

治療選択は年齢、合併症、病型に応じて専門医と判断されます。

参考文献元

以下は本ページ作成に際して参照した主要文献・情報源です:

  1. World Health Organization – Sickle-cell disease fact sheet — 遺伝性・疫学・合併症・介入。(世界保健機関)
  2. MedlinePlus Genetics – Sickle cell disease — HBB遺伝子と疾患メカニズム。(MedlinePlus)
  3. NCBI Bookshelf / StatPearls – Sickle Cell Anemia — 遺伝と臨床特徴。(NCBI)
  4. Mayo Clinic – Sickle cell anemia symptoms & causes — 症状詳細。(Mayo Clinic)
  5. MSD Manuals – Sickle cell disease — 病態と治療方針。(msdmanuals.com)
  6. Genetics QLife – 鎌状赤血球症 症状と合併症 — 国内向け総説。(遺伝性疾患プラス)