概要
ムコリピドーシスIII型(Mucolipidosis III)は、ライソゾーム蓄積症に分類される先天性代謝異常症であり、ライソゾーム酵素の細胞内輸送障害によって引き起こされます。
本疾患は、グルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ活性の低下により、ライソゾーム内に本来送達されるべき分解酵素が細胞外に分泌され、細胞内に未分解物質が蓄積することで発症します。ムコリピドーシスIII型は臨床的にI型より軽症で、主に骨・関節系の異常を中心に、ゆっくりと進行する慢性疾患として経過します。特にIIIγ型はGNPTG遺伝子変異によるものです。
疫学
本疾患は極めて稀な疾患であり、正確な有病率は不明ですが、推定発生頻度は約10万〜40万人に1人とされています。
特定の民族集団への偏在は明確ではなく、世界各地から散発的に報告されています。
原因
病因
ムコリピドーシスIIIγ型は、GNPTG遺伝子の変異によって発症します。
GNPTG遺伝子は、ライソゾーム酵素にマンノース6リン酸(M6P)標識を付加する酵素複合体のγサブユニットをコードしています。この標識は、ライソゾーム酵素を正しくライソゾーム内へ輸送するために必須であり、この機構が障害されると酵素がライソゾームへ到達できず、結果として基質が細胞内に蓄積します。
遺伝形式
常染色体劣性遺伝形式をとります。
染色体位置
GNPTG遺伝子は 16番染色体長腕(16p13.3) に位置します。
遺伝子検査について
GNPTG遺伝子は、当院の遺伝子検査パネルで検査可能です。
症状
発症時期と経過
通常、幼児期(3~5歳頃)から症状が出現し、ゆっくりと進行します。
主な症状
- 低身長・成長障害
- 関節拘縮(手指・肩・股関節など)
- 関節可動域制限、関節痛
- 骨格異常(dysostosis multiplex)
- 骨粗鬆症、病的骨折
- 軽度の粗い顔貌
- 角膜混濁
- 心臓弁膜症(僧帽弁・大動脈弁)
知的発達は多くの場合保たれています。
診断
1. 臨床診断
骨X線での特徴的所見(dysostosis multiplex)、関節拘縮、低身長などから本疾患が疑われます。
2. 遺伝子診断
GNPTG遺伝子の両アレル変異の同定により確定診断が行われます。
3. 補助検査
- 血中ライソゾーム酵素活性異常
- 画像検査(X線、MRI)
- 心エコー検査
治療
根本治療は現時点では確立されておらず、対症療法および支持療法が中心となります。
- 理学療法による関節可動域維持
- 疼痛管理(鎮痛薬)
- 整形外科的手術(人工関節置換など)
- 心臓弁膜症に対する外科的治療
- 骨粗鬆症に対する治療
【参考文献】
- GeneReviews: Mucolipidosis III Gamma
- MedlinePlus Genetics: Mucolipidosis III gamma
- OMIM #252605
- 難病情報センター(参考類似疾患:ライソゾーム病)
