概要
ムコ多糖症IIIB型(Sanfilippo B)は、ムコ多糖症III型(MPS III)に分類されるライソゾーム蓄積症の一つで、中枢神経系の進行性障害を主徴とします。乳幼児期には比較的正常な発達を示しますが、幼児期後半から言語や認知の発達停滞、行動異常、睡眠障害などが徐々に現れ、進行すると発達の退行が目立つようになります。身体的な特徴は他のムコ多糖症と比べて軽度なことが多いのが特徴です。
疫学
ムコ多糖症III型全体の発生頻度は約7万人に1人と推定されており、その中でIIIB型は比較的頻度の高い型の一つとされています。ただし全体としては希少疾患です。
原因
病因
本疾患は、NAGLU遺伝子の変異により、α-N-アセチルグルコサミニダーゼというライソゾーム酵素が欠損または低下することで発症します。この酵素はヘパラン硫酸の分解に関与しており、その機能が失われるとヘパラン硫酸がライソゾーム内に蓄積し、特に脳神経細胞に障害をもたらします。
遺伝形式
常染色体劣性遺伝です。
遺伝子検査について
NAGLU遺伝子は当院の遺伝子検査で解析可能です。
症状
中枢神経症状
- 言語・認知発達の遅れや退行
- 多動、衝動性、攻撃性などの行動異常
- 睡眠障害
- けいれん(進行期)
全身症状
- 反復する中耳炎・上気道感染
- 軽度の関節拘縮や側弯
- 心臓弁膜症
- 難聴
診断
- 発達の停滞や退行、行動異常から疑います。
- 尿中グリコサミノグリカン(GAG)検査で異常を認めることがあります。
- 酵素活性測定でα-N-アセチルグルコサミニダーゼ活性低下を確認します。
- NAGLU遺伝子の両アレルに病的変異を認めることで確定診断となります。
治療
現時点では根本治療は確立しておらず、対症療法と支持療法が中心となります。
- 療育・教育的支援
- 行動異常や睡眠障害への薬物療法
- けいれんの治療
- 耳鼻科・整形外科・循環器などによる定期フォロー
【参考文献】
- GeneReviews®: Mucopolysaccharidosis Type III (Sanfilippo Syndrome)
- MedlinePlus Genetics: Mucopolysaccharidosis type III
- 難病情報センター:ムコ多糖症
