線毛機能不全症候群

Primary Ciliary Dyskinesia, DNAI2-related, DNAI2

概要

線毛機能不全症候群(Primary Ciliary Dyskinesia:PCD)は、気道・副鼻腔・中耳・生殖器などに存在する運動性線毛の構造や運動の異常によって、粘液の排出が障害される先天性疾患です。これにより、慢性的な呼吸器感染や副鼻腔炎、中耳炎、不妊などの症状を引き起こします。DNAI2関連PCDは、線毛の外側ダイニンアーム構造異常を特徴とする一型です。

疫学

PCDの有病率は約1万〜2万人に1人と推定されています。DNAI2関連型はその中でも比較的稀なサブタイプとされています。

原因

病因

本疾患はDNAI2遺伝子の変異によって発症します。DNAI2は線毛運動を担うダイニンアームの構成蛋白をコードしており、これが欠損または機能低下すると線毛運動が障害され、気道の自己浄化機能が低下します。

遺伝形式

常染色体劣性遺伝です。

遺伝子検査について

DNAI2遺伝子は当院の遺伝子検査で解析可能です。

症状

呼吸器症状

  • 新生児期からの多呼吸・呼吸障害
  • 慢性咳嗽、痰の貯留
  • 反復性肺炎・気管支炎
  • 気管支拡張症

耳鼻科症状

  • 反復性中耳炎
  • 難聴
  • 慢性副鼻腔炎

その他

  • 内臓逆位(約50%)
  • 男性不妊(精子運動障害)
  • 女性不妊(卵管線毛障害)

診断

  1. 乳児期からの慢性呼吸器症状で疑います。
  2. 鼻一酸化窒素(nNO)測定で低値を示します。
  3. 電子顕微鏡で線毛構造異常を確認します。
  4. 高速ビデオ解析で線毛運動異常を評価します。
  5. DNAI2遺伝子の両アレル変異同定で確定診断となります。

治療

根本治療はなく、気道管理を中心とした対症療法が基本です。

  • 定期的な喀痰排出・理学療法
  • 抗菌薬による感染治療・予防
  • 副鼻腔炎・中耳炎の治療
  • 呼吸機能の定期評価
  • 生殖医療による不妊治療支援

【参考文献】

  1. GeneReviews®: Primary Ciliary Dyskinesia
  2. MedlinePlus Genetics: Primary ciliary dyskinesia
  3. OMIM: DNAI2-related primary ciliary dyskinesia
  4. 難病情報センター:原発性線毛運動不全症