ライソゾーム病(ムコ多糖症IX型、ヒアルロニダーゼ欠損症)

Mucopolysaccharidosis, Type IX, HYAL1

概要

ムコ多糖症IX型(Mucopolysaccharidosis type IX:MPS IX)は、ヒアルロニダーゼ1(HYAL1)の欠損によりヒアルロン酸が分解されずに組織内に蓄積する極めて稀なライソゾーム蓄積症です。ヒアルロン酸は関節、皮膚、硝子体、血管壁などに広く存在するグリコサミノグリカンであり、その代謝障害により関節腫脹、関節可動域制限、滑膜肥厚などが主症状となります。古典的なムコ多糖症(I型〜VII型)と異なり、中枢神経障害や重度の臓器障害は比較的軽度である点が特徴です。

MPS IXは1996年に初めて報告され、世界でも報告症例は非常に限られています。(PMC)

疫学

MPS IXは最も稀なムコ多糖症型の一つで、報告例は世界で20例未満とされています。正確な有病率は不明ですが、極めて稀と考えられています。(Orphanet)

原因

本疾患はHYAL1遺伝子の両アレル病的変異により発症します。HYAL1遺伝子はヒト3番染色体(3p21)に位置し、ヒアルロン酸分解に関与するリソソーム酵素をコードします。この酵素が欠損するとヒアルロン酸が分解されずに蓄積します。(ヒロクリニック)

遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。

症状

関節

  • 反復性関節腫脹
  • 滑膜肥厚
  • 関節拘縮
  • 運動制限

骨格

  • 軽度の骨異形成
  • 成長障害(軽度)

その他

  • 皮下結節
  • 角膜混濁(軽度)
  • 反復性滑膜炎

知的発達は正常です。

診断

  1. 尿中ヒアルロン酸高値
  2. 関節MRIで滑膜肥厚
  3. HYAL1酵素活性低下
  4. 遺伝子診断(HYAL1解析)(PMC)

治療

  • 対症療法(鎮痛、抗炎症)
  • 整形外科的管理
  • 理学療法
  • 免疫抑制薬(滑膜炎に対して一部有効例あり)

酵素補充療法や遺伝子治療は現時点では確立していません。

参考文献

Mucopolysaccharidosis Type IX — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
Natowicz MR et al. Mucopolysaccharidosis type IX. N Engl J Med. 1996.(NEJM)
MPS IX — Orphanet Rare Disease Database.(Orphanet)
HYAL1 — Malacards Gene/Disease Database.(malacards.org)