概要
糖原病V型(McArdle病)は、骨格筋に存在するグリコーゲン分解酵素である筋ホスホリラーゼ(myophosphorylase)の欠損により発症する先天性代謝異常症です。運動時に筋内グリコーゲンをエネルギーとして利用できないため、軽度の運動でも筋痛、筋硬直、易疲労感を呈します。特徴的に「セカンドウインド現象」と呼ばれる、運動を継続すると症状が軽減する現象が見られることがあります。(ヒロクリニック)
疫学
糖原病V型は稀な疾患で、有病率は約10万人に1人と推定されています。欧米では比較的多く報告されており、日本ではさらに稀とされています。(PMC)
原因
本疾患はPYGM遺伝子の両アレル病的変異によって発症します。PYGM遺伝子はヒト11番染色体(11q13)に位置し、骨格筋特異的なグリコーゲンホスホリラーゼをコードします。この酵素が欠損すると、筋細胞内のグリコーゲンが分解されず、運動時にATP産生ができなくなります。(ヒロクリニック)
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。(malacards.org)
症状
糖原病V型は主に運動時の筋症状を呈します。(ヒロクリニック)
初期症状(小児期〜思春期)
- 運動開始直後の筋痛、筋こわばり
- 易疲労感
- 動作の継続困難
進行例・重症例
- 筋けいれん
- 横紋筋融解症
- 運動後の褐色尿(ミオグロビン尿)
心筋や肝臓は通常障害されません。(PubMed)
診断
糖原病V型の診断は以下の組み合わせで行われます。
1. 臨床所見
- 運動誘発性筋痛・筋硬直
- セカンドウインド現象
2. 血液検査
- CK高値(安静時でも上昇することが多い)
3. 運動負荷試験
- 乳酸上昇不良
4. 遺伝子診断
- PYGM遺伝子解析による確定診断 (PMC)
治療
根治療法はなく、生活指導と発作予防が中心です。
- 運動前の糖質摂取(スクロース負荷など)
- 激しい無酸素運動の回避
- 有酸素運動の段階的導入
- 横紋筋融解症の早期対応
標準治療は症状予防と生活調整が中心です。
参考文献
糖原病V型(McArdle病)— 遺伝子疾患解説ページ(ヒロクリニック)より。(ヒロクリニック)
DiMauro S et al. Muscle glycogenoses: McArdle disease. Lancet Neurol. 2007.(Lancet)
McArdle Disease — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
Glycogen Storage Disease Type V — Malacards Rare Disease Database.(malacards.org)
