概要
若年性ヘモクロマトーシス(Juvenile Hemochromatosis, Type 2A)は、鉄代謝を制御するホルモンであるヘプシジンの産生や調節に関与するHFE2(別名HJV:ヘモジュベリン)遺伝子の異常によって発症する、重症型の遺伝性鉄過剰症です。通常のヘモクロマトーシス(HFE関連)よりも早期に、思春期〜若年成人期から鉄過剰が進行し、肝臓、心臓、膵臓、内分泌臓器などに鉄沈着が起こります。
鉄の過剰蓄積は臓器障害を引き起こし、未治療の場合、心筋症、不整脈、肝硬変、糖尿病、性腺機能低下症などの重篤な合併症につながります。しかし、早期診断と適切な除鉄治療により予後の改善が可能です。(ヒロクリニック)
疫学
若年性ヘモクロマトーシスは極めて稀な疾患で、世界的に数百例未満の報告にとどまります。正確な有病率は不明ですが、欧州、地中海沿岸諸国、中東、インドなどで散発的に報告されています。(PMC)
原因
本疾患はHFE2遺伝子の両アレル病的変異によって発症します。HFE2遺伝子はヒト1番染色体(1q21)に位置し、ヘモジュベリンというタンパク質をコードします。ヘモジュベリンは肝臓でのヘプシジン産生を促進する重要な調節因子であり、その欠損によりヘプシジン分泌が低下します。ヘプシジンは小腸からの鉄吸収とマクロファージからの鉄放出を抑制するホルモンであるため、ヘプシジン欠乏により過剰な鉄吸収と鉄放出が起こり、全身性鉄過剰状態となります。(ヒロクリニック)
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。(malacards.org)
症状
症状は思春期〜若年成人期から出現します。(ヒロクリニック)
初期症状
- 易疲労感
- 関節痛
- 腹部不快感
進行期症状
- 肝腫大、肝硬変
- 心筋症、不整脈、心不全
- 糖尿病(膵臓鉄沈着)
- 性腺機能低下症(無月経、性欲低下、不妊)
- 皮膚色素沈着
心障害は予後を規定する最重要因子です。(PubMed)
診断
以下の組み合わせで診断されます。
1. 臨床所見
- 若年発症の肝障害・心障害・性腺機能低下
2. 血液検査
- フェリチン高値
- トランスフェリン飽和度上昇
3. 画像検査
- MRIで肝・心の鉄沈着評価
4. 遺伝子診断
- HFE2遺伝子解析による確定診断 (PMC)
治療
治療の基本は鉄除去です。
- 定期的瀉血療法
- 鉄キレート療法(重症例)
- 心不全・内分泌障害の管理
- 鉄摂取制限
早期治療により予後は大きく改善します。(Nature)
参考文献
若年性ヘモクロマトーシス(HFE2)— 遺伝子疾患解説ページ(ヒロクリニック)より。(ヒロクリニック)
Papanikolaou G et al. Mutations in HJV cause juvenile hemochromatosis. Nat Genet. 2004.(Nature)
Juvenile Hemochromatosis — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
Hemochromatosis Type 2A — Malacards Rare Disease Database.(malacards.org)
