概要
ムコリピドーシスIV型(Mucolipidosis Type IV:ML IV)は、リソソーム関連オルガネラの機能に関与するMCOLN1遺伝子の異常によって引き起こされる、希少な先天性リソソーム病です。MCOLN1はリソソーム膜に存在するカルシウムチャネル(ムコリピン1)をコードしており、細胞内の物質輸送やオートファジー、膜輸送の調節に重要な役割を果たします。この機能が障害されることで、細胞内に脂質や糖脂質が蓄積し、特に神経系と眼に強い障害を引き起こします。
本疾患は出生時から乳児期早期に発症し、重度の精神運動発達遅滞、視覚障害、筋緊張低下を呈し、進行は比較的緩徐ですが、生涯にわたる重度障害を残します。典型的なムコ多糖症とは異なり、粗顔貌や臓器腫大は目立たず、主に神経・眼症状が前景に立つことが特徴です。(ヒロクリニック)
疫学
ムコリピドーシスIV型は極めて稀な疾患で、世界的有病率は100万人に1人未満と推定されています。特にアシュケナージ系ユダヤ人集団で創始者効果により頻度が高く、保因者頻度は約1/100とされています。(PMC)
原因
本疾患はMCOLN1遺伝子の両アレル病的変異によって発症します。MCOLN1遺伝子はヒト19番染色体(19p13.2)に位置し、リソソーム膜に局在するTRPチャネルファミリー蛋白をコードします。この蛋白はリソソーム内カルシウム恒常性の維持に関与し、リソソーム機能と細胞内輸送を制御します。欠損によりリソソームの分解・輸送機能が障害され、未分解物質が蓄積します。(ヒロクリニック)
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。(malacards.org)
症状
乳児期〜小児期
- 重度精神運動発達遅滞
- 筋緊張低下
- 摂食障害
眼症状
- 角膜混濁
- 網膜変性
- 視力低下〜失明
その他
- 成長障害
- てんかん(まれ)
顔貌異常や骨異形成は軽度または欠如します。(PubMed)
診断
- 臨床所見(発達遅滞+角膜混濁)
- 眼科検査(角膜・網膜異常)
- MRIで白質異常を認める場合あり
- 遺伝子診断(MCOLN1解析)による確定 (PMC)
治療
根治療法はなく、支持療法が中心です。
- 視覚支援
- 理学療法・作業療法
- 摂食支援
- てんかん管理
現在、遺伝子治療や分子標的治療の研究が進行中です。(Nature)
参考文献
ムコリピドーシスIV型 — 遺伝子疾患解説ページ(ヒロクリニック)より。(ヒロクリニック)
Bargal R et al. Mucolipidosis type IV: clinical and molecular analysis. Nat Genet. 2000.(Nature)
Mucolipidosis Type IV — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
Mucolipidosis Type IV — Malacards Rare Disease Database.(malacards.org)
