概要
N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(NAGS)欠乏症は、尿素回路の最初の律速酵素であるカルバモイルリン酸合成酵素I(CPS1)を活性化する補因子N-アセチルグルタミン酸(NAG)の産生障害によって生じる、希少な先天性尿素回路異常症です。NAGはCPS1の必須アロステリック活性化因子であり、その欠乏によりアンモニアの解毒ができなくなります。その結果、血中アンモニアが急激に上昇し、高アンモニア血症による意識障害、脳浮腫、昏睡を引き起こします。
本疾患は新生児期発症型から成人発症型まで幅広い臨床像を示しますが、いずれも高アンモニア血症発作が生命予後を規定します。適切な治療により可逆的である点が特徴です。(ヒロクリニック)
疫学
尿素回路異常症全体の頻度は約3万出生に1人とされますが、NAGS欠乏症はその中でも最も稀な型の一つで、世界的に数十例〜100例程度の報告にとどまります。(PMC)
原因
本疾患はNAGS遺伝子の両アレル病的変異によって発症します。NAGS遺伝子はヒト17番染色体(17q21)に位置し、ミトコンドリア内でNAGを合成する酵素をコードします。NAGが欠乏するとCPS1が不活性化され、尿素回路全体が停止しアンモニアが解毒されなくなります。(ヒロクリニック)
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。(malacards.org)
症状
新生児型
- 哺乳不良
- 嘔吐
- 嗜眠
- 呼吸促迫
- 昏睡
小児・成人型
- 反復する嘔吐
- 頭痛
- 行動変化
- 意識障害
診断
- 高アンモニア血症(重度)
- 肝機能は比較的保たれる
- 血中アミノ酸パターンで尿素回路障害示唆
- 遺伝子診断(NAGS変異同定)(PMC)
治療
- カルグルミン酸(NAGアナログ)投与(特効薬)
- 高アンモニア血症時の緊急対応(透析)
- タンパク制限
- 感染・飢餓回避
参考文献
N-アセチルグルタミン酸シンターゼ欠乏症 — 遺伝子疾患解説ページ(ヒロクリニック)より。(ヒロクリニック)
Caldovic L et al. NAGS deficiency: a treatable urea cycle disorder. Mol Genet Metab. 2010.(Nature)
NAGS Deficiency — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
N-acetylglutamate Synthase Deficiency — Malacards Rare Disease Database.(malacards.org)
