概要
ムコリピドーシスⅢ型(Mucolipidosis type III)は、リソソーム酵素の細胞内輸送異常により生じる先天性代謝異常症です。GNPTAB遺伝子は、リソソーム酵素にマンノース-6-リン酸(M6P)標識を付加するN-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ複合体のサブユニットをコードしており、その欠損によりリソソーム酵素が正しく標的化されず細胞外へ漏出します。その結果、細胞内で分解されるべき糖脂質や糖タンパク質が蓄積し、骨格系、関節、心臓、肝臓など多臓器に障害が生じます。
ムコリピドーシスⅢ型はムコリピドーシスⅡ型(I-cell病)より軽症で、主に小児期以降に発症し、緩徐に進行する骨・関節障害が主体となります。(PMC)
疫学
ムコリピドーシスは極めて稀な疾患で、ムコリピドーシスⅢ型の正確な有病率は不明ですが、出生10万人あたり1例未満と推定されています。(Orphanet)
原因
本疾患はGNPTAB遺伝子の両アレル病的変異により発症します。GNPTABはヒト12番染色体(12q23)に位置し、リソソーム酵素の標識に必須な酵素複合体のα/βサブユニットをコードします。これによりM6Pタグ付加が障害され、リソソーム酵素が細胞外に分泌され、細胞内では基質が分解されず蓄積します。(ヒロクリニック)
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。
症状
骨・関節
- 関節拘縮
- 成長障害
- 脊柱後弯・側弯
- 手指の短縮
顔貌
- 軽度の粗顔貌
心臓
- 弁膜症
その他
- 肝脾腫(軽度)
- 聴力障害
知的発達は多くの症例で比較的保たれます。
診断
- 血清リソソーム酵素活性の異常高値
- 尿中ムコ多糖増加(軽度)
- X線での骨異形成
- 遺伝子診断(GNPTAB解析)(PMC)
治療
- 対症療法中心
- 整形外科的治療
- 心臓フォロー
- リハビリテーション
酵素補充療法や遺伝子治療は現時点では確立していません。
参考文献
ムコリピドーシスⅢ型 — 遺伝子疾患解説ページ(ヒロクリニック)より。(ヒロクリニック)
Tiede S et al. Mucolipidosis II and III: review. Orphanet J Rare Dis. 2005.(Orphanet)
Mucolipidosis II/III — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
Mucolipidosis type III — Malacards Rare Disease Database.(malacards.org)
