骨形成不全症V型、あるいは単にV型OIという診断名を聞き、情報を求めてこのページにたどり着かれたご家族の方へ。
医師から「骨が弱い病気です」という説明に加え、「骨の治り方に少し特徴があります」や「V型という少し珍しいタイプです」といったお話があり、戸惑いや不安を感じていらっしゃるかもしれません。
骨形成不全症自体は、国の指定難病に認定されている疾患ですが、その中でもV型は2000年に新たに定義された比較的新しい分類です。そのため、インターネットで検索しても、I型やII型などの一般的な情報は出てきても、V型に特化した詳しい日本語の情報は少なく、具体的な生活のイメージが湧きにくいことが不安を大きくさせている要因かもしれません。
この病気は、骨の強さに関わる遺伝子の変化によって起こる生まれつきの体質です。
V型の最大の特徴は、骨折が治る過程で骨が過剰に作られてしまう過形成仮骨や、腕の骨の間の膜が硬くなるといった、他の型には見られないユニークな症状を持つことです。
まず最初にお伝えしたいのは、適切な治療と環境調整を行えば、お子さんはその子らしく元気に成長し、自立した人生を送ることができるということです。
あまり恐れすぎず、一つひとつ知識を整理していきましょう。
概要:どのような病気か
まず、この病気がどのような位置づけにあるのかを理解しましょう。
骨形成不全症とは
骨形成不全症は、骨がもろく、弱い力でも骨折しやすくなる病気です。英語ではOsteogenesis Imperfectaといい、頭文字をとってOIと呼ばれます。
全身の結合組織、つまり体を支える組織に影響が出るため、骨だけでなく、皮膚や目、耳などにも症状が出ることがあります。
V型という分類について
以前、骨形成不全症は症状の重さや遺伝の仕方によってI型からIV型までの4つに分類されていました。これをサイレンス分類と呼びます。
しかし、研究が進むにつれて、これまでの4つの型のどれにも当てはまらない特徴を持つ患者さんがいることがわかってきました。
そこで2000年に、グロリューという医師らによって新たに提唱されたのが、このV型です。
どのような特徴があるか
V型は、臨床的な重症度としては中等度に分類されることが多いです。
何度も骨折を繰り返すことはありますが、生命に関わるような重篤な呼吸障害などは稀です。
V型を決定づける最大の特徴は、骨折したあとにできる新しい骨である仮骨が、異常に大きく腫れ上がってしまう過形成仮骨という現象や、前腕の骨と骨の間にある膜が石灰化して硬くなる現象が見られることです。
発生頻度
骨形成不全症全体のなかで、V型が占める割合は約5パーセント程度と言われています。非常に稀なタイプではありますが、特徴がはっきりしているため、専門医であればレントゲン検査などで診断をつけることが可能です。
主な症状
V型の症状は、骨のもろさに加えて、この型特有のユニークな症状がいくつかあります。
特に、目や歯の症状が他の型と異なる点が診断のポイントになります。
1. 骨折と骨の変形
易骨折性と呼ばれる骨のもろさがあり、転んだり、少しぶつけたりしただけで骨折してしまうことがあります。
骨折の頻度は人によって様々ですが、歩き始めの時期や、活発に動くようになる学童期に増える傾向があります。大人になると骨折の回数は減っていくことが一般的です。
また、度重なる骨折や、骨の柔らかさによって、手足の骨が弓なりに曲がってしまう変形が見られることがあります。
さらに、背骨が押しつぶされる圧迫骨折を起こしたり、背骨が左右に曲がる側弯症になったりすることで、身長が伸びにくくなる低身長が見られることもあります。
2. 過形成仮骨
これがV型における最大の特徴であり、ご家族が一番驚かれる症状です。
通常、骨折をすると、折れた部分をつなぐために仮骨と呼ばれる新しい骨が作られます。
通常の仮骨は、骨がくっつけば自然に小さくなって元の骨の形に戻っていきます。
しかしV型の患者さんでは、この仮骨が過剰に作られてしまい、骨折した場所がコブのように大きく腫れ上がることがあります。
レントゲンで見ると、骨の周りにもくもくとした雲のような影が広がって見えます。
見た目が骨腫瘍、つまり骨のがんに似ているため、この病気を知らない医師が見ると、腫瘍と間違われてしまうことさえあります。しかし、これは良性の変化であり、がんではありません。
この過剰な仮骨は、痛みや熱感を伴うことがあり、落ち着くまでに時間がかかりますが、数ヶ月から数年かけて徐々に小さくなっていきます。
3. 前腕骨間膜の石灰化
これもV型に特有の症状です。
腕の肘から手首までの部分を前腕といいます。ここには橈骨と尺骨という2本の骨があります。
通常、この2本の骨の間には骨間膜という柔らかい膜があり、この膜のおかげで、私たちはドアノブを回したり、手のひらを上に向けたり下に向けたりする回旋運動ができます。
V型では、この膜にカルシウムが沈着して骨のように硬くなってしまう石灰化が起こります。
膜が硬くなると、2本の骨が固定されてしまい、腕をひねる動作がしにくくなります。
そのため、手のひらを上に向けることができない、ドアノブを回しにくい、キーボードを打つときに脇を開かないといけないといった制限が出ることがあります。
4. 橈骨頭の脱臼
肘の関節にある橈骨の頭の部分が、正しい位置から外れてしまう脱臼を起こしやすい傾向があります。これにより、肘の動きが悪くなったり、腕が真っ直ぐ伸びなかったりすることがあります。
5. 目と歯の特徴(他の型との違い)
ここが診断の大きな分かれ道となります。
骨形成不全症のI型などでは、白目の部分が青く見える青色強膜が有名ですが、V型では白目は通常通りの白色であることがほとんどです。
また、骨形成不全症の他の型では、歯が透き通った灰色や褐色になり、欠けやすくなる象牙質形成不全が見られることがありますが、V型では歯は正常に形成され、白く丈夫であることが多いです。
原因
なぜ、V型特有の症状が現れるのでしょうか。その原因は、骨を作る指令を出す遺伝子の変化にあります。
IFITM5遺伝子の変異
骨形成不全症の患者さんの約90パーセントは、I型コラーゲンというタンパク質を作る遺伝子に変異があります。
しかし、V型の原因はこれらとは全く異なり、第11番染色体にあるIFITM5と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされます。
IFITM5遺伝子の役割
この遺伝子は、BRILというタンパク質を作る設計図です。
BRILタンパク質は、骨を作る細胞である骨芽細胞の膜に多く存在し、骨にカルシウムが沈着して硬くなる石灰化のプロセスや、骨の形成を調節する役割を担っています。
何が起きているのか
V型の患者さんのほぼ全員に、この遺伝子の特定の部分に、たった一つの塩基の変化が見つかります。専門的にはc.-14C>Tという変異です。
この変異が起きると、BRILタンパク質の構造や量が変化し、骨を作る指令が異常になります。
その結果、骨の質が変化してもろくなったり、骨折したときの修復反応が過剰になって過形成仮骨ができたりすると考えられています。
遺伝について
この病気は常染色体顕性遺伝という形式をとります。以前は優性遺伝と呼ばれていました。
ご両親のどちらかがV型である場合、お子さんに遺伝する確率は50パーセントです。性別による違いはありません。
しかし、ご両親ともに骨形成不全症ではない場合でも、お子さんの代で初めて変異が起こる突然変異のケースが多くあります。
これは、受精卵ができる過程で偶然に起きた変化であり、誰のせいでもありません。妊娠中の生活が悪かったといったことは一切関係ありません。

診断と検査
診断は、特徴的なレントゲン所見と、身体所見、そして遺伝学的検査を組み合わせて行われます。
1. レントゲン検査
V型の診断において最も重要な検査です。
以下の3つの特徴、いわゆる三徴候があるかどうかを確認します。
- 過形成仮骨: 過去の骨折部位や、現在治癒中の部分に、もくもくとした大きな骨の影があるか。
- 骨間膜の石灰化: 前腕の2本の骨の間に、うっすらと骨のような影が見えるか。
- 橈骨頭脱臼: 肘の関節の骨がずれていないか。
さらに、膝のあたりの骨に、メッシュ状の独特な模様が見えることもV型の特徴です。これを網目状陰影と呼びます。
2. 身体所見の確認
医師は診察で以下の点を確認し、他の型と区別します。
- 白目が青くないこと。
- 歯が正常であること。
- 前腕の回旋運動、例えばキラキラ星の手の動きなどが制限されていること。
3. 遺伝学的検査
確定診断のために行われます。
血液を採取し、DNAを解析してIFITM5遺伝子に変異があるかを調べます。
V型の場合は、先述した特定の変異がほぼ100パーセントの患者さんで見つかるため、遺伝子検査による確定診断が非常に有効です。
治療と管理
現在の医学では、遺伝子を修復して骨を丈夫にするような根本的な治療法はまだ確立されていません。
しかし、骨折を減らし、身体機能を維持するための治療法は大きく進歩しています。
整形外科、小児科、リハビリテーション科、歯科などが連携して、長期的にお子さんをサポートします。
1. 薬物療法
現在、骨形成不全症の治療の柱となっているのが、ビスホスホネート製剤です。パミドロン酸やアレンドロン酸といったお薬が使われます。
骨は常に、古い骨を壊す破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞が働いて、作り変えられています。
ビスホスホネート製剤は、骨を壊す細胞の働きを抑えることで、骨の密度を増やし、骨折しにくくします。
V型においても、骨密度を増加させ、骨折の回数を減らしたり、痛みを和らげたりする効果が期待されています。
点滴で行う場合と、飲み薬で行う場合があります。お子さんの年齢や状態に合わせて医師が選択します。
ただし、過形成仮骨そのものを小さくする効果については、まだはっきりとした結論は出ていません。
2. 外科的治療
骨が折れてずれてしまった場合や、変形が強くて歩きにくい場合などに手術を行います。
骨の中に金属の棒を通して、骨を真っ直ぐに支える髄内釘手術が一般的です。
成長に合わせて伸びる特殊な釘であるテレスコピックネイルを使うこともあります。
V型における手術の注意点として、手術の刺激によって過形成仮骨が発生してしまうリスクがあります。
そのため、手術を行うかどうか、どのタイミングで行うかは、専門医による慎重な判断が必要です。
また、前腕の骨間膜の石灰化に対して、骨を切除して動きを良くする手術が行われることもありますが、再発することもあり、難しい手術の一つです。
3. リハビリテーション
薬や手術と同じくらい大切なのがリハビリです。
骨折を恐れて動かないでいると、筋力が落ち、骨もさらに弱くなってしまいます。
理学療法士の指導のもと、無理のない範囲で体を動かし、筋力をつけることが骨を守ることにつながります。
特にプールでの運動は、浮力で骨への負担を減らしながら全身運動ができるため、非常に推奨されています。
4. 日常生活での管理
転倒を防ぐための環境作り、例えば床の段差をなくすなどの工夫が大切です。
学校生活では、体育の授業などで接触プレーを避けるなどの配慮が必要ですが、過度な制限は子供の心身の成長を妨げるため、主治医と学校とよく相談して、できることは積極的に参加させることが推奨されます。
また、成長に伴って背骨の変形が出てこないか、定期的にレントゲンでチェックします。
まとめ
骨形成不全症V型についての解説をまとめます。
- 病気の本質: IFITM5遺伝子の変異により、骨の形成や修復のプロセスに異常が生じる病気です。
- 主な特徴: 中等度の骨のもろさに加え、骨折後の過剰な骨形成である過形成仮骨、腕が回しにくくなる前腕骨間膜の石灰化、橈骨頭脱臼が特徴です。
- 他の型との違い: 白目は青くなく、歯も正常であることが多いです。
- 治療の柱: ビスホスホネート製剤による骨強化、手術による変形の矯正、そしてリハビリテーションによる身体機能の維持が中心となります。
