骨形成不全症I型(Osteogenesis Imperfecta Type I)

ハート

骨形成不全症I型、あるいはI型OIという診断名を聞き、情報を求めてこのページにたどり着かれたご家族の方へ。

医師から「骨が弱い病気です」と告げられ、お子さんが骨折したレントゲン写真を見せられたとき、大きなショックを受けられたことと思います。「これからどうやって育てていけばいいのだろう」「普通の生活は送れないのではないか」と、不安で胸がいっぱいになっているかもしれません。

まず最初にお伝えしたい最も大切なことがあります。

骨形成不全症にはいくつかのタイプがありますが、今回解説するI型は、その中でも最も症状が軽く、患者数も最も多いタイプです。

適切な管理と周囲の理解があれば、通常の学校生活を送り、スポーツを楽しみ、大人になって社会で活躍し、ご自身の家庭を持っている方がたくさんいらっしゃいます。

「難病」という言葉の響きに過度に恐れすぎないでください。

この病気は、骨の強さに関わる遺伝子の変化によって起こる生まれつきの体質です。

I型の最大の特徴は、白目の部分が青く見えることと、骨折しやすい傾向があるものの、骨の変形は少なく、身長も比較的正常に伸びることです。

お子さんの未来は決して暗いものではありません。

あまり恐れすぎず、一つひとつ知識を整理していきましょう。

概要:どのような病気か

まず、この病気がどのような位置づけにあるのかを理解しましょう。

骨形成不全症とは

骨形成不全症は、骨がもろく、弱い力でも骨折しやすくなる病気です。英語ではOsteogenesis Imperfectaといい、頭文字をとってOIと呼ばれます。

全身の結合組織、つまり体を支える組織に影響が出るため、骨だけでなく、皮膚や目、耳などにも症状が出ることがあります。

I型という分類について

骨形成不全症は、症状の重さや特徴によってI型からIV型、あるいはさらに細かい型に分類されています。これをサイレンス分類と呼びます。

  • I型: 最も軽く、骨の変形がほとんどないタイプ。
  • II型: 最も重く、周産期に亡くなることが多いタイプ。
  • III型: 重症で、進行性の変形が見られるタイプ。
  • IV型: I型とIII型の中間にあたる中等度タイプ。

I型は、骨形成不全症全体の約70パーセントを占める最も頻度の高いタイプです。

最大の特徴は、症状が比較的マイルドであることです。

骨折の回数は人によって大きく異なりますが、一生のうちに数回しか骨折しない人もいれば、数十回骨折する人もいます。しかし、重症型のように寝たきりになったり、著しい低身長になったりすることは稀です。

発生頻度

骨形成不全症全体の発症率は約2万人に1人から3万人に1人と言われていますが、I型はその大半を占めます。

症状が軽微で骨折をあまりしない方の中には、診断がつかないまま大人になっているケースもあり、実際の頻度はもっと高いのではないかと考えられています。

主な症状

I型の症状は、骨のもろさだけでなく、目や耳、歯などにも特徴が現れることがあります。

これらはすべて、コラーゲンというタンパク質が関係している組織です。

1. 易骨折性(骨折のしやすさ)

転んだり、少しぶつけたりしただけで骨折してしまうことがあります。これを易骨折性と呼びます。

I型の場合、生まれた時に骨折していることは少なく、多くは歩き始めの時期や、活動範囲が広がる幼児期から学童期に初めての骨折を経験します。

骨折の回数は、活動量が増える小学生くらいの時期にピークを迎えることが多いです。

しかし、成長期が終わり、ホルモンバランスが変わる思春期以降になると、骨が硬く丈夫になり、骨折の回数は劇的に減っていきます。

大人になってからは、交通事故などの大きな怪我がない限り、骨折することは少なくなります(ただし、閉経後の女性や高齢になると再びリスクが上がることがあります)。

2. 青色強膜(青い白目)

これがI型を診断する上で最も特徴的なサインです。

白目の部分である強膜が、青く透き通って見えます。濃い青色から、薄い水色まで個人差があります。

これは、強膜を作るコラーゲン繊維が薄いために、眼球の内側にある脈絡膜という膜の色が透けて見えている現象です。

視力には直接影響しないことがほとんどですが、I型の患者さんの多くに見られる重要な特徴です。

3. 身長と体格

I型のお子さんは、平均的な身長か、あるいは平均より少し低いくらいで成長します。

重症型で見られるような著しい低身長や、手足の極端な短縮はありません。

また、骨の変形もほとんど見られません。度重なる骨折によって多少のゆがみが出ることはありますが、適切な治療を行えば真っ直ぐな手足を保つことができます。

4. 難聴

耳の中にある音を伝える小さな骨、耳小骨に異常が生じることで、難聴を合併することがあります。

子供の頃から難聴があることは稀で、多くは20代から30代以降の成人期に発症します。

伝音性難聴と呼ばれるタイプが多く、補聴器や手術によって聞こえを改善することが可能です。

定期的な聴力検査を受けることが大切です。

5. 歯の形成不全(象牙質形成不全)

一部のI型の患者さんには、歯の形成に問題が出ることがあります。これを象牙質形成不全と呼びます。

歯が透き通ったような琥珀色や灰色に見えたり、歯が欠けやすかったりします。

以前の分類では、歯の症状がないものをIA型、あるものをIB型と呼んでいましたが、現在はまとめてI型として扱われることが多いです。

I型では歯の症状がないことの方が多いですが、もし見られる場合は歯科でのケアが重要になります。

6. その他

  • 関節の緩さ: 靭帯が柔らかいため、関節が通常よりも大きく動いてしまう過伸展が見られることがあります。捻挫をしやすい傾向があります。
  • 皮膚の薄さ: 皮膚が薄く、少しの刺激で内出血やあざができやすいことがあります。
  • 三角顔: おでこが広く、あごが小さい逆三角形のような顔立ちになることがあります。

原因

なぜ、骨がもろくなるのでしょうか。その原因は、骨の「量」の問題にあります。

I型コラーゲンの「量」の減少

骨形成不全症I型の原因は、I型コラーゲンというタンパク質を作る遺伝子の変異です。

骨は、カルシウムなどのミネラル成分(コンクリート)と、コラーゲン繊維(鉄筋)の組み合わせでできています。

I型コラーゲンは、骨に柔軟性と強度を与えるための非常に重要な「鉄筋」の役割を果たしています。

ここが重症型との大きな違いであり、I型が軽症である理由です。

I型の患者さんの体の中では、作られるコラーゲンの「質」は正常です。つまり、鉄筋自体の強度は問題ありません。

しかし、作られるコラーゲンの「量」が、通常の人のおよそ半分くらいに減ってしまっています。

鉄筋の質は良いけれど、本数が足りないために、骨全体の強度が落ちてしまっている状態です。これを「量的欠損」や「ハプロ不全」と呼びます。

一方、重症のII型やIII型では、コラーゲンの「質」が悪い(不良品の鉄筋が作られる)ため、骨の構造がめちゃくちゃになり、非常に重い症状が出ます。

I型は「正常なものが少ないだけ」なので、症状が軽いのです。

原因遺伝子

具体的には、COL1A1という遺伝子に変異が起きていることがほとんどです。この遺伝子は、I型コラーゲンを作るための設計図の一つです。

設計図の一部が機能しなくなることで、コラーゲンの生産量が減ってしまいます。

遺伝について

この病気は常染色体顕性遺伝という形式をとります。以前は優性遺伝と呼ばれていました。

ご両親のどちらかがI型である場合、お子さんに遺伝する確率は50パーセントです。

しかし、I型の患者さんの約半数は、ご両親ともに骨形成不全症ではなく、お子さんの代で初めて変異が起こる突然変異のケースです。

これは、受精卵ができる過程で偶然に起きた変化であり、誰のせいでもありません。

「妊娠中の牛乳不足」や「運動不足」といったことは一切関係ありません。

医者

診断と検査

診断は、特徴的な症状、レントゲン検査、そして遺伝学的検査を組み合わせて行われます。

1. 身体所見の確認

医師は診察で以下の点を確認します。

  • 青い白目(青色強膜)があるか。
  • 骨折を繰り返しているか。
  • 家族に同じような症状の人がいるか。
  • 歯や聴力に問題がないか。

I型の場合、見た目の変形がほとんどないため、乳幼児期に骨折するまでは気づかれないこともよくあります。

「虐待による骨折」と間違われないように、正確な診断を受けることが非常に重要です。

2. レントゲン検査・骨密度検査

全身の骨のレントゲンを撮り、以下の点を確認します。

  • 骨の密度が低く、薄く写っていないか。
  • 過去の骨折の跡があるか。
  • 頭の骨に特有の細かい骨(ウォーミアン骨)があるか。

また、DEXA法などを用いて骨密度を測定し、同年代の平均と比べてどのくらい低いかを評価します。I型では、骨密度が低い(骨粗鬆症のような状態)ことが多いです。

3. 遺伝学的検査

確定診断のために行われます。

血液を採取し、DNAを解析してCOL1A1遺伝子に変異があるかを調べます。

これにより、他の病気との区別や、将来的な遺伝カウンセリングに役立ちます。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子を修復してコラーゲンの量を増やすような根本的な治療法はまだ確立されていません。

しかし、骨を強くし、骨折を防ぐための治療法は確立されており、多くの患者さんが恩恵を受けています。

1. 薬物療法(ビスホスホネート製剤)

現在、骨形成不全症の治療の柱となっているのが、ビスホスホネート製剤です。パミドロン酸やアレンドロン酸といったお薬が使われます。

骨は常に、古い骨を壊す破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞が働いて、作り変えられています。

ビスホスホネート製剤は、骨を壊す細胞の働きを抑えることで、骨が溶け出すのを防ぎ、結果として骨の密度を増やします。

I型のお子さんの場合、骨折を繰り返す場合や、背骨の圧迫骨折が見られる場合に、この治療が行われます。

点滴で行う方法と、飲み薬で行う方法があります。

これにより、骨折の回数が減り、骨の痛み(骨痛)が和らぐ効果が期待されています。

2. リハビリテーションと運動

薬と同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが運動です。

「骨折が怖いから」といって安静にしすぎると、筋力が落ち、骨への刺激が減ってしまい、かえって骨が弱くなってしまいます。

筋肉は、骨を守る天然のプロテクターです。

理学療法士の指導のもと、無理のない範囲で体を動かし、筋力をつけることが大切です。

特に水泳は、浮力で骨への負担を減らしながら全身の筋肉を鍛えられるため、I型のお子さんに最も推奨されるスポーツです。

一方で、ラグビーや柔道のような、激しい接触があるコンタクトスポーツは避けたほうが無難です。

3. 整形外科的治療

骨折した場合は、ギプス固定や手術などで治療します。

I型の場合、骨の癒合(くっつきやすさ)は通常の人と変わりません。

ただし、長期間ギプスをしていると骨が弱くなるため、できるだけ早期にリハビリを開始したり、軽量のギプスを使ったりするなどの工夫がなされます。

骨折を繰り返して骨が曲がってしまった場合には、骨の中に金属の棒を通して補強する手術が行われることもありますが、I型でそこまで必要になるケースは比較的少ないです。

4. 日常生活での注意点

  • 環境整備: 家の中の段差をなくす、滑り止めをつけるなど、転倒予防を心がけます。
  • 学校生活: 学校の先生に病気のことを正しく理解してもらい、体育の授業などで必要な配慮(跳び箱や器械体操の回避など)をお願いします。しかし、過度な制限は必要ありません。休み時間に友達と遊ぶことなどは、基本的に推奨されます。
  • 定期検診: 成長してからも、聴力検査や歯科検診、骨密度のチェックを定期的に受けます。

まとめ

骨形成不全症I型についての解説をまとめます。

  • 病気の本質: コラーゲンの「質」は正常ですが、「量」が少ないために骨が弱くなる病気です。
  • 重症度: 骨形成不全症の中で最も軽症であり、予後は良好です。
  • 主な特徴: 青色強膜(青い白目)、易骨折性、正常に近い身長、難聴のリスクなどが特徴です。
  • 治療の柱: 必要な場合のビスホスホネート製剤、適切な運動による筋力強化、そして定期的なフォローアップが中心となります。

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