こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。
妊娠中、ふとした瞬間に不安になることはありませんか?
「予定日通りに生まれてきてくれるかな」
「SNSで『切迫早産で入院した』という投稿を見て、急に怖くなった……」
早産や切迫早産は、体質や年齢、あるいは運命のようなもので、「防ぎようがない」と思われがちです。
しかし、医療の現場では「それだけでは説明できない早産」が数多く存在します。
そしてその原因の一つに、特別な病気や異常ではなく、私たちが毎日何気なく続けている**「ある習慣」**が深く関わっていることが分かっています。
今日は、身近すぎて見落とされがちな「早産を誘発する隠れたリスク」について、そのメカニズムと、今日からできる具体的な対策を、医学的エビデンスをもとに解説していきます。
まず、早産の原因について整理しましょう。
通常、産婦人科の健診では、超音波検査で「子宮頸管長(子宮の入り口の長さ)」を測ったり、おりものの検査で感染症の有無をチェックしたりして、早産のリスクを評価します。
しかし実際には、これらの検査で異常が見つからないにもかかわらず、突然お腹が張り、早産に至ってしまう妊婦さんが一定数存在します。いわゆる「原因不明」とされるケースです。
こうした妊婦さんたちを、産科以外の視点も含めて詳しく追跡していくと、ある一つの共通点が浮かび上がってきます。
それは、お腹の張りや出血といった自覚症状がほとんどない、**「口の中の炎症」です。 つまり、「歯周病」**です。
「えっ、口と子宮? 場所も離れているし、関係あるの?」
そう驚かれるのも無理はありません。しかし、これは決して都市伝説ではなく、しっかりとした医学的根拠のある事実なのです。
アメリカのノースカロライナ大学の研究によると、**「歯周病の妊婦さんは、そうでない人に比べて早産のリスクが数倍も高くなる」**と報告されています。
では、口の中の菌が、どうやって遠く離れた子宮に悪さをするのでしょうか?
その運び屋となるのが**「血液」**です。
歯周病になると、歯茎が炎症を起こし、出血しやすくなります。
そこから、口の中で増殖した歯周病菌や、炎症によって生じた「サイトカイン」という毒素(生理活性物質)が血管内に侵入します。
これらは血流に乗って全身を巡り、やがて子宮にたどり着きます。
すると、体は子宮に到達した毒素を感知し、こう勘違いしてしまいます。
「大変だ! ここ(子宮)が炎症を起こしている! もう赤ちゃんを外に出して守らなきゃ!」
その結果、本来まだ押してはいけない「陣痛スイッチ(子宮収縮)」が誤って押されてしまい、早産や陣痛が引き起こされるのです。
つまり、口の中の火事が、飛び火して子宮でボヤ騒ぎを起こしているような状態と言えます。
「私は妊娠前に歯医者さんで問題ないと言われたから大丈夫」
そう思っている方こそ、注意が必要です。
実は妊娠中というのは、今までお口が健康だった人でも、口内環境が劇的に悪化しやすい**「災害モード」**のような時期なのです。
その理由は大きく分けて3つあります。
妊娠中に急増する女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)。
実は、ある特定の歯周病菌(プレボテラ・インターメディアなど)は、この女性ホルモンを栄養源(エサ)にして爆発的に増殖するという性質を持っています。
さらに、プロゲステロンには血管を広げる作用もあるため、ただでさえ菌の攻撃を受けている歯茎が真っ赤に腫れ上がり、少しの刺激ですぐに出血する「妊娠性歯肉炎」になりやすくなるのです。
本来、唾液には口の中の汚れを洗い流し、細菌の繁殖を抑える「自浄作用」があります。
しかし妊娠中は、ホルモンの影響で唾液の質が変化し、粘り気の強いネバネバとした唾液になります。
その結果、サラサラ唾液による洗浄効果が弱まり、歯の表面にプラーク(歯垢)が定着しやすい環境になってしまいます。
つわりの時期は、歯ブラシを口に入れるだけで吐き気がしてしまい、十分に磨けなくなることがあります。
また、空腹で気持ち悪くなるのを防ぐために「ちょこちょこ食べ」をすると、口の中が常に酸性に傾いた状態が続きます。
歯が再石灰化(修復)する時間が取れず、菌が活発に活動し続けるため、虫歯や歯周病のリスクが一気に高まります。
【妊娠中にリスクが高まる理由】
| 原因 | 口の中で起きていること |
| :— | :— |
| ホルモン | 菌がホルモンを食べて増殖し、歯茎が腫れやすくなる |
| 唾液 | ネバネバして自浄作用が弱まり、汚れが落ちにくい |
| つわり・食事 | 磨けない・食べ続けることで、口内が酸性になり菌が活発化 |
「リスクがあるのは分かったけど、つわりで歯磨きが辛い……」
そんな妊婦さんのために、無理なく続けられる医学的な工夫を4つご紹介します。
完璧を目指す必要はありません。できる範囲でリスクを減らしていきましょう。
「食べたらすぐ磨かなきゃ」という固定観念は捨ててください。
食後は副交感神経が優位になり、消化管が動くため、吐き気を感じやすいタイミングでもあります。
歯垢(プラーク)が形成されるのには約24時間かかると言われています。つまり、1日のどこかで一度リセットできればOKです。
お風呂に入っている時や、テレビを見ている時など、「1日の中で一番体調が良い時間」を選んで、リラックスして磨きましょう。
市販の歯磨き粉に含まれる発泡剤(泡立つ成分)や強いミントの香料は、敏感な粘膜を刺激し、嘔吐反射(オエッとなる反射)を誘発します。
つわりの時期は、低刺激のジェルタイプに変えるか、いっそのこと**「水だけで磨く」**のも有効です。
汚れを落とす主役は「ブラシによる物理的な清掃」です。歯磨き粉は必須ではありません。
洗面台に向かって下を向くと、喉の奥が圧迫され、唾液が溜まって吐き気を催しやすくなります。
椅子に座って少し顎を上げたり、ソファでくつろぎながら顔を上げて磨いてみてください。気道を確保し、唾液を飲み込みやすくすることで、生理的に吐き気が起きにくい体勢を作れます。
ヘッドの小さい歯ブラシを使うのもおすすめです。
「今日はどうしても歯ブラシを口に入れたくない!」
そんな限界の日は、無理せず**「殺菌効果のあるマウスウォッシュでうがい」**をするだけでも合格点としましょう。
もちろんブラシを使わないと汚れそのものは落ちませんが、薬液の力で細菌の増殖スピードを抑えることは可能です。刺激の少ないノンアルコールタイプを選び、お口の中の細菌レベルを少しでも下げておくことが重要です。
今日は、歯周病と早産のリスクについてお話ししました。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
1. 口の炎症は子宮に飛び火する
歯周病菌や毒素が血流に乗って子宮に届くと、体が「炎症だ!」と勘違いし、早産や陣痛を引き起こすリスクがあります。
2. 妊娠中は誰でもリスク増
ホルモンや唾液の変化により、今まで健康だった人でも歯周病になりやすい「災害モード」です。自分を責めず、リスクを知って対策しましょう。
3. つわり時期は「完璧」を捨てる
「食後」「歯磨き粉」にこだわらず、体調が良い時に磨く、顔を上げて磨く、うがいだけで済ませるなど、柔軟なケアで乗り切りましょう。
4. 安定期に歯科検診へ
つわりが落ち着いたら、ぜひ歯科検診を受けてください。プロのクリーニングは、セルフケアでは落とせないリスク(歯石など)を取り除く、最強の予防策です。
お母さんが「完璧にしなきゃ」とストレスを溜め込まず、リラックスして過ごすこと。
それ自体が免疫力を高め、お腹の赤ちゃんにとって一番の薬になります。
今日から、無理のない範囲でお口のケアを見直してみてくださいね。
これからも、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にするために、正しい医療情報をお届けしていきます。
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