NIPT陽性後のリアル。支援・療育・お金の完全ガイド

「もし障害があったら、経済的に育てられるのか?」「親亡き後は?」 NIPTを前にしたその不安は切実です。しかし、日本には障害児とその家族を支える多層的なセーフティネットが存在します。NIPTで早期にリスクを知ることは、これら「支援の輪」に繋がり、準備を整えるための時間を得ることでもあります。 本記事では、公的支援、お金、療育、成人後のライフプランを徹底解説。漠然とした恐怖を「具体的な対策」に変えるためのガイドです。

1. 経済的な不安を解消する「お金」の公的支援制度

障害のある子どもを育てるにはお金がかかる、というイメージが先行していますが、実際には医療費の助成や直接的な手当など、家計を支える強力な公的制度が存在します。まずは経済的な基盤となる制度について詳しく解説します。

医療費の助成制度(マル乳・マル子・マル障)

まず、日常的な医療費の負担は極めて低く抑えられています。

  • 乳幼児医療費助成(マル乳・マル子):
    自治体によって名称や対象年齢(中学生まで、高校生まで等)は異なりますが、多くの場合、子どもの通院・入院にかかる医療費の自己負担分は無料、または数百円程度に助成されます。これは障害の有無に関わらず適用されます。
  • 自立支援医療(育成医療):
    ダウン症候群に伴う心臓手術など、身体上の障害を除去・軽減するための手術や治療が必要な場合、その医療費の自己負担分を軽減する国の制度です。世帯所得に応じた上限額が設定されるため、高額な医療費がかかる手術でも負担は抑えられます。
  • 重度心身障害者医療費助成制度(マル障):
    自治体独自の制度で、療育手帳の等級など一定の要件を満たす場合、医療費の自己負担分を助成します。成人後も続く制度であることが多く、生涯にわたる医療費の心配を軽減します。

直接給付される「手当」の種類

生活費や療育費の補填として、国や自治体から支給される手当があります。これらは申請主義(自分で申請しないともらえない)であるため、知識として知っておくことが重要です。

  • 特別児童扶養手当(国):
    20歳未満で、精神または身体に障害がある児童を養育している父母等に支給されます。
    • 1級(重度):月額 55,350円
    • 2級(中度):月額 36,860円
      (※令和6年4月現在の額。所得制限あり)
      ダウン症候群などの染色体疾患があり、知的障害や身体の障害が認められる場合、多くのケースで受給対象となります。これは家計にとって非常に大きな支えとなります。
  • 障害児福祉手当(国):
    重度の障害があり、日常生活において常時の介護を必要とする20歳未満の児童に支給されます(月額 15,690円)。特別児童扶養手当と併給が可能です。
  • 自治体独自の手当:
    お住まいの地域によっては、「心身障害者福祉手当」などの名称で、月額数千円〜数万円程度の上乗せ給付を行っている場合があります。

税制上の優遇措置と割引

手当だけでなく、出ていくお金を減らす仕組みもあります。

  • 所得税・住民税の障害者控除:
    療育手帳を取得すると、扶養控除に加えて障害者控除(特別障害者控除)が適用され、親の税金が安くなります。
  • 各種割引制度:
    JRやバス、航空機などの運賃割引、有料道路の割引、NHK受信料の免除、携帯電話料金の割引、公共施設(動物園、水族館、博物館など)の入場料免除など、生活のあらゆる場面で優遇措置が受けられます。

これらを総合すると、障害があることによる経済的な追加負担は、公的支援によってかなりの部分がカバーされる仕組みになっています。

2. 発達を促し、親を支える「療育」と「子育て支援」

「育てられるか」という不安の次にくるのが、「どうやって育てればいいのか」という具体的な育児の悩みです。現代の日本では、家庭だけで抱え込まず、専門家と共に育てる「チーム育児」の体制が整備されています。

「児童発達支援」という強力なパートナー

未就学の障害児(または発達に遅れや偏りのある子)に対して、日常生活動作の指導や集団生活への適応訓練を行うのが「児童発達支援」です。通称「療育センター」や「療育園」と呼ばれます。

  • 早期療育の効果:
    脳の可塑性が高い乳幼児期に、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などの専門家による介入を受けることで、運動機能や言葉の発達、コミュニケーション能力を最大限に引き出すことができます。
  • 利用料の無償化:
    2019年10月から、3歳〜5歳の障害のある子どもの児童発達支援等の利用者負担が無償化されました。0〜2歳児についても、住民税非課税世帯は無料、それ以外の世帯も受給者証を取得することで、所得に応じた上限額(例:4,600円/月)までの負担で利用できます。

共働きを支える「放課後等デイサービス」

子どもが小学生になると、放課後や長期休暇(夏休み等)に利用できる「放課後等デイサービス」があります。

これは「障害児のための学童保育」のような機能を持ちつつ、個別の発達支援プログラムを提供する場です。送迎サービスを行っている事業所も多く、共働きで障害児を育てているご家庭にとって、就労を継続するための不可欠なライフラインとなっています。

親のレスパイト(休息)ケア

24時間365日のケアは、どんなに愛情があっても親を疲弊させます。親が倒れてしまっては元も子もありません。そのために「休息(レスパイト)」を目的とした制度があります。

  • 日中一時支援:
    日中、一時的に施設で子どもを預かってくれるサービスです。親のリフレッシュや用事のために利用できます。
  • ショートステイ(短期入所):
    施設に宿泊して介護や支援を受けるサービスです。親の病気、冠婚葬祭、兄弟姉妹の行事、あるいは「旅行に行きたい」「休みたい」という理由でも利用が可能です。

遺伝カウンセリングとピアサポート

NIPTで陽性判定が出た直後から利用できる心理的支援も重要です。

  • 認定遺伝カウンセラー:
    医療的な情報の整理だけでなく、カップルの意思決定支援を行います。中絶か継続かという重い決断の際にも、価値観を否定することなく寄り添います。
  • 親の会(ピアサポート):
    「日本ダウン症協会」などの家族会では、実際に育てている先輩家族の話を聞くことができます。ネット上の情報ではない「リアルな生活」「喜び」「苦労とその乗り越え方」を知ることは、孤独感を解消する最大の特効薬です。

3. 教育環境の選択肢と「成人後」の未来図

子どもが成長し、大人になった時の姿を想像することも、NIPT受検時の不安を解消するために必要です。学校選びから、就労、住まいの選択肢までを解説します。

多様化する教育の場(インクルーシブ教育)

学齢期の教育環境は、かつてのように「障害があれば養護学校」一択ではありません。子どもの特性や親の希望に合わせて選択肢が広がっています。

  1. 特別支援学校:
    少人数制で、個々の障害の状態に合わせた手厚い専門教育を行います。自立活動に重点が置かれ、スクールバスや給食などの支援も充実しています。
  2. 特別支援学級(地域の小中学校内):
    通常の学校内に設置された少人数のクラスです。交流級として通常のクラスの授業に参加したり、行事を共にしたりすることで、地域の子どもたちとの関係性を築きます。
  3. 通級指導教室:
    通常のクラスに在籍しながら、週に数時間、言葉や対人関係などの苦手な部分の指導を受けるために別の教室に通う形態です。

近年は「インクルーシブ教育(共に学ぶ教育)」の理念が進んでおり、地域の学校で合理的配慮を受けながら学ぶケースも増えています。どの環境が子どもにとってベストか、教育委員会や専門家と相談しながら決めていきます。

成人後の就労支援

「学校を卒業したら行き場がない」ということはありません。障害の程度や適性に応じた多様な「働く場」があります。

  • 一般就労(障害者雇用枠):
    民間企業や官公庁などが設けている障害者枠での就労です。ジョブコーチ(職場適応援助者)の支援を受けながら、定着を目指します。
  • 就労継続支援A型事業所:
    雇用契約を結び、最低賃金以上を受け取りながら働く福祉サービスです。
  • 就労継続支援B型事業所:
    雇用契約は結ばず、比較的軽作業や生産活動を行い、工賃を受け取る場所です。ペースに合わせて無理なく社会参加ができます。
  • 生活介護:
    重度の障害がある場合でも、日中活動の場として、創作活動やレクリエーション、身体機能の維持などを行います。

「親亡き後」を支える仕組み:障害基礎年金とグループホーム

親が最も心配する「将来の生活基盤」についてです。

  • 障害基礎年金:
    20歳になると、障害の程度に応じて「障害基礎年金」が支給されます。
    • 1級:年額 993,750円(月額 約8.2万円)
    • 2級:年額 795,000円(月額 約6.6万円)
      (※令和6年度の額)
      これに加えて、自治体の手当や就労収入を合わせることで、基礎的な生活費を賄う設計がされています。
  • グループホーム(共同生活援助):
    地域のアパートや一軒家などで、数人の障害者が支援スタッフのサポートを受けながら共同生活を送る場所です。親元を離れ、地域の中で自立して暮らすための受け皿として急速に整備が進んでいます。
  • 成年後見制度:
    親が亡くなった後、財産管理や契約行為を代理で行う人(後見人)を選任する制度です。法的に子どもの権利と財産を守る仕組みです。

4. まとめ:NIPTは「選別」のためだけでなく「準備」のために

NIPTの結果、お腹の赤ちゃんに知的障害の可能性があると分かった時、その衝撃は計り知れません。しかし、ここまで解説してきたように、日本社会にはその子どもと家族を支えるための何重ものセーフティネットが用意されています。

  • 経済面: 特別児童扶養手当や医療費助成により、過度な負担がかからない仕組みがある。
  • 育児面: 児童発達支援や放課後等デイサービスが、プロの療育と親の就労継続を支える。
  • 将来面: 障害年金やグループホームにより、親亡き後も地域で生きていく道筋がある。

もちろん、制度があるからといって、すべてが楽になるわけではありません。きれいごとだけでは済まない苦労もあるでしょう。しかし、「支援の手が全くない孤独な子育て」ではないことだけは確かです。

もし、NIPTを受けるかどうか迷っている、あるいは結果を受けて悩んでいるのであれば、ぜひこれらの支援制度の詳細を自治体の窓口や遺伝カウンセラーに聞いてみてください。「自分たちだけで背負わなくてもいい」と知ることで、見えてくる未来の景色が変わるはずです。

NIPTを、命を選別するためだけのツールとしてではなく、生まれてくる子どものための「最高の環境」を事前に準備するためのスタートラインとして捉え直してみてください。そうすれば、どのような結論を出すにしても、それはご家族にとっての前向きな第一歩となるはずです。

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