アクロマトプシア(CNGB3関連)

Achromatopsia (CNGB3-related)

概要

アクロマトプシア(先天性色覚異常・杆体単色視の一群)は、錐体(cone)視細胞の機能低下により、出生早期から強い羞明(まぶしさ)眼振視力低下、**色覚の著しい低下(または消失)**を呈する遺伝性網膜疾患です。多くは「非進行性〜緩徐進行性」とされ、日中の見えにくさが強い一方、暗所視(杆体機能)は比較的保たれます。 (NCBI)

CNGB3関連アクロマトプシアは、錐体に存在する環状ヌクレオチド依存性(CNG)チャネルのβサブユニットをコードするCNGB3遺伝子の変異で起こります。CNGB3はCNGA3などとともに錐体の光受容(phototransduction)に必須で、機能障害により錐体の電気応答が低下します。 (メドラインプラス)

疫学

アクロマトプシアの有病(発症)頻度は、一般に約1/30,000〜1/50,000と推定されています。 (Nature)
原因遺伝子としてはCNGB3とCNGA3が最も多く、CNGB3変異は集団によって差はありますが、アクロマトプシア症例の**約40〜50%**を占めるとする資料があります。 (メドラインプラス)

原因

病因

CNGB3遺伝子の病的変異により、錐体のCNGチャネルが正常に働かず、光刺激を神経信号へ変換する過程(phototransduction)が障害されます。その結果、色覚低下・視力低下・羞明・眼振などの症状が生じます。 (メドラインプラス)

遺伝形式

多くは常染色体劣性遺伝で、両親それぞれから病的変異を受け継いだ場合に発症します。 (NCBI)

症状

代表的な症状は以下です。

  • 視力低下(小児期から気づかれることが多い) (NCBI)
  • 羞明(強いまぶしさ):明るい場所で見えにくい (NCBI)
  • 眼振:出生後早期(数週以内)から出現することが多い (NCBI)
  • 色覚の著しい低下/欠如(完全型〜不完全型) (NCBI)
  • 屈折異常(遠視が比較的多いとされる) (NCBI)
  • 中心暗点・固視異常(偏心固視)など (NCBI)

※CNGB3の一部変異では、アクロマトプシアだけでなく進行性の錐体ジストロフィーに関連する可能性も示されています。 (メドラインプラス)

診断

診断は、症状と眼科検査所見、遺伝学的検査を組み合わせて行います。

  1. 臨床所見:羞明、眼振、低視力、色覚障害など (NCBI)
  2. 電気生理(ERG):錐体系の反応低下(杆体系は比較的保たれる)などが診断の助けになります(施設により実施)。 (NCBI)
  3. 眼科画像検査:OCTなどで黄斑部の構造評価(病期や個体差あり)。 (NCBI)
  4. 遺伝子検査CNGB3遺伝子の病的変異の同定により、CNGB3関連アクロマトプシアの確定診断・家族内評価に有用です。 (NCBI)

治療

現時点で、標準治療として確立した根治療法は限られ、基本は対症療法・視覚補助が中心です。

  • 遮光:遮光眼鏡・フィルターレンズ、帽子などで羞明を軽減 (NCBI)
  • 屈折矯正:眼鏡・コンタクトで視機能を最適化 (Retina Today)
  • ロービジョンケア:拡大鏡、端末設定、教育・就労支援など (Retina Today)
  • 遺伝カウンセリング:遺伝形式(常染色体劣性)に基づく再発リスク説明等 (NCBI)

また、CNGB3を対象とした遺伝子治療は臨床研究が行われています(治療として一般化しているわけではなく、参加条件・実施施設が限られます)。 (臨床試験.gov)

参考文献元

  1. GeneReviews®「Achromatopsia」— 臨床像、診断、遺伝形式、管理の総説。 (NCBI)
  2. MedlinePlus Genetics「Achromatopsia」— 原因遺伝子(CNGA3/CNGB3)と病態の解説。 (メドラインプラス)
  3. MedlinePlus Genetics「CNGB3 gene」— CNGB3の機能と表現型の記載。 (メドラインプラス)
  4. Wissinger B, et al. Nat Genet(CNGB3変異の頻度・集団データ、1/30,000–1/50,000推定など)。 (Nature)
  5. CNGB3遺伝子変異がアクロマトプシア症例の約半数に関与する旨の報告(PubMed)。 (PubMed)