概要
ヘルリッツ型接合型表皮水疱症は、皮膚や粘膜が非常にもろく、わずかな刺激でも**水疱(皮膚のめくれ・びらん)を繰り返す遺伝性疾患です。出生時〜新生児期から広範囲に症状が出やすく、鼻・口の周囲や指趾先端などに肉芽組織(赤く盛り上がる病変)**を形成しやすいことが特徴です。従来「Herlitz型」と呼ばれてきた病型は、現在の分類では概ね JEB generalized severe(重症型) に相当します。 (NCBI)
原因遺伝子として LAMC2(ほかに LAMA3、LAMB3 など)が知られており、LAMC2は表皮—真皮接合部の接着を支える**ラミニン332(laminin-332)**の構成要素(γ2鎖)をコードします。 (NCBI)
疫学
接合型表皮水疱症(JEB)全体としても稀な疾患であり、重症型(JEB generalized severe/旧Herlitz型)はさらに頻度が低いとされます。GeneReviewsでは、重症型の有病率が約0.4/100万人、発生率が約0.41/100万人と推定され、乳児期の死亡率が高いことから過小報告の可能性が示されています。 (NCBI)
JEB全体の発生頻度については、米国の支援団体データに基づく報告で少なくとも年3.59/100万人とされた研究があります。 (PubMed)
原因
本疾患は、LAMC2遺伝子の両アレルの病的バリアントにより発症するのが典型で、遺伝形式は主に常染色体劣性遺伝です。LAMC2の機能低下によりラミニン332が十分に働かず、表皮—真皮接合部の“つなぎ”が弱くなるため、軽い摩擦でも皮膚・粘膜に裂け目が生じ、水疱・びらんを繰り返します。 (NCBI)
症状
代表的には以下がみられます(重症度・経過には個人差があります)。
- 出生時〜新生児期からの広範な水疱・びらん(軽微な刺激で発生) (NCBI)
- 口腔内、咽頭、食道などの粘膜病変(哺乳・摂食困難、栄養不良、成長不良) (メドラインプラス)
- 鼻・口周囲、耳、指趾先端などの肉芽組織(治療に難渋しやすい) (NCBI)
- 爪の異常、脱毛・乏毛などの付属器症状 (NCBI)
- 皮膚バリア破綻に伴う感染(蜂窩織炎、敗血症)、体液喪失
- 上気道病変などによる呼吸器合併症が問題となることがあります (Labcorp)
診断
診断は、臨床所見に加え、以下を組み合わせて行います。
- 遺伝学的検査(推奨)
JEBは、LAMC2を含む関連遺伝子(COL17A1、ITGB4、LAMA3、LAMB3、LAMC2 など)の両アレル病的バリアントを同定することで確定します。 (NCBI) - 皮膚生検(補助)
免疫蛍光抗原マッピングや電子顕微鏡で、表皮—真皮接合部の異常や関連蛋白の欠損を評価します(近年は遺伝学的検査が第一選択になりつつあります)。 (NCBI) - 鑑別
表皮水疱症(EBS/DEB)やKindler症候群など、他の皮膚脆弱性疾患との鑑別が重要です。 (NCBI)
治療
現時点で根治療法は確立しておらず、**支持療法(合併症予防と生活の質の維持)**が中心です。
- 創傷ケア:非固着性ドレッシング、びらん管理、皮膚保護
- 感染対策:創部感染の早期治療、必要に応じた抗菌薬
- 疼痛管理:処置時・慢性痛への鎮痛
- 栄養管理:摂食困難への栄養介入(経管栄養等を含む)
- 呼吸・気道管理:上気道病変や呼吸器合併症への対応
- 多職種連携:皮膚科、小児科、新生児科、栄養、リハ、緩和ケア、遺伝カウンセリング (debra.org)
研究段階の治療として、遺伝子・細胞治療などが検討されていますが、適応や実施施設は限られます。 (NCBI)
参考文献元
- GeneReviews®:Junctional Epidermolysis Bullosa(診断基準、臨床像、遺伝学、管理) (NCBI)
- MedlinePlus Genetics:Junctional epidermolysis bullosa(病型説明、主要症状) (メドラインプラス)
- Orphanet:Junctional epidermolysis bullosa(疾患概説・疫学の概略) (Orpha)
- Kelly-Mancuso G, et al. Pediatr Dermatol. 2014:JEBの発生頻度と生存に関する報告(DebRAデータ) (PubMed)
- debra of America:Junctional EB(ケアの考え方:創傷・疼痛・合併症中心) (debra.org)
