概要
1型ラメラ魚鱗癬は、出生時から全身の皮膚が**厚い角質層(魚鱗状)を呈し、乾燥や亀裂を生じる常染色体劣性遺伝性疾患です。主に トランスグルタミナーゼ1(transglutaminase-1) をコードする TGM1 遺伝子 の病的変異が原因で、角層の形成・保持に必要な皮膚バリアが正常に機能せず、角質が剥離・堆積して“大きな魚鱗状の鱗屑”が特徴的にみられます。生涯にわたり皮膚の乾燥・亀裂が慢性的に続き、二次的な炎症・感染を起こしやすい状態になります。
本疾患は「先天性魚鱗癬」の代表的病型の一つであり、重症度は多様ですが、TGM1 変異が最も高頻度でみられます(Type 1)。皮膚バリア機能障害に基づくため、全身症状や体温調節障害を伴うこともあります。
疫学
ラメラ魚鱗癬全体は世界的に稀な疾患であり、出生人口に対する発症頻度は約1/100,000〜1/200,000 と報告されています。TGM1関連例(Type 1)は、魚鱗癬の中でも最も高頻度を占めるものの、集団によって保因者頻度や変異頻度に差があります。男女差はなく、地域や人種を問わず散発例・家族内集積例が報告されています。
原因
病因
1型ラメラ魚鱗癬は、TGM1 遺伝子の病的変異によって起こります。TGM1 は皮膚角層形成に不可欠な トランスグルタミナーゼ1(TGase-1) をコードしており、細胞間結合や角質細胞ホーン層の架橋形成を助けて皮膚バリアの構築に関与します。
遺伝形式
疾患は 常染色体劣性遺伝 を呈し、両親がそれぞれ1つずつ異常アレルを持つ場合に発症します。TGM1 のさまざまな変異(点変異・欠失など)が報告されており、変異の組み合わせにより症状の重症度に差が生じます。
症状
1型ラメラ魚鱗癬の症状は出生直後から見られることが多く、生涯にわたり慢性の皮膚症状が続きます。
皮膚症状
- 全身の厚い魚鱗状皮疹(大きく剥がれる鱗屑)
- 乾燥・ひび割れ、痒み
- 角化亢進による皮膚の肥厚
- 掌蹠角化症(手足の角化亢進)を伴う例
- 皮膚バリア破綻による乾燥・炎症
全身症状・二次的合併
- 体温調節障害(発汗不全)
- 皮膚感染症の反復
- 関節可動域制限(皮膚拘縮)
- 眼瞼裂の乾燥
症状は季節・環境因子に影響されやすく、乾燥・寒冷下で悪化する傾向があります。
診断
診断は、以下の組み合わせで総合的に行われます。
1. 臨床評価
典型的な出生期からの魚鱗状角化症、広範な角質鱗屑、皮膚乾燥・亀裂を認める場合に疑います。
2. 遺伝子診断
TGM1遺伝子解析により病的変異の同定が最終診断に有用です。保因者検査や家族内発症例の解析にも有効です。
3. 表皮生検(補助)
皮膚生検により角層構造・細胞間架橋の異常を評価しますが、現在では遺伝子検査が確定診断の主流となっています。
治療
1型ラメラ魚鱗癬には根治療法はなく、症状緩和と皮膚バリア機能の維持を目的とした支持療法が中心になります。
1. スキンケア
- 保湿剤・角質軟化剤(尿素・乳酸など) の頻回塗布
- 低刺激性スキンケア製品の使用
- 入浴後の保湿ケアと鱗屑除去(過度なスクラブは避ける)
2. 薬物療法
- レチノイド内服(選択例)
- 外用ステロイド・免疫調節剤(炎症部位に応じて)
3. 合併症管理
- 感染時の抗菌薬
- 乾燥・亀裂による痛み・瘙痒の対処
- 体温調節サポート
4. 多職種支援
皮膚科、栄養、リハビリ、心理社会支援などを組み合わせた総合的ケアが推奨されます。
参考文献元
- MedlinePlus Genetics: Lamellar ichthyosis — 疾患概説、原因遺伝子、臨床像。
https://medlineplus.gov/genetics/condition/lamellar-ichthyosis/ - NCBI Bookshelf / GeneReviews®: Ichthyosis Lamellar and Related Disorders — 診断・管理ガイド。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1129/ - Orphanet: Lamellar ichthyosis — 疫学・臨床像。
https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?Lng=EN&Expert=244 - DermNet NZ: Lamellar ichthyosis — 症状・治療概要。
https://dermnetnz.org/topics/lamellar-ichthyosis/
