概要
2A型 四肢帯状筋ジストロフィーは、主に肩甲帯(肩まわり)・骨盤帯(股関節まわり)などの近位筋の筋力低下と筋萎縮が左右対称に進行する遺伝性筋疾患で、CAPN3遺伝子の変異により生じることから**カリパイノパチー(calpainopathy)**とも呼ばれます。発症年齢は幅があり、幼児期から成人期までみられます。心筋障害は一般に目立たないことが多い一方で、筋力低下に伴う歩行障害や関節拘縮、側弯などが問題になります。 (NCBI)
疫学
LGMD2A(=LGMDR1/CAPN3関連)は、地域によって差はあるものの、四肢帯状筋ジストロフィーの中で比較的頻度が高い病型とされています。NIH(GARD)ではLGMD2AがLGMDの約30%を占めると説明されています。 (rarediseases.info.nih.gov)
Orphanetでは、CAPN3関連LGMD(calpain-3-related LGMD)の有病率を1–9/100,000としています(推定値)。 (Orpha)
原因
原因はCAPN3遺伝子の病的バリアントです。CAPN3は骨格筋に存在する酵素**カリパイン3(calpain-3)**をコードし、筋線維(サルコメア)でのタンパク質の維持・修復などに関わります。CAPN3の機能が低下すると筋細胞内で障害タンパクの処理などがうまくいかず、筋力低下と筋萎縮が進行すると考えられています。 (メドラインプラス)
遺伝形式は多くが常染色体劣性遺伝で、両親からそれぞれ病的バリアントを受け継いだ場合に発症します。 (NCBI)
症状
主な症状は以下です(個人差があります)。
- 近位筋優位の筋力低下(股関節・太もも、肩周囲など) (NCBI)
- 走りにくい、階段昇降がつらい、立ち上がりが困難(Gowers徴候) (NCBI)
- つま先歩行、アキレス腱短縮などの拘縮、肩甲骨の翼状肩甲、動揺性歩行 (NCBI)
- 血清CK高値(無症候性高CK血症として見つかることも) (NCBI)
- 進行に伴い歩行補助具が必要になり、症例によっては成人期に車いすが必要となることがあります(進行速度には幅)。 (Springer)
一般に知的障害は伴わないとされ、また重い心筋障害は典型的ではないとされます(ただし個別評価は重要です)。 (NCBI)
診断
診断は、臨床像と検査所見に加えて遺伝学的検査を組み合わせて行います。
- 臨床評価:近位筋優位の筋力低下、歩行障害、拘縮、家族歴など (NCBI)
- 血液検査:CK高値など筋障害を示す所見 (NCBI)
- 筋画像(MRIなど):筋の脂肪変性・萎縮の分布評価(鑑別や重症度評価に有用) (Springer)
- 筋生検(必要に応じて):筋ジストロフィー変化の確認や補助診断(現在は遺伝子検査が中心) (Nature)
- 遺伝子検査:CAPN3遺伝子の病的バリアントを同定し確定診断に至ります。 (NCBI)
治療
現時点でCAPN3関連LGMD(LGMD2A)を根治する標準治療は確立しておらず、中心となるのは支持療法・合併症予防です。
- リハビリテーション:過用を避けつつ、関節可動域維持(拘縮予防)、筋力・歩行機能の維持 (NCBI)
- 装具・歩行補助具:転倒予防や移動能力の維持
- 呼吸・心機能の定期評価:典型的に重い心筋障害は少ないとされますが、個別にモニタリング (NCBI)
- 疼痛・疲労、二次的障害への対処:整形外科的対応(拘縮、側弯など) (NCBI)
- 遺伝カウンセリング:常染色体劣性遺伝に基づく家族内リスク評価 (rarediseases.info.nih.gov)
参考文献元
- GeneReviews®:Calpainopathy(CAPN3関連LGMDの臨床像・診断・管理) (NCBI)
- Orphanet:Calpain-3-related limb-girdle muscular dystrophy R1(疫学・疾患概要) (Orpha)
- NIH Genetic and Rare Diseases (GARD):Autosomal recessive limb-girdle muscular dystrophy type 2A(疾患概要・頻度の位置づけ) (rarediseases.info.nih.gov)
- MedlinePlus Genetics:CAPN3 gene/Limb-girdle muscular dystrophy(遺伝子機能・病態) (メドラインプラス)
- Orphanet Journal of Rare Diseases 2023:LGMDの画像所見・疫学推定を含むレビュー (Springer)
