概要
ミトコンドリア性ミオパチーと鉄芽球性貧血(MLASA1)は、ミトコンドリア蛋白合成に関与するPUS1遺伝子の異常によって生じる希少なミトコンドリア病です。PUS1はtRNAの修飾(シュードウリジン化)を担う酵素をコードしており、その機能障害によりミトコンドリア蛋白翻訳が障害され、エネルギー産生が低下します。その結果、エネルギー需要の高い骨格筋や造血系が障害され、ミオパチーと鉄芽球性貧血を主徴とします。
本疾患は乳児期〜小児期に発症することが多く、筋力低下、易疲労、運動不耐性とともに、進行性の貧血を呈します。心筋症や内分泌異常を伴うこともあります。(ヒロクリニック)
疫学
MLASA1は極めて稀な疾患であり、世界的に報告例は100例未満とされています。特定の地域や民族集団での集積は知られておらず、散発的に報告されています。(PMC)
原因
本疾患はPUS1遺伝子の両アレル病的変異によって発症します。PUS1遺伝子はヒト12番染色体(12q24)に位置し、核およびミトコンドリアのtRNAを修飾する酵素をコードします。tRNA修飾は蛋白翻訳の正確性と効率に重要であり、その障害はミトコンドリア蛋白合成低下を通じて呼吸鎖複合体の機能障害を引き起こします。(ヒロクリニック)
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。(malacards.org)
症状
症状は小児期に出現することが多いですが、成人発症例も報告されています。(ヒロクリニック)
筋症状
- 近位筋筋力低下
- 易疲労感
- 運動不耐性
- 眼瞼下垂や外眼筋麻痺(まれ)
血液学的異常
- 鉄芽球性貧血
- 易疲労、動悸、息切れ
その他
- 心筋症
- 低身長
- 内分泌異常(糖尿病、甲状腺機能低下など)
診断
以下の組み合わせで診断されます。
1. 臨床所見
- ミオパチーと貧血の併存
2. 血液検査
- 小球性または正球性貧血
- フェリチン正常〜高値
3. 骨髄検査
- 環状鉄芽球の存在
4. 筋生検
- ミトコンドリア異常所見
5. 遺伝子診断
- PUS1遺伝子解析による確定診断 (PMC)
治療
根治療法はなく、支持療法が中心です。
- 輸血管理
- ビタミンB6補充(部分反応例あり)
- 心機能管理
- リハビリテーション
- 感染予防
参考文献
ミトコンドリア性ミオパチーと鉄芽球性貧血(MLASA1)— 遺伝子疾患解説ページ(ヒロクリニック)より。(ヒロクリニック)
Bykhovskaya Y et al. Missense mutation in PUS1 causes mitochondrial myopathy and sideroblastic anemia. Nat Genet. 2004.(Nature)
MLASA1 — GeneReviews, PubMed Central.(PMC)
Mitochondrial Myopathy and Sideroblastic Anemia — Malacards Rare Disease Database.(malacards.org)
