概要
網膜色素変性症は、網膜の視細胞(杆体・錐体)が進行性に変性・脱落する遺伝性網膜疾患の総称です。初期には暗い場所で見えにくくなる夜盲を自覚し、次第に視野狭窄が進行してトンネル視となり、最終的には中心視力の低下に至ることがあります。本疾患は単一疾患ではなく、多数の原因遺伝子によって引き起こされる疾患群であり、臨床経過や重症度は原因遺伝子によって異なります。
FAM161A関連網膜色素変性症(RP28)は常染色体劣性遺伝形式をとるタイプで、比較的若年期から発症することが多く、夜盲と視野狭窄を初発症状として徐々に進行します。網膜の外層に存在する視細胞の支持構造が障害されることで、視細胞の維持ができなくなり、慢性的な視機能低下が生じると考えられています。
疫学
網膜色素変性症全体の有病率は約3,000〜5,000人に1人と推定されており、日本国内では約2万人程度の患者がいるとされています。FAM161A変異によるRP28はその中でも比較的まれな型で、特定の民族集団(中東、北アフリカ、アシュケナージ系ユダヤ人など)で高頻度に報告されていますが、世界各地で散発的に認められています。
原因
病因
本疾患はFAM161A遺伝子の変異によって発症します。FAM161Aは網膜の視細胞において細胞骨格構造の安定化に関与する蛋白をコードしており、特に視細胞外節と内節の構造維持に重要とされています。この機能が障害されると視細胞の形態維持が困難となり、徐々に視細胞が脱落していきます。
遺伝形式
常染色体劣性遺伝です。両親が保因者の場合、子どもが発症する確率は25%です。
遺伝子検査について
FAM161A遺伝子は当院の遺伝子検査パネルで解析可能です。
症状
初期症状
- 夜盲(暗い場所で見えにくい)
- 視野の周辺部が欠けてくる
進行期症状
- 視野狭窄(トンネル視)
- 羞明(まぶしさ)
- 視力低下
- 色覚異常
眼科所見
- 網膜血管の狭細化
- 骨小体様色素沈着
- 視神経乳頭蒼白
診断
- 夜盲や視野狭窄の病歴から疑います。
- 眼底検査で骨小体様色素沈着を認めます。
- 視野検査で求心性視野狭窄を確認します。
- 網膜電図(ERG)で杆体機能低下を認めます。
- 遺伝子検査でFAM161A変異を同定することで確定診断となります。
治療
現在のところ根本治療は確立しておらず、進行抑制と生活支援が治療の中心です。
- ビタミンA補充療法(適応がある場合)
- 強い光刺激の回避、遮光眼鏡の使用
- 視覚補助具の使用(拡大鏡、電子ルーペなど)
- 定期的な眼科フォローアップ
- 遺伝カウンセリング
近年、遺伝子治療や再生医療の研究が進んでおり、一部の網膜疾患では治療応用が始まっていますが、FAM161A型に対する臨床応用は現在研究段階です。
【参考文献】
- GeneReviews®: Retinitis Pigmentosa
- MedlinePlus Genetics: Retinitis pigmentosa
- OMIM: FAM161A-related retinitis pigmentosa
- 難病情報センター:網膜色素変性症
