概要
瀬川症候群(Segawa Syndrome)は、ドパミン合成に関与する酵素である チロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase:TH) の機能低下に伴い、ドパミンの産生低下を主因とする運動障害性疾患です。一般に ドパミン作動性ジストニア(dopa-responsive dystonia:DRD) として知られる症候群の一部に属し、TH遺伝子関連例は 常染色体劣性遺伝 で発症するまれなタイプです。THは、アミノ酸チロシンをL-DOPAに変換する代謝の律速酵素で、これはドパミンの前駆物質となります。TH遺伝子に病的変異があると、ドパミン産生が障害され、運動調節機構に影響が生じます。(PMC)
疫学
瀬川症候群全般は稀少な運動障害であり、典型的にはGCH1遺伝子変異例が多いものの、TH遺伝子変異による例は さらに稀です。TH関連の瀬川症候群は世界的に報告例が少なく、一般的な有病率は明確ではありませんが、常染色体劣性遺伝形式であることが確認されています。(PMC)
原因
瀬川症候群(TH関連)は、TH遺伝子の病的変異により引き起こされます。TH遺伝子は、チロシン水酸化酵素をコードし、L-チロシンからL-DOPAへの変換という ドパミン合成の初期ステップを担う限速酵素 を産生します。TH機能が障害されると、ドパミンとその他カテコールアミン(ノルアドレナリン・アドレナリン)の合成が低下し、神経伝達系に不均衡を来します。(ウィキペディア)
遺伝形式は 常染色体劣性 で、両親から1つずつ病的変異を受け継ぐことで発症します。(orpha.net)
症状
瀬川症候群(TH関連)は、ドパミン不足に伴う運動障害や神経症状を呈します。症状は幅広いスペクトラムを持ち、軽症~重症まで認められます。(PMC)
主な臨床症状
- ジストニア(筋緊張異常による異常姿勢・動作)
- 疲労や日内変動(症状が朝より夕方悪化)
- 歩行困難、バランス障害
- トレモール(振戦) やその他不随意運動
- 小児発症例では筋緊張低下や運動発達遅滞
- 重症例では進行性乳児期脳症、パーキンソニズム様症状などの神経症状も報告あり
一般に、ジストニア・動作障害はL-DOPAへの反応性が高いことが特徴ですが、TH変異例では他のDRD原因(例:GCH1)と比べて遷延的な反応・副作用を示すこともあります。(NCBI)
診断
瀬川症候群(TH関連)の診断は、以下の観点から総合的に行われます。
- 臨床所見
・歩行困難やジストニアなどの運動障害
・症状の日内変動(一般に夕方に悪化) - 治療反応性の評価
・L-DOPA投与試験:多くの例で症状改善が確認されることが診断的に有用。(NCBI) - 遺伝子検査
・TH遺伝子解析:確定診断には病的変異の同定が必要です。(PMC) - 鑑別診断
・その他の遺伝性ジストニア(例:GCH1変異によるDRD)との鑑別が必要です。(ウィキペディア)
治療
瀬川症候群(TH関連)の治療は、主にドパミン補充療法を中心とした対症療法です。
- L-DOPA投与:多くの症例で有効であり、運動症状の大幅な改善が報告されています。(NCBI)
- L-DOPA感受性試験および徐放性投与:副作用(ジスキネジアなど)を見ながら慎重に調整します。(NCBI)
- リハビリテーションや物理療法などの非薬物療法も運動機能維持の補助として重要です。
- 重症神経症状例では多職種による総合的な支持療法が必要になります。
参考文献元
以下の文献・情報源を本ページの作成に用いました:
- Furukawa Y., et al. Tyrosine Hydroxylase Deficiency – GeneReviews®. NCBI Bookshelf — TH欠損とDRDの臨床像・反応性について。(NCBI)
- MedlinePlus Genetics. Tyrosine hydroxylase deficiency. — TH関連疾患の症状と治療反応性。(MedlinePlus)
- Wang Y., et al. Segawa syndrome caused by TH gene mutation… PubMed Central — TH遺伝子変異例の臨床像解析。(PMC)
- Orpha.net. Autosomal recessive dopa-responsive dystonia (TYH gene). — TH欠損の遺伝学と疾患スペクトラム。(orpha.net)
- Wikipedia. Dopamine-responsive dystonia — Segawa症候群全般の解説(GCH1/TH)として。(ウィキペディア)
