ウィルソン病

Wilson Disease, ATP7B

概要

ウィルソン病は、体内の銅代謝異常によって 銅が肝臓・脳・その他の組織に蓄積する遺伝性疾患です。正常では肝臓で余剰銅が胆汁中に排泄されますが、ATP7B 遺伝子の変異によりこの排泄が障害されると、銅が過剰に蓄積し毒性を示します。蓄積した銅によって肝障害、神経症状、精神症状、角膜変化など多彩な症状が生じ、治療が遅れると進行性の障害・生命予後不良を招きます。(turn0search0 (NCBI)

ウィルソン病は別名「肝緑核変性(hepatolenticular degeneration)」とも呼ばれ、典型的には小児〜青年期に発症します。(turn0search17)

疫学

ウィルソン病は世界的に稀な疾患であり、推定発生頻度は 約3万〜4万人に1人です。保因者(遺伝子変異を1コピー持つ人)は一般人口で 100〜120人に1人 という報告もあります。発症年齢は 幼児期〜50歳代まで幅広く、性差は特に認められません。(turn0search16)

原因

ウィルソン病は、ATP7B遺伝子の病的変異によって引き起こされる 常染色体劣性遺伝疾患 です。ATP7B は肝細胞での銅トランスポーターをコードし、胆汁への銅排泄および血中銅結合タンパク質(セルロプラスミン)への銅供給を担います。変異によりこの機能が低下すると、余剰銅が肝細胞内に蓄積し、それが血中へ漏れ出して 脳・角膜・腎臓等にも沈着し、組織障害を生じます。(turn0search0 (NCBI)

ATP7B の変異は多型が多く、500 以上の異常が報告されていますが、明確な 遺伝子型と症状の重症度の相関は確立していません。(turn0search16)

症状

ウィルソン病は、銅蓄積部位によって 肝型・神経精神型・混合型 に分類されることが多く、多彩な症状が現れます:

肝臓症状

  • 肝機能異常(AST/ALT 上昇)
  • 肝炎、肝硬変
  • 黄疸、腹水、出血傾向(肝不全)などが進行します。(turn0search17

神経・精神症状

  • 振戦、協調運動障害、ジストニア
  • 構音障害や歩行障害
  • 抑うつ・行動変容・認知症様症状
  • ケイセル–フライシャー輪(角膜銅沈着)は特徴的な眼症状です。(turn0search2

症状の出現は 年齢や蓄積部位によって大きく異なり、無症候のまま健診で見つかる例もあります。(turn0search0)

診断

ウィルソン病の診断は、臨床症状・生化学検査・画像検査・遺伝子検査を総合して行います。

生化学的検査

  • 血清セルロプラスミン
  • 24 時間尿中銅排泄
  • 血清非セルロプラスミン銅(非結合銅)の増加
  • 肝銅濃度(肝生検)などの評価が有用です。(turn0search2)

画像・身体所見

  • 錐体外路症状や MRI での基底核病変
  • Kayser–Fleischer輪(眼底検査、角膜後面の銅沈着)が診断の手がかりになります。(turn0search17)

遺伝子検査

  • ATP7B遺伝子解析により病的変異を同定し、確定診断・家族検査に用います。(turn0search26)

診断支援スコアとして「Leipzig スコア」が臨床・検査・遺伝子情報を統合評価する際に使われます。(turn0search2)

治療

ウィルソン病は、銅の蓄積を抑制し蓄積を減少させる治療が基本です。(turn0search2)

薬物療法

  • 銅キレート薬(例:D-ペニシラミン、トリエンチン)で銅を体外へ排泄
  • 亜鉛製剤で腸管からの銅吸収を抑制
    生涯にわたる治療が必要であり、治療中断は病態の進行・致命的な合併症を招きます。(turn0search15)

栄養管理

  • 低銅食(肝臓・甲殻類・ナッツ類など高銅食品制限)も補助的に推奨されます。(turn0search32)

肝移植

  • 重度の肝不全や薬物治療非効果例では 肝移植が検討され、根本的な銅排泄機能を回復することがあります。(turn0search2)

参考文献元

以下文献・データベースを本ページ作成に参照しました:

  1. 指定難病情報 — ウィルソン病(ATP7B変異による銅代謝異常)。 (難病情報センター)
  2. GeneReviews® — Wilson Disease: 分子病態・診断・治療の国際的レビュー。 (NCBI)
  3. Mayo Clinic — Wilson’s disease: 症状・原因の一般解説。 (Mayo Clinic)
  4. 日本医事新報社 — ウィルソン病臨床像とATP7B遺伝子。 (日本医事新報)
  5. MSD Manual — Wilson disease: 治療と診断のポイント。 (MSD Manuals)
  6. EASL & AASLD Clinical Practice Guidelines — Wilson disease 診療ガイドライン(薬物療法とモニタリング)。 (ScienceDirect)