ツェルウェガー症候群(PEX1関連)

Peroxisome Biogenesis Disorders Zellweger Syndrome Spectrum (PEX1-related), PEX1

概要

ツェルウェガー症候群は、**ペルオキシソーム形成異常症(Peroxisome Biogenesis Disorders, ZSD)と呼ばれる遺伝性疾患群の中で最も重篤な形です。ペルオキシソームは細胞内の微小なオルガネラ(器官)で、脂肪酸の分解や有害物質の処理、重要な脂質の合成など多くの代謝反応に関与しています。この機能が失われることにより、脳、肝臓、腎臓を含む多くの臓器で深刻な障害が生じます。 ZSDは症状や重症度の幅が広く、「スペクトラム(連続体)」として扱われますが、PEX1遺伝子変異によるものが全体の約70%**を占め、ツェルウェガー症候群の主要な原因となっています。(PMC)

疫学

ZSD自体は非常にまれな疾患で、生まれる赤ちゃんのおよそ 1/50,000〜1/100,000 とされていますが、地域によって頻度に差があります。例えばカナダ・ケベック州では高く、日本では比較的低い報告があります。(国立生物工学情報センター)
ツェルウェガー症候群はその中でも最も重症で早期発症し、多くは乳児期に重篤な合併症で亡くなることが一般的です。(ウィキペディア)

原因

ツェルウェガー症候群は PEX1遺伝子の病的変異によって起こります。PEX1はペルオキシソーム形成因子1(peroxisomal biogenesis factor 1)をコードし、他のペルオキシソーム関連タンパク質と協調してペルオキシソームの形成と機能を支えています。(メドラインプラス) この遺伝子に両側(両アレル)の変異があると、ペルオキシソームが正常に形成されなくなり、脂肪酸分解や脂質合成などの重要な代謝経路が障害されます。その結果、広範に臓器障害が起こります。遺伝形式は 常染色体劣性 です。(ウィキペディア)

症状

PEX1関連ZSD(ツェルウェガー症候群)は、多臓器にわたる症状を呈します。重症例では出生直後から以下のような障害が認められます。(nanbyou.or.jp)

  • 神経・発達
    ・重度の筋緊張低下(低緊張)
    ・精神運動発達遅滞
    ・けいれん発作
    ・呼吸障害・哺乳困難
  • 外貌・感覚
    ・顔面形態異常(前額突出、平坦な鼻根、小顎など)
    ・眼の異常(白内障、緑内障、角膜混濁、網膜ジストロフィー)
    ・難聴・視力低下
  • 内臓機能
    ・肝臓の腫大と機能障害
    ・腎嚢胞
    ・電解質異常

症状の型はスペクトラムとして幅があり、同じPEX1遺伝子異常でも軽症から重症まで変化があります。(SpringerLink)

診断

ツェルウェガー症候群の診断は、臨床症状に加えて、生化学的・遺伝学的検査を組み合わせて行います。主な検査は以下の通りです。

  • 血液・尿検査:極長鎖脂肪酸(VLCFA)やその他ペルオキシソーム代謝物の異常を検出。(jbsoc.or.jp)
  • 画像検査:脳・肝臓の異常評価
  • 遺伝子検査:PEX1を含むZSD関連のPEX遺伝子の網羅的解析により確定診断

遺伝子検査は確定診断および家族カウンセリングに重要です。

治療

現在、ツェルウェガー症候群を根治する治療法は確立されていません。治療は主に症状の管理と合併症の予防を目的として行われます。

  • 支持療法
    ・栄養管理・哺乳支援
    ・抗けいれん薬による発作管理
    ・肝機能・内分泌機能のフォロー
  • 多職種医療
    ・小児科、神経科、代謝内科、眼科など複数の専門領域による連携治療
  • 遺伝カウンセリング
    ・家族への遺伝形式や再発リスクについて説明

重症例では生命予後が不良であり、早期からの包括的ケアが重要です。(国立生物工学情報センター)