オピッツGBBB症候群2型(Opitz GBBB Syndrome, Type II)

医療

オピッツGBBB症候群2型という、アルファベットが並んだ少し不思議な名前の診断名を聞き、情報を求めてこのページにたどり着かれたご家族の方へ。

医師から「お顔立ちに特徴があります」や「喉や性器の形成に少し問題があります」といった説明を受け、戸惑いや不安を感じていらっしゃるかもしれません。特に、ミルクを飲むのが苦手だったり、呼吸が苦しそうだったりする症状があると、日々のケアに対する心配も尽きないことでしょう。

この病気は、身体の中心線に沿った部分の形成に関わる遺伝子の変化によって起こる生まれつきの体質です。

オピッツGBBB症候群には、遺伝の仕方の違いによって「1型」と「2型」がありますが、今回解説する2型は、男女ともに発症する可能性があるタイプです。

特徴的なお顔立ちや、飲み込みの難しさなどが主な症状ですが、適切な手術やリハビリテーションを受けることで、症状を改善し、健やかに成長していくことが十分に可能です。

また、知的な発達に関しては、正常範囲であることも多く、学校生活や社会生活を豊かに送っている患者さんがたくさんいらっしゃいます。

まず最初にお伝えしたいのは、お子さんは診断名のついた「症例」ではなく、無限の可能性を秘めた一人の人間だということです。

医療チームと共に、一つひとつ課題を乗り越えていきましょう。

概要:どのような病気か

まず、この複雑な病名がどのような意味を持っているのか、そしてどのような病気なのかを理解しましょう。

病名の由来

「オピッツ」は、この病気を報告したジョン・オピッツ博士の名前に由来します。

「GBBB」というのは、最初に報告された4つの家族の苗字の頭文字(G家、B家、B家、B家)をとって名付けられました。

かつては、GBBB症候群と呼ばれたり、オピッツ症候群と呼ばれたりしていましたが、現在はこれらを合わせてオピッツGBBB症候群と呼ばれています。

どのような病気か

一言で言うと、身体の真ん中のライン、つまり正中線に沿った部分の形成が未熟になりやすい先天性の疾患です。

具体的には、顔の真ん中、喉や気管、心臓、そして性器などに特徴が現れやすくなります。

これを医学的には正中線発育形成異常症と呼ぶこともあります。

1型と2型の違い

オピッツGBBB症候群は、原因となる遺伝子と遺伝形式によって2つのタイプに分けられます。

  • 1型:X連鎖性遺伝と呼ばれるタイプで、MID1という遺伝子が原因です。男性に重い症状が出やすく、女性は軽症か無症状のことが多いのが特徴です。
  • 2型:常染色体顕性遺伝(優性遺伝)と呼ばれるタイプで、今回解説するものです。こちらは男女関係なく発症し、症状の現れ方も性別による差が少ない傾向にあります。

2型は、以前は第22番染色体の欠失(22q11.2欠失症候群)と関連していると考えられていた時期もありましたが、現在ではSPECC1Lという特定の遺伝子の変異が主な原因であることがわかっています。

発生頻度

非常に稀な疾患であり、正確な頻度はわかっていませんが、数万人に1人から10万人に1人程度と考えられています。

主な症状

2型の症状は、顔、喉、性器などに特徴的に現れます。

すべての患者さんに全ての症状が出るわけではなく、軽度の方から重度の方まで個人差が大きいのが特徴です。

1. お顔立ちの特徴(顔貌)

ご家族が見て最初に気づく特徴であり、診断のきっかけとなることが多いポイントです。

  • 眼間開離:両目の間隔が広く離れている状態です。この病気の最も代表的な特徴の一つです。
  • 鼻の特徴:鼻の根元が低く、鼻筋が太い、あるいは鼻の穴が上を向いているといった特徴が見られます。
  • 唇と口蓋:上唇が割れている口蓋裂や、口の中の天井が割れている口蓋裂を合併することがあります。これにより、ミルクを飲む力が弱かったり、言葉の発達に影響が出たりすることがあります。
  • おでこ:おでこが広く、少し前に出ていることがあります。
  • 耳:耳の位置が少し低かったり、耳の形に変形が見られたりすることがあります。

これらのお顔立ちは、成長とともに変化し、目立たなくなることもあります。また、これらは「オピッツ顔貌」と呼ばれる愛嬌のある特徴として捉えられることも多いです。

2. 喉と呼吸器の症状(咽頭・喉頭・気管)

2型において、生命を守る上で最も注意が必要なのが、喉や気管の問題です。

  • 喉頭裂:食道(食べ物の通り道)と気管(空気の通り道)の壁に隙間ができている状態です。通常は分かれているべき道がつながってしまっているため、ミルクや唾液が気管に入り込んでしまう誤嚥を起こしやすくなります。
  • 嚥下障害:飲み込む機能そのものが弱いことがあります。誤嚥を繰り返すと、誤嚥性肺炎を起こし、発熱や呼吸困難の原因となります。
  • 喘鳴:喉の軟骨が柔らかかったり、気管が狭かったりすることで、呼吸をするときにゼーゼー、ヒューヒューという音がすることがあります。

これらの症状がある場合、生後すぐからミルクの飲み方に工夫が必要だったり、場合によってはチューブでの栄養管理が必要になったりします。

3. 性器の形成異常(特に男児)

身体の正中線の形成不全は、性器にも現れます。

  • 尿道下裂:男児において、おちんちんの尿の出る穴が、先端ではなく裏側の根元に近い部分に開いている状態です。
  • 停留精巣:精巣(睾丸)が陰嚢の中に降りてこず、お腹の中や足の付け根に留まっている状態です。
  • 鎖肛:稀ですが、肛門の位置がずれていたり、開いていなかったりすることがあります。
  • 女児の場合:陰唇の形成不全などが見られることがありますが、男児に比べると症状は軽いか、目立たないことが多いです。

4. 知的発達と神経系

  • 発達の遅れ:約半数の患者さんで、軽度から中等度の発達の遅れや知的障害が見られることがあります。しかし、知能は正常範囲内である患者さんも多くいらっしゃいます。
  • 脳梁欠損:右脳と左脳をつなぐ橋のような部分である脳梁が、細かったり、欠けていたりすることがあります。これが発達の遅れに関係している場合があります。

5. その他の合併症

  • 心疾患:心臓の壁に穴が開いている(心室中隔欠損症など)などの先天性心疾患を合併することがあります。
  • 手足の指:指が多かったり(多指症)、指同士がくっついていたり(合指症)することが稀にあります。

原因

なぜ、身体の中心線の形成がうまくいかないのでしょうか。その原因は、細胞の骨組みを作る遺伝子の変化にあります。

SPECC1L遺伝子の変異

オピッツGBBB症候群2型の主な原因は、第22番染色体にあるSPECC1Lという遺伝子の変異です。

この遺伝子は、細胞骨格と呼ばれる細胞の形を保つためのタンパク質や、細胞同士をつなぎ合わせる接着因子の働きに関わっています。

お母さんのお腹の中で赤ちゃんの顔や体が作られるとき、左右から伸びてきた組織が真ん中でピタリとくっつく必要があります。これを癒合といいます。

唇がくっついて口になり、喉の壁がくっついて気管と食道を分け、尿道の壁がくっついて管になります。

SPECC1L遺伝子に変異があると、細胞がうまく移動できなかったり、しっかりとくっつけなかったりします。

その結果、真ん中の合わせ目が甘くなり、目が離れたり、唇や口蓋が割れたり、喉に隙間ができたりすると考えられています。

遺伝について

この病気は常染色体顕性遺伝という形式をとります。以前は優性遺伝と呼ばれていました。

ご両親のどちらかが2型である場合、お子さんに遺伝する確率は50パーセントです。性別による違いはありません。

しかし、2型の患者さんの多くは、ご両親はこの病気ではなく、お子さんの代で初めて遺伝子の変化が起こる突然変異のケースです。

これは、受精卵ができる過程、あるいは精子や卵子ができる過程で偶然に起きた変化であり、誰のせいでもありません。

「妊娠中の薬の影響」や「ストレス」などが原因ではありません。

診断と検査

診断は、特徴的な見た目の症状と、画像検査、そして遺伝学的検査を組み合わせて行われます。

1. 臨床診断

医師は診察で以下の特徴的な所見の組み合わせを確認します。

  • 離れた目(眼間開離)。
  • 口蓋裂や唇裂。
  • 喉の症状(嚥下障害や喉頭裂)。
  • 男児における尿道下裂。
  • 家族歴(親戚に似た症状の人がいるか)。

これらの症状が揃っている場合、臨床的にオピッツGBBB症候群が疑われます。

2. 画像検査

身体の中の構造を詳しく調べるために行われます。

  • CT検査・MRI検査:脳の構造(脳梁欠損など)や、喉の形、内臓の位置などを確認します。
  • 嚥下造影検査:バリウムなどの造影剤を混ぜたミルクやゼリーを飲んでもらい、飲み込みの状態や、気管への入り込み(誤嚥)がないかをレントゲンで動画として撮影します。喉頭裂の診断や、安全な食事形態を決めるために非常に重要な検査です。
  • 心エコー検査:心臓の奇形がないかを確認します。

3. 遺伝学的検査

確定診断のために行われます。

血液を採取し、DNAを解析してSPECC1L遺伝子に変異があるかを調べます。

また、1型(MID1遺伝子)ではないことを確認するためにも行われることがあります。

最近の研究では、2型と症状がよく似ている他の疾患(Teebi眼間開離症候群など)も、実は同じSPECC1L遺伝子の変異によって起こることがわかってきており、遺伝子検査によってより正確な診断が可能になっています。

医者

治療と管理

現在の医学では、遺伝子を修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して手術やリハビリテーションを行うことで、機能を改善し、生活の質を高めることができます。

形成外科、小児外科、耳鼻咽喉科、小児科、リハビリテーション科などがチームを組んで、お子さんの成長に合わせてサポートします。

1. 外科的治療(手術)

体の構造的な問題を修復するために、いくつかの手術が必要になることがあります。

  • 口唇口蓋裂の手術:生後数ヶ月で唇の手術、1歳から1歳半頃に口蓋の手術を行うのが一般的です。これにより、見た目を整えるだけでなく、食事や言葉の発音がしやすくなります。
  • 尿道下裂の手術:男児の場合、尿の出口を先端に持ってくる手術を行います。通常は1歳前後に行われます。
  • 停留精巣の手術:精巣をお腹の中から陰嚢の中に固定する手術を行います。将来の精巣機能を守るために重要です。
  • 喉頭裂の手術:喉の隙間が大きい場合や、誤嚥がひどい場合は、隙間を縫い合わせる手術が必要になることがあります。
  • 鎖肛の手術:肛門の形成が必要な場合は、生後すぐに行われます。

2. 呼吸と栄養の管理

生後間もない時期に最も大切なケアです。

  • 経管栄養:口から飲むと誤嚥してしまう場合、鼻からチューブを通してミルクを直接胃に入れます。これにより、肺炎を防ぎながら、安全に栄養を摂ることができます。
  • 胃ろう:長期間にわたって経管栄養が必要な場合、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ることがあります。これは、鼻のチューブによる不快感をなくし、お口のリハビリに集中するために選択されることが多いです。
  • とろみ調整:飲み込む力が弱い場合、ミルクや水分にとろみをつけて、ゆっくり流れるようにすることで、誤嚥を防ぎます。

3. リハビリテーション(療育)

お子さんの発達を促すために、様々なリハビリを行います。

  • 言語聴覚療法:言葉の発達を促す練習や、正しい発音の練習を行います。また、安全に食べるための飲み込みの訓練も行います。
  • 理学療法・作業療法:運動発達に遅れがある場合、体の動かし方や手先の使い方の練習を行います。

4. 定期的なフォローアップ

成長に伴って、中耳炎になりやすかったり(口蓋裂の影響)、歯並びが悪くなったりすることがあります。

耳鼻科での聴力チェックや、歯科・矯正歯科での歯の管理を定期的に受けることが大切です。

また、心臓の病気がある場合は、循環器科でのフォローも続けます。

まとめ

オピッツGBBB症候群2型についての解説をまとめます。

  • 病気の本質: SPECC1L遺伝子の変異により、顔、喉、性器などの身体の中心線の形成が未熟になる病気です。
  • 主な特徴: 離れた目、口唇口蓋裂、嚥下障害(飲み込みにくさ)、男児における尿道下裂などが特徴です。
  • 1型との違い: 1型は男性に重く出ますが、2型は男女ともに発症し、性別による差が少ない常染色体顕性遺伝です。
  • 治療の柱: 形成外科や小児外科による修復手術、誤嚥を防ぐための栄養管理、そして言葉や運動の療育が中心となります。
  • 予後: 適切な管理を行えば、生命予後は良好な場合が多く、知能も正常範囲であることが多いです。

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