骨形成不全症III型(Osteogenesis Imperfecta Type III)

医者

骨形成不全症III型、あるいはIII型OIという診断名を聞き、情報を求めてこのページにたどり着かれたご家族の方へ。

医師から「骨が非常にもろい病気です」や「骨の変形が進みやすいタイプです」といった説明を受け、レントゲン画像を見せられたとき、言葉にできないほどの衝撃と深い悲しみを感じられたかもしれません。

インターネットで検索すると、厳しい症状や「進行性」という言葉が並んでおり、お子さんの将来を考えて、暗いトンネルの中にいるような気持ちになっているかもしれません。

骨形成不全症は、骨の強さに関わる遺伝子の変化によって起こる生まれつきの体質ですが、その症状の現れ方はタイプによって大きく異なります。

今回解説するIII型は、お母さんのお腹の中にいるときや、生まれた直後から骨折が見られるなど、生き延びることができるタイプの中では最も症状が重いとされるグループです。

しかし、どうか希望を捨てないでください。

この数十年で、骨形成不全症の治療は劇的に進歩しました。

以前であれば寝たきりになることが多かったお子さんも、骨を強くするお薬や、成長に合わせて伸びる手術用の釘などの技術によって、車椅子を使って自立的に移動したり、学校に通って勉強したりすることができるようになっています。

III型のお子さんは、身体的なハンディキャップはあっても、知的な発達は良好で、非常に賢く、明るく、社交的な性格であることが多いのも特徴です。

まず最初にお伝えしたいのは、お子さんは診断名のついた「症例」ではなく、無限の可能性を秘めた一人の人間だということです。

医療チームと共に、一つひとつ課題を乗り越えていきましょう。

概要:どのような病気か

まず、この病気がどのような位置づけにあるのかを理解しましょう。

骨形成不全症とは

骨形成不全症は、骨がもろく、弱い力でも骨折しやすくなる病気です。英語ではOsteogenesis Imperfectaといい、頭文字をとってOIと呼ばれます。

全身の結合組織、つまり体を支える組織に影響が出るため、骨だけでなく、皮膚や目、耳などにも症状が出ることがあります。

III型という分類について

骨形成不全症は、症状の重さや特徴によってI型からIV型、あるいはさらに細かい型に分類されています。これをサイレンス分類と呼びます。

  • I型: 最も軽く、骨折回数も比較的少ないタイプ。
  • II型: 最も重く、周産期(生まれた直後など)に亡くなることが多いタイプ。
  • III型: 重症で、進行性の変形が見られるタイプ。
  • IV型: I型とIII型の中間にあたる中等度タイプ。

III型は、専門的には「進行性変形性骨形成不全症」とも呼ばれます。

これは、成長とともに骨の変形が進んでいく傾向があるためです。

生まれた時から手足の骨折や変形が見られることが多く、身長の伸びも非常にゆっくりで、著しい低身長となるのが特徴です。

しかし、最も重篤なII型とは異なり、呼吸管理などの適切なケアを行えば、長期的な生存が可能です。

発生頻度

骨形成不全症全体の発症率は約2万人に1人から3万人に1人と言われていますが、III型はその中でも比較的稀なタイプです。10万人に1人から2人程度と考えられています。

主な症状

III型の症状は、全身の骨格に強く現れます。

個人差はありますが、多くの患者さんに共通して見られる特徴的なサインについて詳しく見ていきましょう。

1. 多発する骨折と骨の変形

III型の最大の特徴は、易骨折性と呼ばれる骨のもろさが強いことです。

お母さんのお腹の中にいる胎児期からすでに骨折していることが多く、生まれた時点で手足が曲がっていたり、短くなっていたりすることがあります。

乳幼児期から学童期にかけても、着替えやオムツ交換、寝返りといった日常の些細な動作で骨折してしまうことがあります。骨折の回数は数十回から百回以上に及ぶことも珍しくありません。

また、骨が柔らかいため、筋肉に引っ張られたり、重力がかかったりすることで、骨が徐々に弓なりに曲がってしまう変形が進行します。

特に、太ももの骨である大腿骨や、すねの骨である脛骨の湾曲が強く出やすいです。

2. 著しい低身長

III型の患者さんのほとんどに、重度の低身長が見られます。

これは、骨自体の成長が阻害されていることに加え、度重なる骨折によって骨が短くなる短縮や、骨の変形、背骨の湾曲などが複合的に影響しています。

最終的な身長は100センチメートル前後になることが多いですが、近年の治療の進歩により、以前より身長が伸びる傾向にあります。

3. 頭と顔の特徴(三角顔)

頭の骨の成長にも特徴が現れます。

頭のてっぺんの骨が柔らかく、頭が相対的に大きく見えることがあります。

おでこが広く、あごが小さい逆三角形のような顔立ちになることが多く、これを三角顔と呼びます。

また、赤ちゃんの頭のてっぺんにある柔らかい部分である大泉門が、非常に大きく開いており、大人になっても閉じないこともあります。

4. 強膜の色(白目の色)

骨形成不全症の特徴として有名な青色強膜が見られます。

白目の部分が青く透き通って見えます。

I型では一生を通じて青いことが多いですが、III型の場合は、乳幼児期は濃い青色をしていても、年齢とともに色が薄くなり、白色に近づいていく傾向があります。

5. 歯の形成不全(象牙質形成不全)

III型の患者さんの多くに、歯の形成の問題が見られます。これを象牙質形成不全と呼びます。

歯のエナメル質の下にある象牙質という部分の構造が弱いため、歯が透き通ったような琥珀色や灰色に見えることがあります。

歯が欠けやすかったり、すり減りやすかったりするため、乳歯の段階から歯科管理が非常に重要です。

6. 背骨と胸郭の変形

背骨が左右に曲がる側弯症や、後ろに曲がる後弯症が、成長とともに進行しやすいです。

また、胸の骨(胸郭)が変形し、鳩胸や漏斗胸になることもあります。

これらは、見た目の問題だけでなく、肺が広がるスペースを狭くしてしまうため、呼吸機能に影響を与える可能性があります。

7. その他の症状

  • 難聴: 耳の中にある小さな骨の形成が悪くなることで、難聴を合併することがあります。
  • 関節の緩さ: 靭帯が弱いため、関節が通常よりも大きく動いてしまう過伸展が見られます。
  • 皮膚の薄さ: 皮膚が薄く、あざができやすいことがあります。

原因

なぜ、これほどまでに骨がもろくなってしまうのでしょうか。その原因は、骨の「鉄筋」にあたるタンパク質の構造にあります。

I型コラーゲンの構造異常

骨形成不全症III型の原因は、I型コラーゲンというタンパク質を作る遺伝子の変異です。

骨は、カルシウムなどのミネラル成分(コンクリート)と、コラーゲン繊維(鉄筋)の組み合わせでできています。

I型コラーゲンは、骨に柔軟性と強度を与えるための非常に重要な「鉄筋」の役割を果たしています。

III型で起きていること(質の異常)

I型コラーゲンは、3本の鎖がらせん状に絡まり合ってできています。

III型の患者さんでは、この鎖を作る遺伝子に変異があり、アミノ酸の配列が書き換わっています。

その結果、らせん構造がうまく作れなかったり、ねじれたりした「不良品のコラーゲン」が作られてしまいます。

コラーゲンの量が減るだけの軽症型(I型)とは異なり、III型ではこの「不良品のコラーゲン」が骨の中に組み込まれてしまいます。

すると、骨の構造全体が不安定になり、極端にもろくなってしまうのです。

正常なコラーゲンが混ざっていても、不良品がそれを邪魔してしまうため、症状が重くなります。これをドミナント・ネガティブ効果と呼びます。

原因遺伝子

具体的には、COL1A1またはCOL1A2という遺伝子に変異が起きています。これらの遺伝子は、I型コラーゲンを構成する鎖の設計図です。

稀に、コラーゲンを加工する別の遺伝子(CRTAPやLEPRE1など)の変異によって、III型と同じような重い症状が出ることもあり、これらはVII型やVIII型といった新しい分類で呼ばれることもありますが、症状や治療方針はIII型とほぼ同じです。

遺伝について

この病気の多くは常染色体顕性遺伝という形式をとります。以前は優性遺伝と呼ばれていました。

しかし、III型の患者さんのほとんどは、ご両親は骨形成不全症ではなく、お子さんの代で初めて変異が起こる突然変異のケースです。

これは、受精卵ができる過程で偶然に起きた変化であり、誰のせいでもありません。

「妊娠中のお母さんの行動が悪かった」とか「家系のせい」といったことは一切ありません。

ただし、稀に常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のタイプもあるため、次のお子さんを考える際などは、専門医による遺伝カウンセリングを受けることをお勧めします。

診断と検査

診断は、特徴的な身体所見、レントゲン検査、そして遺伝学的検査を組み合わせて行われます。

1. 身体所見の確認

出生直後から、以下のような特徴が見られることで診断されます。

  • 手足の変形や短縮。
  • 頭が大きく、おでこが出ている。
  • 白目が青い。
  • 体が柔らかい。

2. レントゲン検査

全身の骨のレントゲンを撮ると、III型に特有の所見が見られます。

  • 多発骨折: 生まれた時点で、すでに治りかけた骨折の跡がたくさんあることがあります。
  • 骨の変形: 長い骨が太く、短く、蛇行しているように見えることがあります。
  • ポップコーン骨端: 膝や足首の関節近くの骨(骨端)に、ポップコーンが弾けたような不規則な影が見えることがあります。これはIII型に特徴的な所見です。
  • 頭蓋骨の石灰化不全: 頭の骨が薄く、骨になっていない部分が多く見られます。

3. 遺伝学的検査

確定診断のために行われます。

血液を採取し、DNAを解析してCOL1A1またはCOL1A2遺伝子などに変異があるかを調べます。

これにより、正確な病型診断や、予後の予測、遺伝カウンセリングに役立てることができます。

赤ちゃん

治療と管理

現在の医学では、遺伝子を修復して骨を完全に正常にするような根本的な治療法はまだ確立されていません。

しかし、骨を少しでも強くし、変形を防ぎ、お子さんが自立した生活を送れるようにするための治療法は大きく進歩しています。

特にIII型では、小児科、整形外科、リハビリテーション科、歯科、耳鼻科などによるチーム医療が不可欠です。

1. 薬物療法(ビスホスホネート製剤)

現在、III型の治療において最も重要なのが、ビスホスホネート製剤による治療です。パミドロン酸やゾレドロン酸といったお薬が使われます。

このお薬は、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを強力に抑えることで、骨が溶け出すのを防ぎ、骨の密度を増やします。

III型のお子さんに対しては、乳児期などの早期から点滴治療を開始することが推奨されています。

これにより、骨折の回数が減り、骨の痛み(骨痛)が和らぎ、呼吸状態が安定し、活動的になれる効果が期待されています。

また、背骨が潰れるのを防ぎ、身長の伸びを助ける効果もあります。

2. 外科的治療(髄内釘手術)

骨折を繰り返す場合や、骨の曲がりが強くて立つことが難しい場合には、積極的に手術が行われます。

髄内釘手術(ロッディング):

骨の中に金属の棒(ロッド)を通して、骨を内側から支える手術です。

曲がった骨を切って真っ直ぐにし、棒を通して固定します。これにより、骨折を防ぐとともに、手足の形を整えることができます。

テレスコピックネイル:

成長期のお子さんの場合、骨が伸びると入れた棒が短くなってしまい、棒のない部分で骨折してしまうという問題があります。

そこで、骨の成長に合わせて望遠鏡のように伸びる特殊な釘であるテレスコピックネイルが使われます。

この手術を行うことで、お子さんはつかまり立ちや歩行器での移動が可能になるなど、生活の範囲が大きく広がります。

3. リハビリテーション

薬や手術と並んで重要なのがリハビリです。

「骨折が怖いから動かさない」というのは、実は逆効果です。動かないでいると、骨はさらに弱くなり、関節も固まってしまいます。

理学療法士の指導のもと、お子さんの発達段階に合わせた運動を行います。

お座りの練習、車椅子の操作練習、歩行器を使った移動練習などを行い、筋力を維持し、自分の力で移動できる手段を獲得することを目指します。

水泳や水中運動は、骨への負担が少ないため非常に有効です。

4. 日常生活のケア(ハンドリング)

特に乳児期のご家族にとって、一番の悩みは「抱っこ」や「オムツ替え」でしょう。

骨に負担をかけない抱っこの仕方(ハンドリング)を、看護師や理学療法士から学ぶことが大切です。

基本は、手足を引っ張らず、体幹や頭、お尻といった広い面を支えて、優しくゆっくり動かすことです。

オムツ替えのときは、足首を持って持ち上げるのではなく、お尻の下に手を入れて持ち上げるようにします。

5. 呼吸と歯の管理

呼吸管理:

胸郭の変形や側弯によって呼吸機能が低下しやすいため、風邪をひいたときなどは早めの受診が必要です。重症の場合は、在宅酸素療法などが必要になることもあります。

歯科管理:

象牙質形成不全がある場合、歯が非常に弱いです。定期的なフッ素塗布や、欠けた歯の修復など、専門的なケアを継続します。

まとめ

骨形成不全症III型についての解説をまとめます。

  • 病気の本質: コラーゲンの構造異常により、骨が極端にもろくなり、変形が進む病気です。
  • 主な特徴: 進行性の骨変形、著しい低身長、多発骨折、三角顔、青色強膜などが特徴です。
  • 治療の進歩: ビスホスホネート製剤による点滴治療と、テレスコピックネイルなどの手術を組み合わせることで、QOL(生活の質)は大きく向上しています。
  • 予後: 身体的な障害はありますが、知能は正常であり、適切なサポートがあれば社会参加や自立が可能です。

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