骨形成不全症IV型、あるいはIV型OIという診断名を聞き、情報を求めてこのページにたどり着かれたご家族の方へ。
医師から「骨が弱い病気です」という説明を受け、インターネットで検索をされたかもしれません。そこには「難病」という言葉や、様々な重症度の情報が溢れており、お子さんの将来を案じて大きな不安を感じていらっしゃることと思います。
骨形成不全症は、骨の強さに関わる遺伝子の変化によって起こる生まれつきの体質ですが、その症状の現れ方はタイプによって大きく異なります。
今回解説するIV型は、医学的には中等度と分類されるタイプです。
I型のように症状が軽いわけではありませんが、III型のように極めて重篤というわけでもありません。この「中間」という位置づけゆえに、個人差が非常に大きく、将来の予測が立てにくいと感じるご家族も少なくありません。
しかし、IV型の患者さんの多くは、適切な治療とサポートを受けることで、学校に通い、友達と遊び、大人になって社会で活躍されています。
医療は日々進歩しており、骨を強くするお薬や、変形を治す手術の技術も向上しています。
まず最初にお伝えしたいのは、診断名に縛られすぎないでほしいということです。お子さんは「IV型の症例」ではなく、豊かな可能性を秘めた一人の人間です。
あまり恐れすぎず、一つひとつ知識を整理していきましょう。
概要:どのような病気か
まず、この病気がどのような位置づけにあるのかを理解しましょう。
骨形成不全症とは
骨形成不全症は、骨がもろく、弱い力でも骨折しやすくなる病気です。英語ではOsteogenesis Imperfectaといい、頭文字をとってOIと呼ばれます。
全身の結合組織、つまり体を支える組織に影響が出るため、骨だけでなく、皮膚や目、耳などにも症状が出ることがあります。
IV型という分類について
骨形成不全症は、症状の重さや特徴によってI型からIV型、あるいはさらに細かい型に分類されています。これをサイレンス分類と呼びます。
- I型: 最も軽く、白目が青くなるのが特徴。
- II型: 最も重く、周産期に亡くなることが多い。
- III型: 重症で、進行性の変形が見られる。
- IV型: I型とIII型の中間にあたる中等度。
IV型は、かつては「青色強膜を持たない骨形成不全症」としてひとくくりにされていましたが、現在では遺伝子の変異の仕方や臨床症状によって定義されています。
最大の特徴は、白目の部分である強膜が、青くならずに正常な白色、あるいはごく薄い灰色であることです。
また、骨折の回数や骨の変形の程度は人によって様々ですが、一般的には幼児期から学童期にかけて骨折を繰り返し、治療が必要になるケースが多いです。
発生頻度
骨形成不全症全体の発症率は約2万人に1人から3万人に1人と言われていますが、IV型はその中で最も頻度が高いわけではありません。しかし、軽症のIV型は見過ごされている可能性もあり、正確な頻度は特定が難しい側面があります。
主な症状
IV型の症状は、骨の症状と骨以外の症状に分けられます。
特に、目や歯の症状が、I型などの他のタイプと見分ける重要なポイントになります。
1. 骨折と骨の変形
易骨折性と呼ばれる骨のもろさがあり、転んだり、少しぶつけたりしただけで骨折してしまうことがあります。
IV型のお子さんの場合、出生時に骨折があることもあれば、ないこともあります。多くの場合、歩き始めの時期や、活動範囲が広がる幼児期から学童期に骨折が増える傾向があります。
成長期が終わる思春期以降になると、骨折の回数は劇的に減っていくことが一般的です。
また、手足の長い骨が弓なりに曲がってしまう変形が見られることがあります。
特に、太ももの骨である大腿骨や、すねの骨である脛骨に湾曲が生じやすいです。
さらに、背骨が左右に曲がる側弯症や、背骨が丸くなる後弯症を合併することが多く、これは身長の伸びに影響を与えます。
2. 低身長
IV型の患者さんの多くに、低身長が見られます。
これは、骨自体の成長がゆっくりであることに加え、度重なる骨折や骨の変形、背骨の湾曲などが複合的に影響しています。
程度は個人差があり、軽度で済む方もいれば、著しい低身長となる方もいます。
成長ホルモンの分泌には問題がないことがほとんどですが、治療として成長ホルモンを使用するかどうかは、慎重な判断が必要です。
3. 強膜の色(白目の色)
ここがI型との最大の違いです。
骨形成不全症のI型では、白目の部分が青く透き通って見える青色強膜が特徴的ですが、IV型では、白目は通常通りの白色、あるいはごく薄い灰色であることがほとんどです。
生まれた直後は少し青みがかっていることがあっても、成長とともに白くなっていくのが一般的です。
4. 歯の形成不全(象牙質形成不全)
IV型では、歯の形成に問題が出ることが比較的多いです。これを象牙質形成不全と呼びます。
歯のエナメル質の下にある象牙質という部分が弱いため、歯が透き通ったような琥珀色や灰色に見えることがあります。
また、歯が欠けやすかったり、すり減りやすかったりするため、虫歯になりやすく、早期からの歯科管理が非常に重要です。
以前の分類では、この歯の症状があるタイプをIV型A、ないタイプをIV型Bと呼んでいましたが、現在はまとめてIV型として扱われることが多いです。
5. その他の症状
難聴:
耳の中にある小さな骨の形成や動きが悪くなることで、難聴を合併することがあります。通常は大人になってから症状が出ることが多いですが、定期的な聴力検査が必要です。
関節の緩さ:
靭帯が弱いため、関節が通常よりも大きく動いてしまう過伸展が見られることがあります。体が柔らかいと言われることもありますが、捻挫などをしやすいため注意が必要です。
大泉門の閉鎖遅延:
赤ちゃんの頭のてっぺんにある柔らかい部分である大泉門が、通常よりも長く開いたままになることがあります。
原因
なぜ、骨がもろくなったり、変形したりするのでしょうか。その原因は、骨の「鉄筋」にあたるタンパク質の異常にあります。
I型コラーゲンの構造異常
骨形成不全症IV型の原因は、I型コラーゲンというタンパク質を作る遺伝子の変異です。
骨は、カルシウムなどのミネラル成分(コンクリート)と、コラーゲン繊維(鉄筋)の組み合わせでできています。
I型コラーゲンは、骨に柔軟性と強度を与えるための非常に重要な「鉄筋」の役割を果たしています。
I型とIV型の違い(量か質か)
ここが少し専門的ですが、重要なポイントです。
軽症のI型では、コラーゲンの「質」は正常なのですが、作られる「量」が半分くらいに減ってしまっています。つまり、鉄筋の数は少ないけれど、一本一本は丈夫な状態です。
一方、IV型では、コラーゲンの「量」は正常に近いのですが、作られるコラーゲンの「質(構造)」に異常があります。つまり、鉄筋の数は足りているけれど、一本一本が歪んでいたり、弱かったりする不良品の鉄筋が混ざってしまっている状態です。
この「不良品のコラーゲン」が骨の中に組み込まれることで、骨の構造全体が不安定になり、I型よりも症状が重くなりやすい傾向があるのです。これをドミナント・ネガティブ効果と呼びます。
原因遺伝子
具体的には、COL1A1またはCOL1A2という遺伝子に変異が起きています。これらの遺伝子は、I型コラーゲンを構成する鎖の設計図です。
遺伝について
この病気は常染色体顕性遺伝という形式をとります。以前は優性遺伝と呼ばれていました。
ご両親のどちらかがIV型である場合、お子さんに遺伝する確率は50パーセントです。性別による違いはありません。
しかし、IV型の患者さんの多くは、ご両親ともに骨形成不全症ではなく、お子さんの代で初めて変異が起こる突然変異のケースです。
これは、受精卵ができる過程で偶然に起きた変化であり、誰のせいでもありません。妊娠中の生活が悪かったといったことは一切関係ありません。

診断と検査
診断は、特徴的な症状、レントゲン検査、そして遺伝学的検査を組み合わせて行われます。
1. 身体所見の確認
医師は診察で以下の点を確認します。
- 骨折のしやすさや、過去の骨折歴。
- 白目が青くないか(白色か)。
- 歯の色や形に異常がないか。
- 身長が低めかどうか。
2. レントゲン検査・骨密度検査
全身の骨のレントゲンを撮り、以下の点を確認します。
- 骨の密度が低く、薄く写っていないか。
- 過去の骨折の跡や、骨の変形(湾曲)があるか。
- 背骨の変形(側弯や圧迫骨折)があるか。
また、DEXA法などを用いて骨密度を測定し、同年代の平均と比べてどのくらい低いかを評価します。
3. 遺伝学的検査
確定診断のために行われます。
血液を採取し、DNAを解析してCOL1A1またはCOL1A2遺伝子に変異があるかを調べます。
ただし、すべての患者さんで必ず変異が見つかるわけではなく、数パーセントの方は原因不明のこともあります。また、遺伝子変異の場所によって症状の重さが異なるため、予後の予測にも役立ちます。
治療と管理
現在の医学では、遺伝子を修復して不良品のコラーゲンを正常品に変えるような根本的な治療法はまだ確立されていません。
しかし、骨を強くし、骨折を減らし、変形を治すための治療法は大きく進歩しています。
整形外科、小児科、リハビリテーション科、歯科などが連携して、長期的にお子さんをサポートします。
1. 薬物療法(ビスホスホネート製剤)
現在、骨形成不全症の治療の柱となっているのが、ビスホスホネート製剤です。パミドロン酸やアレンドロン酸といったお薬が使われます。
骨は常に、古い骨を壊す破骨細胞と、新しい骨を作る骨芽細胞が働いて、作り変えられています。
ビスホスホネート製剤は、骨を壊す細胞の働きを抑えることで、骨が溶け出すのを防ぎ、結果として骨の密度を増やします。
IV型のお子さんに対しては、定期的な点滴治療が行われることが多いです。
これにより、骨折の回数が減り、骨の痛み(骨痛)が和らぎ、活動的になれる効果が期待されています。
副作用として、初回投与時の発熱や、長期投与による顎骨への影響などが報告されていますが、専門医の管理下で安全に行われます。
2. 外科的治療(髄内釘手術)
骨折を繰り返す場合や、骨の曲がりが強い場合には、手術が検討されます。
髄内釘手術(ロッディング):
骨の中に金属の棒(ロッド)を通して、骨を内側から支える手術です。
骨折の予防だけでなく、曲がった骨を真っ直ぐに矯正する目的でも行われます。
テレスコピックネイル:
成長期のお子さんの場合、骨が伸びると入れた棒が短くなってしまうという問題があります。
そこで、骨の成長に合わせて望遠鏡のように伸びる特殊な釘であるテレスコピックネイルが使われることが増えています。これにより、手術の回数を減らすことができます。
3. 背骨の管理
IV型では側弯症が進行しやすい傾向があります。
定期的にレントゲンを撮り、曲がりが強くなる場合は、コルセットによる装具療法や、背骨を固定する手術が行われます。背骨の管理は、肺の機能を守るためにも非常に重要です。
4. リハビリテーション
薬や手術と同じくらい大切なのがリハビリです。
「骨折が怖いから動かない」という生活を続けると、筋力が落ち、骨への刺激が減ってさらに骨が弱くなるという悪循環に陥ります。
理学療法士の指導のもと、筋肉を鍛え、体のバランス感覚を養うことが、骨を守る天然のプロテクターとなります。
特に水泳や水中ウォーキングは、浮力で骨への負担を減らしながら全身運動ができるため、非常に推奨されています。
5. 歯科管理
象牙質形成不全がある場合、歯がもろくなっています。
フッ素塗布による強化や、欠けた歯の修復、場合によってはクラウン(被せ物)をして歯を守る治療が必要です。かかりつけの歯科医を見つけ、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
まとめ
骨形成不全症IV型についての解説をまとめます。
- 病気の本質: I型コラーゲンの構造異常(質の低下)により、骨がもろくなる病気です。
- 重症度: 中等度であり、I型よりは重く、III型よりは軽い位置づけです。個人差が大きいです。
- 主な特徴: 白目は青くなく(白色)、繰り返す骨折、骨の変形、低身長、歯の形成不全などが特徴です。
- 治療の柱: ビスホスホネート製剤による骨強化、髄内釘などの手術による矯正、そしてリハビリテーションによる筋力維持が中心となります。
