妊娠がわかると、多くの方が最初に受けるのが「妊婦健診」。そのなかで超音波検査によって確認されるのが「胎囊(たいのう)」です。胎囊は赤ちゃんの最も初期の存在を示す大切なサインですが、「大きさが小さい」「成長が遅い」といった指摘を受けると、不安を感じる妊婦さんも少なくありません。本記事では、胎囊の正常値、異常の可能性、そしてNIPT(新型出生前診断)との関連について、専門的かつわかりやすく解説していきます。
胎囊(たいのう)とは?妊娠の最初の証
胎囊は赤ちゃんのベースとなる袋
胎囊(たいのう)とは、妊娠のごく初期に超音波検査で確認できる、子宮内の「黒い丸」のように映る袋のことです。妊娠4週〜5週ごろに確認でき、赤ちゃんが育つためのベースとなる重要な構造です。袋の中は羊水で満たされており、胎芽(後に胎児となる組織)や胎盤など、成長に必要な組織がここから発達していきます。
この胎囊の確認は、妊娠が成立したことを示す最初の確かなサインといえます。
胎囊が確認できる時期
妊娠初期の発育には、次のような目安があります。
- 妊娠4週後半〜5週前半
超音波検査で、子宮内に小さな黒い円(胎囊)が見えるようになります。 - 妊娠5週後半〜6週前半
胎囊の中に「胎芽(たいが)」と呼ばれる胎児の原型が映り始めます。 - 妊娠6週以降
超音波で胎芽の心拍が確認でき、妊娠が順調に進んでいるかどうかの重要な指標となります。
胎囊の有無は妊娠の成立や子宮内妊娠の判断に重要です。
胎囊の正常な大きさと成長速度
正常な胎囊サイズの目安
| 妊娠週数 | 胎囊の大きさ(平均) |
| 5週 | 約5〜10mm |
| 6週 | 約10〜20mm |
| 7週 | 約20〜30mm |
※個人差があるため多少のズレは問題とされない場合が多いです。
胎囊の成長スピード
- 1日あたり約1mmが目安
- 成長が遅い場合でも、超音波の精度や排卵日のズレ、着床タイミングなどが影響していることがあります

胎囊のサイズに関する異常と注意点
妊娠初期の検診では、胎囊(たいのう)の大きさや位置、形を確認することで、妊娠の経過が順調かどうかを判断します。胎囊のサイズが小さい、あるいは見えない場合には、いくつかの可能性が考えられます。
小さい場合に考えられること
1. 排卵日のズレや着床の遅れ
排卵や着床が予想より遅かった場合、妊娠週数の計算がずれて胎囊が「小さめ」に見えることがあります。この場合は、数日〜1週間後に再度エコー検査を行い、成長の進み具合を確認するのが一般的です。
→ ほとんどの場合、自然な経過のズレで問題はありません。
2. 子宮外妊娠(異所性妊娠)
妊娠反応が陽性であっても、子宮内に胎囊が見えない場合は、卵管など子宮以外の場所に着床している可能性があります。
- 特徴的な症状:下腹部の強い痛み、性器出血、めまい、吐き気など
- 対応:早期発見がとても重要です。こうした症状がある場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
3. 稽留流産(けいりゅうりゅうざん)
胎囊は見えても、その中に胎芽や心拍が確認できない場合は、妊娠が進行していない「稽留流産」の可能性があります。
- 初期対応:すぐに確定せず、数日〜1週間の経過観察で再検査を行うことも多いです。
- 判断:医師が胎芽や心拍の発育状況を慎重に見ながら診断します。
大きすぎる場合の懸念
1. 胞状奇胎(ほうじょうきたい)
胞状奇胎とは、受精卵の異常によって胎盤を構成する「絨毛(じゅうもう)」が異常に増殖し、ぶどうの房のような組織が子宮内に広がる疾患です。
- 特徴
- 胎児が正常に発育しない
- 子宮内に大小の嚢胞状の構造が見られる
- hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の値が異常に高い
- 症状
- 不正出血
- 強い悪阻
- 子宮の急激な膨張
- 対応
超音波検査や血液検査で診断し、必要に応じて子宮内容物除去手術が行われます。
2. 停止した妊娠
胎囊が成長を続けているように見えても、胎芽の発育が途中で止まり、心拍が確認できない状態を指します。
- 原因
受精卵の染色体異常や、胎児の発育に影響する要因(ホルモンや血流など) - 診断
数日〜1週間の経過観察を行い、心拍が確認できない場合に診断されます。 - 対応
状況に応じて自然排出を待つか、子宮内容除去術を検討します。
注意点
胎囊サイズは、測定時期や超音波の条件によって見え方に誤差が出ることがあります。
医師が週数・hCG値・胎芽の成長スピードを総合的に判断するため、慌てず経過観察を続けることが大切です。
胎囊の大きさとNIPTの関係性
- 胎囊の大きさ自体はNIPTの結果に直接影響しません
- 胎盤の形成や胎児発育と関連するため、間接的にはNIPTの信頼性に関係する場合があります
- NIPTは妊娠10週以降が一般的で、胎児や胎盤の状態が検査精度に影響します
妊婦が覚えておきたい健診時のポイント
- 医師の説明を正確に理解する:胎囊サイズだけでなく胎芽や心拍、妊娠週数を総合判断
- 不安が強い場合はセカンドオピニオンも視野に:他院での再検査も安心につながる
- 胎囊確認後のステップ:胎芽・心拍の確認、母体血液検査、NIPTなど、妊娠中期に向けた準備へ進む

まとめ:胎囊の大きさは妊娠初期の大切な指標
- 胎囊は妊娠成立の証として重要な構造
- 正常値には目安があり個人差や誤差も大きい
- 異常の可能性があっても、経過観察や再検査が基本
- NIPTとの関連は間接的で、胎児発育の観察が重要
不安になりすぎず、医師と適切にコミュニケーションを取りながら、前向きに妊娠生活を過ごしましょう。
