自閉症スペクトラム症(ASD)とBAPの関係性を徹底解説！発達障害の新常識とNIPTの最新情報【YouTube解説】

こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。 このコラムでは、NIPT（新型出生前診断）を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなくデータで分かりやすくお届けしています。

妊娠・出産を控えたご夫婦から、「自閉症スペクトラム障害（ASD）の赤ちゃんが生まれる母親には、何か共通点や特徴があるのか？」というご質問をいただくことがあります。

結論から申し上げると、「自閉症の赤ちゃんが生まれる母親に明確な共通点がある」という科学的な根拠は、現在のところ見つかっていません。

しかし、近年、ASDの特性は「親の育て方」や「性格」とは関係なく、 「遺伝的な傾向」として連続的に存在することが分かってきました。この特性を「軽く持つ」 人々が一定数存在し、その方々は子育てや日常生活で特有の苦労を抱えることがあります。

今回は、この 「BAP（Broader Autism Phenotype：広汎自閉型特性）」 という概念を解説し、ASDの遺伝的な背景と、親御さん自身の自己理解がいかに大切かについて、最新の研究をもとに整理していきます。

1. 自閉症スペクトラム（ASD）の正しい理解

1-1. ASDとは：「脳の情報処理の個性」

自閉症スペクトラム障害（Autism Spectrum Disorder: ASD）は、脳の発達や情報処理の仕組みに特徴がある発達障害の一つです。主な特性は以下の通りです。

  1. 社会的なコミュニケーションや相互作用の困難さ（相手の表情、声のトーン、話の行間を読むのが苦手など）
  2. 限定された興味・こだわり、反復的な行動（ルールや順序を強く好む、特定の分野に深く没頭するなど）
  3. 感覚の過敏さ、または鈍感さ（音、光、匂い、服の感触などに敏感または鈍感）

1-2. 「スペクトラム」＝多様な特性の連続体

ASDの診断名に含まれる 「スペクトラム（連続体）」は、特性の現れ方に「幅」 があることを示しています。かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」などと個別に分類されていましたが、現在はすべてがASDに統合されています。

 「治す」というよりも、その人の脳の「個性」 として理解し、周囲が環境を整え、適切な支援を行うことで、本人が生きやすくなることが重要視されています。

2. 母親に見られる「広汎自閉型特性」（BAP）とは

ASDが発症する原因は、高い遺伝率（70〜90％）が示す通り、複雑な遺伝的な要因に大きく影響されます。この遺伝的な傾向は、診断基準を満たすほどではないものの、 「特性を軽く持つ親族」という形で現れることがあります。これがBAP（Broader Autism Phenotype：広汎自閉型特性） です。

2-1. BAPを持つ人が見せる傾向

BAPは診断名ではなく、ASDの遺伝的な土台を反映した 「認知や感覚のスタイル」 です。以下のような傾向を持つ方が多くいらっしゃいます。

分類特徴的な傾向（すべてが当てはまるわけではありません）
対人コミュニケーション会話が形式的になりやすい、人との距離感が少し苦手、相手の非言語情報（表情・トーン）の読み取りに時間がかかる。
感覚・行動音、光、匂いなどに敏感（過敏または鈍感）、ルールや順序を大切にする、急な予定変更に強いストレスを感じる、興味のあることに没頭しやすい。
思考・認知論理的・分析的な考え方を好む、感情よりも事実や手順を重視する、シングルタスクを好み、複数の同時処理が苦手。
情緒面ストレスや不安を感じやすいが、外に出すのが苦手、感情表現が控えめで冷静に見られがち。

Google スプレッドシートにエクスポート

2-2. BAPが子育てに与える影響

BAPの傾向を持つ親御さんは、子育てにおいて特有の強みと難しさを持ちます。

  • 強み： 家庭内のルールづくりやスケジュール管理が得意で、構造的かつ一貫した環境を整えるのが上手。子どもの行動の「論理的な理由」を理解することは得意。
  • 難しさ： 予定外の出来事や、子どもの感情的な反応（泣き叫ぶ、癇癪など）には、強いストレスを感じやすい。子どもの 「感情の共感」 を難しく感じることがある。

もしご自身にこうした傾向があると感じても、それは 「冷たい」とか「親の責任」ということでは決してありません。「情報処理のスタイルが少し異なる脳の個性」 であり、それに合わせたサポート（例：視覚的なスケジュール化、感情を言語化する練習など）があれば、子育てはぐっと楽になります。

3. 遺伝的な背景とASD発症の確率

ASDの発症には高い遺伝率が関わっていますが、ほとんどのケースは 「偶然の事象」 であることも理解しておくべきです。

状況ASD発症の頻度（リスク）遺伝の影響度
一般集団約2〜3％基準
家族にBAPあり数倍に上昇（最大10％程度推定）遺伝的な傾向が影響
きょうだいにASDあり約10〜20％共通の遺伝子要因が関与
一卵性双生児の一致率70％以上遺伝の影響が非常に強い

Google スプレッドシートにエクスポート

「家族にBAPの傾向がある」場合でも、リスクは数倍に上昇すると言っても、最大10%程度です。裏を返せば、90%以上はASDではないということになります。これは、ASDの発症が遺伝的な土台の上に、複数の環境要因が複雑に作用して決まる多因子遺伝であることを示しています。

4. 自己理解こそが「最善の支援」につながる

4-1. NIPTと遺伝子検査の意義

ASDそのものは出生前診断で診断できるものではありませんが、NIPT（新型出生前診断）でダウン症をはじめとする染色体異常のリスクを把握することは、妊娠中の不安を減らし、安定した精神状態で子育ての準備を進めるために重要です。

また、もしご自身やパートナーにBAP傾向があり、ASDの遺伝的な背景を懸念される場合は、ご家族で遺伝カウンセリングを受けることで、専門家から正しい情報に基づいたリスク評価と対処法を学ぶことができます。

4-2. 「自分を知ること」が最高の環境づくり

「自分にもBAPの傾向があるかもしれない」と感じた方は、決して一人で悩まず、専門の医師やカウンセラーに相談してください。

  • 自己理解： 自分の 「情報処理の癖」を知ることで、無理に一般的な育児法に合わせようとせず、自分と子どもに合った無理のない育児スタイル を見つけられます。
  • 環境調整： 感覚過敏があるなら騒音を避ける、変化が苦手ならスケジュールを徹底するなど、環境を整えることでストレスを最小限に抑えられます。

「治す」ものではなく「理解して支える」ことが大切だと述べたように、親御さん自身が自分の特性を理解し、自己支援を行うことこそが、結果として、ASDの特性を持つ子どもにとっても、最も安定した最高の環境づくりにつながるのです。

次のステップ

このコラムで「BAPかもしれない」と感じた方は、ご自身がストレスを感じやすい環境や、子育てで特に困難を感じるポイントをノートなどに書き出してみることをお勧めします。

もし、ご自身の特性や、お子さんの発達の傾向について、専門家からの見解を求めるための、信頼できる専門機関（クリニックやカウンセラー）を検索しましょうか？