こんにちは、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする「おかひろし」です。
このコラムでは、NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けしています。
子育てをしていると、「どうしてうちの子は、こんなに些細なことで泣くんだろう?」「なぜ、何度言っても伝わらないんだろう?」と悩み、途方に暮れてしまうことはありませんか?
スーパーマーケットに行くと必ず癇癪(かんしゃく)を起こす、教室でじっと座っていられない、目が合わない…。
実はその行動の裏には、「子どもが見ている世界」が、私たち大人とは全く違っているという事実が隠されているかもしれません。
今回は、**【自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちが“見ている世界”】**をテーマに、彼らが感じている感覚の世界を紐解き、親御さんが今日からできる具体的なサポート方法について、医学的な視点から詳しく解説していきます。
まず、皆さんに知っていただきたい大前提があります。
私たちが日常的に見ている風景、聞いている音、感じている肌触り。これらは全員が同じように感じていると思っていませんか?
実は、「感覚」というのは非常に個人的なものです。
特に、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ子どもたちにとっては、私たちが「普通」だと感じて見過ごしている景色が、全く違う強烈な刺激として脳に届いていることがあります。
「見え方が違う」と言うと、「視力が悪いということですか?」と質問されることがよくあります。
答えは「いいえ」です。眼球そのものの機能(視力)には問題がないことがほとんどです。
重要なのは、**「目から入った情報を、脳がどう処理しているか」**という点です。
人間の脳は、目から入ってくる膨大な視覚情報を、無意識のうちに整理・統合しています。必要な情報だけをピックアップし、不要な情報は背景として処理する。これを瞬時に行っているのです。
しかし、ASDのお子さんの脳では、この情報処理のフィルター機能が私たちと異なります。
これを**「感覚処理障害(SPD)」**と呼ぶこともありますが、同じASDでも、感覚が極端に敏感な「過敏」タイプもあれば、逆に鈍感な「鈍麻(どんま)」タイプもあり、さらにはその日の体調によって揺れ動くこともあります。
今日はその中でも、特に生活への影響が大きい**「視覚(見え方)」**に焦点を当ててみましょう。
ASDの子どもたちが体験している視覚的な世界とは、具体的にどのようなものでしょうか?
医学的な特徴と、それが引き起こす具体的な「困りごと」を照らし合わせて解説します。
私たち大人は、部屋に入ったとき「教室だな」「リビングだな」と、まず全体像を把握します(全体視)。
しかし、ASDのお子さんの多くは、**「細部(ディテール)」**が先に飛び込んできます(局所視)。
通常、私たちは会話をする際、相手の顔に集中し、背景のポスターや窓の外の景色は「気にならない背景(ノイズ)」として処理します。
しかし、ASDのお子さんには、「視界に入るすべてのもの」が「主役」として同じ強さで飛び込んでくることがあります。
蛍光灯の光を「突き刺さるように痛い」と感じたり、人混みの動きを「襲ってくる波」のように感じたりすることがあります。
「目を見て話しなさい」というのは、学校や家庭でよく言われるしつけです。しかし、ASDのお子さんにとって、人の目を見ることは、私たちが想像する以上にハードルの高い行為です。
ここまで解説してきたように、ASDのお子さんが見せる「不可解な行動」の多くは、性格やしつけの問題ではなく、**「脳の感じ方・見え方の違い」**に起因しています。
彼らにとって、私たちが暮らす「普通の環境」は、常にまぶしすぎたり、うるさすぎたり、情報が多すぎたりする、非常に過酷なサバイバル環境である可能性があるのです。
それを「我慢が足りない」「努力で直せ」と言うのは、視力が悪い子に「気合で遠くを見ろ」と言うのと同じくらい酷なことかもしれません。
「本人の努力」ではなく、「環境の調整」こそが必要不可欠なのです。
では、具体的にどのような環境づくりや接し方が有効なのでしょうか?
難しく考える必要はありません。大切なのは、**「大人がほんの少し歩幅を合わせ、彼らの見ている世界の“解像度”に環境を調整する」**ことです。
ここでは、すぐに実践できる5つの柱をご紹介します。
一度にたくさんの情報を見せないことが鉄則です。
「ちゃんとして」「きれいに片付けて」という曖昧な言葉は、ASDの子には伝わりにくいものです。
集中してほしい場所(勉強机や教室の黒板周り)から、刺激を減らします。
刺激に耐えられなくなった時の対処法を用意します。
急な予定変更は、彼らの頭の中にある「映像(イメージ)」を崩壊させるため、強い苦痛を伴います。
「自閉症の診断はついていないけれど、もしかして特性があるのかも?」
そう感じた方は、以下のミニ・チェックを試してみてください。お子さんの「苦手」の正体が見えてくるかもしれません。
【自閉症の“見え方”チェックリスト】
★判定のヒント
上記の項目のうち、2つ以上に当てはまる場合、視力そのものに問題がなくても、「見え方の処理(視覚情報処理)」に特性がある可能性があります。
それはつまり、**「環境調整さえすれば、今よりもっと生きやすくなる」**というポジティブな発見でもあります。
「うちの子は、情報が入りすぎて困っていたんだ」
そう気づくだけで、親御さんのイライラは「どう工夫してあげようか」という前向きな思考に変わるはずです。
当クリニックはNIPT(新型出生前診断)を行っていますが、発達障害に関連してよくいただくご質問があります。
Q. NIPT(出生前診断)で、発達障害(ASDやADHD)はわかりますか?
A. 現時点では、基本的にわかりません。
NIPTは、赤ちゃんの染色体の数(21トリソミーなど)や構造の変化を調べる検査です。
一方で、自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなどの発達障害は、多くの遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合って発生するものであり、特定の染色体異常だけが原因ではありません。
したがって、現在の一般的なNIPT検査で「将来発達障害になるかどうか」を判定することはできません。
Q. 遺伝するのでしょうか? 親として責任を感じます。
A. 親御さんの育て方や愛情不足が原因ではありません。
ASDには遺伝的な要因が関与していることは分かっていますが、それは「親のせい」ということではありません。身長や体質が遺伝するように、脳のタイプの傾向が受け継がれることがある、という自然な現象です。
「私のせいで…」と自分を責めるよりも、「この子の脳のタイプには、どんな環境が合うのかな?」と、未来に向けた環境づくり(「メガネ」を選んであげるような感覚)にエネルギーを注ぐことが、お子さんの笑顔につながります。
本日は、「自閉スペクトラム症の子どもが見ている世界」について解説しました。
私たち大人にとっての「当たり前」は、彼らにとっての「当たり前」ではありません。
彼らは、情報の洪水のなかで、必死にバランスを取ろうと頑張っています。
大切なのは、彼らを無理やり「普通」の枠に当てはめることではありません。
「まぶしいなら、サングラスをかけよう」
「情報が多いなら、隠してあげよう」
そうやって、私たちが環境の側を調整し、世界の解像度を彼らに合わせてあげること。
それが、真の意味での「支援」です。
環境が変われば、行動が変わります。
行動が変われば、お子さんの表情が変わり、親子の笑顔が増えていきます。
「ちょっと気になるな」と思ったら、まずは今日ご紹介した小さな工夫から始めてみてください。
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