こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。
「なんとなく、子どもと目線が合いにくい気がする」
「絵本を読んでいるときの目の動きが、少しぎこちないかも?」
子育ての中で感じる、そんな“ささいな違和感”。
「まだ小さいから」「そのうちできるようになる」と自分に言い聞かせつつも、心のどこかで不安を感じているお母さん、お父さんは少なくありません。
もちろん、子どもの発達には大きな個人差があります。しかし、中にはその違和感が、発達障害や学習障害(LD)のサインであるケースも存在します。
実は、子どもの「目の動き」は、脳の発達と深くリンクしています。
「読み書きが苦手」「集中力がない」と誤解されがちな行動の裏には、実は視力(見え方)ではなく、**「視機能(目の使い方)」**の問題が隠れていることがあるのです。
今日は、子どもの視線からわかる“発達の気づき”と、家庭でできる具体的なサポート方法「ビジョントレーニング」について、実際の症例データも交えながら詳しく解説していきます。
「ふりがなを振っても一文字ずつしか読めない」
「カタカナは読めるのに、書くのが極端に苦手」
小学校に入学して授業が始まると、こうした悩みを持つ親御さんが増えてきます。
先生からは「もっと集中しましょう」「家で練習させてください」と言われ、子ども自身も一生懸命やっているのにできない……。その結果、「自分はダメなんだ」と自信を失ってしまう。これは非常に辛い悪循環です。
まず最初にお伝えしたいのは、これは決して「努力不足」ではないということです。
脳の情報処理の仕方や、「目の使い方」に特性があることで、文字の読み書きにつまずいている可能性があるのです。
ここで、ある男の子の事例をご紹介しましょう。
A君は小学2年生。通常の学級に通っており、学校の健康診断(視力検査など)では特に問題を指摘されていませんでした。しかし、授業が進むにつれて、読み書きの課題で深刻なつまずきが見られるようになりました。
「視力は良いはずなのに、なぜ?」
専門家による詳細なチェックを行った結果、A君の「認知特性」と「目の使い方」に、はっきりとした特徴があることが分かりました。
検査結果を見ると、A君には明確な「強み」と「弱み」がありました。
【強み(得意なこと)】
【弱み(苦手なこと)】
そして、学習のつまずきに直結していた最大の問題が、以下の「目の使い方」でした。
【視機能(目の使い方)の問題点】
A君にとって、教科書を読むことは、二重に見える文字を必死に追いかけ、迷子にならないように視線をコントロールし続けるという、過酷な作業だったのです。これでは内容を理解するどころではありません。
「集中力がない」のではなく、「見えにくさ」と戦っていたのです。
「目の使い方が悪いなら、どうすればいいの?」
そこで有効なのが、**『ビジョントレーニング』です。
これは、単に視力(1.0や1.5といった数値)を良くするものではなく、「見る力(入力)」「脳での処理(情報処理)」「体への出力(アウトプット)」**という一連の流れをスムーズにするためのトレーニングです。
家庭でも遊び感覚で取り入れられるものが多く、以下の3つのポイントを重点的に鍛えます。
【トレーニング例】
親指を立てて顔の前で動かし、顔を動かさずに目だけで追う「指追い運動」など。
【トレーニング例】
間違い探し、迷路、形合わせパズル、フラッシュカード(絵と文字をセットで覚える)など。
【トレーニング例】
お手本を見ながら図形を描き写す、キャッチボール、塗り絵(枠からはみ出さないように塗る)など。
「でも、そんな簡単なトレーニングで本当に変わるの?」
そう思われるかもしれません。しかし、継続的なトレーニングの効果はデータとして明確に現れています。
先ほどのA君のようなケースで行われた、6週間のビジョントレーニングの経過データを見てみましょう。
| 項目 | 実施前 | 2週間後 | 4週間後 | 6週間後 |
| 文字の認識 | 60% | 75% | 85% | 95% |
| 漢字の読み・書き | 40% | 55% | 70% | 85% |
| 行間ジャンプ | 50% | 65% | 80% | 90% |
| 目の動き | 55% | 70% | 80% | 90% |
(※数値は課題達成率やスムーズさの指標)
いかがでしょうか。
開始前は半分程度しかできていなかった課題が、6週間後には9割近くできるようになっています。
特に注目すべきは**「行間ジャンプ」と「目の動き」の改善です。目が思い通りに動くようになったことで、結果として「文字の認識」や「漢字の読み書き」のスコアも連動して上がっています。
これは、「見るための土台」が整ったことで、学習能力が開花した**ことを示しています。
さらに気になるのは、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)といった発達障害を持つお子さんへの効果です。
もちろん、ビジョントレーニングは発達障害そのものを「治す」治療法ではありません。しかし、発達障害に伴う「生きづらさ」や「学習の困難」を軽減する手段として、非常に大きな可能性を持っています。
ある研究では、読み書きに著しい困難を持つ小学2年生の男の子(発達特性あり)に対し、彼の「得意(見て真似る力)」を活かした個別支援とビジョントレーニングを行いました。
1回90分、計20回のトレーニングを約6ヶ月かけて行った結果は、驚くべきものでした。
| 項目 | 指導前 | 指導後 |
| カタカナ書き取り | 0% | 80% |
| 漢字読み取り | 16% | 95% |
| 音読(400字) | 測定不能(諦め) | 262秒(完読) |
指導前は、400字の文章を読むことすら苦痛で途中で諦めてしまっていた子が、半年後には最後まで読み切れるようになり、漢字の読み書きもほぼマスターしました。
この変化の理由は、単に「読むスピードが上がった」だけではありません。
目と脳の連携がスムーズになったことで、文字を一文字ずつの「点」ではなく、意味のある「線(文)」として捉えられるようになったのです。
意味が分かれば、読むことが楽しくなります。
「読めた!」「書けた!」という成功体験は、失いかけていた自信を取り戻させ、学習への意欲を劇的に向上させました。
研究でも推奨されている、家庭や学校で取り入れやすい具体的な工夫をご紹介します。
今日は、「子どもの目線の違和感」をテーマに、視機能と発達の関係についてお話ししました。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
1. 「見えにくさ」が隠れているかもしれない
読み書きが苦手、集中力がない、目線が合わない。その背景には、視力ではなく「目の使い方」の問題が隠れていることがあります。これは本人の努力不足ではありません。「見え方の違い」に気づいてあげることが、支援の第一歩です。
2. ビジョントレーニングで「土台」を作る
見る力、目の動き、目と体の連携を鍛えるビジョントレーニングは、学習の土台を作ります。家庭で遊び感覚で取り入れられる方法も多く、継続することで確実な変化が期待できます。
3. 「できた!」の経験が子どもを伸ばす
発達障害の特性があっても、適切なトレーニングと環境調整を行えば、読み書きの能力は大きく伸びます。できないことを叱るのではなく、学びやすい環境を整え、小さな成功体験を積み重ねさせてあげてください。
もし、お子さんの目の動きや学習の様子に「あれ?」と思うことがあれば、一度専門機関(眼科や発達支援センターなど)に相談してみるのも良いでしょう。
「見る力」を整えることは、単に勉強ができるようになるだけでなく、お子さんが世界をよりクリアに、安心して捉えられるようになるための、大切なプレゼントです。
焦らず、比べず、お子さんのペースで。
今日の気づきが、未来の笑顔につながることを願っています。
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