ダウン症の子を育てる家族の日常〜感動と学びの療育記録【YouTube解説】

■① 最初にぶつかる“育児の壁”

【質問者】
「生後すぐの医療ケアを経て、いよいよお家に帰るとなったとき、ご家族がまず直面するのはどんなことですか?」

【小児科医】
「“育てていけるのか”という不安ですね。ミルクの飲みが弱い、寝返りが遅い、手術後の経過観察がある…。
そういった不安が生活の中に溶け込んでいて、“普通の育児”と違うように感じることが多いです。
でも、“この子のペース”を少しずつ掴んでいくことで、不安は少しずつ“慣れ”に変わっていきます。」

【質問者】
「“違い”を受け入れるというより、“その子らしさに合わせていく”という感覚ですね。」


■② 優先順位

【質問者】
「その後の通院や療育のスケジュールも大変そうですね。」

【小児科医】
「本当にそうです。心臓、耳鼻科、眼科、整形外科、療育センター…気づけば“毎日どこかに行っている”というご家族も多いです。
“この子のため”と思って頑張っていた親御さんが、ふと“私、何やってるんだろう”と疲れてしまう瞬間がくるんです。」

【質問者】
「そういうとき、先生はどう対応されているんですか?」

【小児科医】
「“全部やらなくても大丈夫です”と伝えます。優先順位を一緒に整理して、“今はこの2つだけやってみましょう”と提案するだけで、肩の力が抜けることも多いんですよ。」


■③ ゆっくり育つ。その中での喜びと戸惑い  

【質問者】
「成長のペースがゆっくりな中で、ご家族はどんな感情を抱かれるのでしょうか?」

【小児科医】
「“周りの子と比べてしまう”というのは、誰もが通る道です。1歳でも歩けない、言葉が出ない…そうなると“このままでいいのか”と心配になります。
でもある日、“お兄ちゃんの真似をして拍手をしてくれた”とか、“指さしで“あれ!”って教えてくれた”とか。そういう小さな成長が、ものすごく嬉しいんです。」

【質問者】
「“できた”の喜びが、より大きく感じられるんですね。」

【小児科医】
「はい。周囲の基準じゃなくて、“この子にとっての一歩”を一緒に見つけていく。それが、家族みんなの喜びになっていくんです。」


■④ 保育園・地域との関わり 

【質問者】
「幼児期に入ってくると、保育園や地域との関わりも出てきますよね?」

【小児科医】
「はい。“受け入れてもらえるかな”“迷惑をかけないかな”という不安はとても大きいです。でも実際には、“この子がいるとクラスが優しくなる”と言ってくれる保育士さんもいます。
大人が考えるより、子どもたちの適応力って柔軟なんですよ。」

【質問者】
「医療と保育がちゃんと連携できているかも、大事ですよね。」

【小児科医】
「本当にそうです。特性や体調のことを伝えたうえで、“どう対応したらいいか”を保育現場と共有していく。そこをつなぐのが、医療者の役割だと思っています。」


■⑤ 家族の形と、周囲とのつながり

【質問者】
「最後に、“家族”という単位で見ると、どんな変化がありますか?」

【小児科医】
「きょうだいが“妹がしゃべれなくても、目で言ってるの分かるよ”って言ってくれたり、
おばあちゃんが療育に一緒に通ってくれたり…。
“うちの子の存在が、家族を一つにしてくれた”ってお母さんが涙ぐんで話してくださったこともありました。」

【質問者】
「“特別な存在”ではなく、“つなぐ存在”になっているんですね。」

【小児科医】
「はい。地域の人や医療者、保育士、支援者…たくさんの人がその子に関わる中で、まるで“ハブ”のような存在になるんです。
私たち医療者は、その子と社会を結ぶ“橋”でありたいと常に思っています。」