妊婦さんの飛行機搭乗ガイド!エコノミークラス症候群と放射線リスクを専門医が徹底解説【YouTube動画解説】

「妊婦さんの飛行機搭乗、時期ごとのリスク」

【質問】 

「先生、妊娠中に飛行機に乗るのって、やっぱり時期によって気をつけるべきことって変わるんですか?」

【先生】
「そうですね、妊娠の時期によって、飛行機に乗る際のリスクや注意点は大きく変わってきます。
 まずは、妊娠時期ごとの搭乗リスクを見ていきましょう。」

【先生】
妊娠初期(妊娠13週6日まで)
→ 自然流産の確率が比較的高い時期であり、飛行機の利用に関わらず起こり得る。
→ つわりの症状が出始める時期で、機内のゆれ、匂い、酸素濃度低下でつわりや貧血が悪化する可能性もある。

要素解説
つわりの時期一般的に妊娠5〜6週頃から始まり、8〜11週でピークを迎えることが多い。まさに妊娠初期の旅行で影響を受けやすい。
機内の揺れ乗り物酔いしやすい人は、揺れが吐き気や気分不快を悪化させる可能性あり。つわりと合併しやすい。
匂い妊娠初期は嗅覚が敏感になり、機内の食事・香料・消毒の匂いなどに反応して吐き気が悪化することがある。
酸素濃度機内は地上より酸素濃度がやや低く(標高2000〜2500m相当)、貧血気味の妊婦にとっては息苦しさや倦怠感を感じやすい。

この時期は、妊娠経過や体調に問題がない場合のみ、慎重に検討すべきである点を強調。

「妊娠初期の自然流産率」

年齢層流産
24歳以下16.7%
25〜29歳11.0%
30〜34歳10.0%
35〜39歳20.7%
40歳以上44.3%

✈️ 妊娠中期(14週0日〜27週6日)は飛行機移動に最も適した時期です

妊娠中に飛行機を利用する場合、**最も適しているのは「妊娠中期(14週0日〜27週6日)」**とされています。

この時期は、つわりが落ち着き、胎盤もしっかりと完成してくる比較的安定した時期です。多くの妊婦さんが体調の良さを実感できる時期であり、日常生活への支障も少なくなってくるため、移動や旅行を計画するには最適といえます。

✅ 妊娠中期が飛行機移動に向いている理由

  • つわりが軽減している:妊娠初期に比べて吐き気や体調不良が落ち着いているため、機内での不快感が少なく済みます。
  • 流産のリスクが低下している:胎盤が完成し、流産のリスクが大きく下がるため、移動によるリスクが相対的に低くなります。
  • お腹の大きさがまだ控えめ:妊娠後期に比べてお腹もあまり大きくないため、座席に座っているのも楽で、トイレ移動などもしやすいです。
  • 医師の移動許可が得られやすい:多くの医療機関でも、妊娠中期で経過が順調であれば、飛行機の利用を許可してくれるケースが多いです。

🏠 里帰り出産を予定している方へ

妊娠後期になると、お腹が大きくなり、早産や体調変化のリスクも高くなってきます。そのため、里帰り出産を考えている方は、妊娠中期のうちに移動を済ませることを強くおすすめします。

航空会社によっては、妊娠28週以降は診断書の提出や搭乗制限がある場合もあるため、早めの計画がとても重要です。


妊娠後期(妊娠28週~)
→ ほとんどの航空会社が【搭乗に条件を設けている時期】であること。
→ お腹が張りやすく、酸素濃度の低下によって子宮を圧迫する原因となる可能性。
→ 気圧の変化による【減圧症(めまい・しびれ・呼吸困難など)】を引き起こす可能性もあり、重症の場合は死に至るケースもあります

【質問者】
「やっぱり妊娠中期が一番安心なんですね!でも、航空会社によっても規定が違うんですか?」

「航空会社ごとの規定」

【先生】
「はい、その通りです。各航空会社で妊婦さんに対する規定が異なりますので、事前に確認しておくことが非常に重要です。」


【先生】
  ANA・JALの場合
→ 出産予定日28日~8日以内:【搭乗7日以内に発行された医師の診断書】が必要。
→ 出産予定日7日以内:診断書に加えて【医師の同行】が必要。
→ その他の航空会社(スカイマーク、ピーチなど)も、同様に診断書や医師・助産師の同行を求めるケースがあることを説明。

 → 事前に利用する航空会社のホームページを確認するか、直接問い合わせることを推奨。

「主要航空会社の妊婦搭乗規定(抜粋)」

航空会社出産予定日28〜8日以内出産予定日7日以内
ANA・JAL搭乗7日以内の診断書診断書+医師の同行
スカイマーク診断書診断書+医師または助産師の同行
ピーチ診断書(FAX送付)診断書送付+医師の同行

【質問】
「なるほど、診断書や医師の同行が必要になるんですね。でも、飛行機に乗ることでエコノミークラス症候群とか、気圧の変化って具体的にどういう影響があるんですか?」


「飛行機搭乗のリスクと対処法」

【先生】
「はい、ここからは、妊婦さんが飛行機に乗る際に考えられる具体的なリスクと、それに対する対処法をお話ししていきます。」

【先生】
エコノミークラス症候群になりやすい

 なぜ妊娠中は血液が固まりやすいのか?

✅ 出産時の出血に備えるため

  • 妊娠中の体は、出産で大量出血が起こる可能性に備えて、血液を固まりやすくする方向に変化します。
  • これにより、分娩時の出血を最小限に抑えるための「自然な防御反応」が働きます。

✅ 血液の凝固因子が増加する

  • 妊娠中は、血液中の**凝固因子(血を固めるタンパク質)**が増えます。
  • 同時に、**抗凝固作用(血を固めすぎないようにする働き)**が抑えられるため、血液全体として“固まりやすい”状態になります。

✅ 血流が滞りやすくなる

  • 子宮が大きくなると、骨盤周辺の静脈を圧迫し、下半身の血流がやや悪くなります。
  • 特に足や骨盤の静脈で血液の流れがゆっくりになるため、血栓ができやすくなります。

⚠️ 妊娠中に起こりやすい血栓症とは?

  • 深部静脈血栓症(DVT):足の静脈に血栓ができる。
  • 肺塞栓症(PE):その血栓が肺に飛んで詰まることで命に関わることも。


→ 妊娠中は血液が固まりやすいため、非妊娠時よりリスクが高い。
→ 血栓ができて足の腫れや痛み、重症化すると肺動脈などを塞ぐ危険性もある。
<対処法>水分をこまめにとる(炭酸飲料はNG)
30分に1回程度、足や身体を動かす(機内体操など)
ゆったりとした服を着る

気圧の変化による体調不良
→ 機内は気圧の変化と酸素濃度の低下がある。
→ 「つわりの悪化、子宮の圧迫、頭痛、頻尿」などのトラブルが考えられる。
→ <対処法> → 胸やお腹周りがゆったりとした服を着る。
→ トイレに行きやすい通路側の席を予約する
→ エチケット袋やマスクを用意する
胎児への影響は、客室乗務員の流産率が他の職業と大差ないことから、あまり心配ないと補足。

【質問者】
「エコノミークラス症候群、怖いですね…。でも、水分をこまめにとったり、体を動かしたりで予防できるんですね!あと、よく聞くのが金属探知機とか放射線の影響なんですけど、それは大丈夫なんでしょうか?」

「金属探知機・放射線は影響する?」
【先生】 

「その心配、よく耳にします。結論からお伝えすると【基本的に胎児への悪影響は心配ありません】。」

【先生】
金属探知機やボディースキャナーX線などの放射線は照射されていない
→ 母子ともに流産や奇形といった悪影響はないので安心。

金属探知機は、磁場(電磁波)を利用して金属の有無を検出しており、放射線は使用されていません。

ボディースキャナー(ミリ波スキャナー)は、人体に害のない**低出力の電波(ミリ波)**を使っており、胎児への影響はないとされています。

上空での放射線 → 上空は地上に比べて放射線量が高くなっているのは事実。
→ しかし、胎児に影響を与えるほどの被ばく量ではない
例として、東京からニューヨークまでの飛行機での放射線量は0.19ミリシーベルトで、年間浴びる自然放射線量(2.4ミリシーベルト)と比べても非常に少ないことを説明。

「放射線被ばく量の比較」

状況放射線量
自然放射線(年間)2.4ミリシーベルト
東京↔NY(片道飛行機)0.19ミリシーベルト
胎児にリスクが出る可能性のある線量100ミリシーベルト

【質問者】
「そうだったんですね!影響がないと聞いて安心しました。これで、金属探知機も怖がらずに通れますね!」

【先生】
「そうですね。妊娠中の飛行機の利用は、胎児よりも母体への影響が心配されます。安全に出産の日を迎えられるように、妊娠の経過や体調を考慮して、医師と相談しながら慎重に決めてくださいね。」