「妊婦さんの飛行機搭乗、時期ごとのリスク」
【質問】
「先生、妊娠中に飛行機に乗るのって、やっぱり時期によって気をつけるべきことって変わるんですか?」
【先生】
「そうですね、妊娠の時期によって、飛行機に乗る際のリスクや注意点は大きく変わってきます。
まずは、妊娠時期ごとの搭乗リスクを見ていきましょう。」
【先生】
妊娠初期(妊娠13週6日まで)
→ 自然流産の確率が比較的高い時期であり、飛行機の利用に関わらず起こり得る。
→ つわりの症状が出始める時期で、機内のゆれ、匂い、酸素濃度低下でつわりや貧血が悪化する可能性もある。
| 要素 | 解説 |
| つわりの時期 | 一般的に妊娠5〜6週頃から始まり、8〜11週でピークを迎えることが多い。まさに妊娠初期の旅行で影響を受けやすい。 |
| 機内の揺れ | 乗り物酔いしやすい人は、揺れが吐き気や気分不快を悪化させる可能性あり。つわりと合併しやすい。 |
| 匂い | 妊娠初期は嗅覚が敏感になり、機内の食事・香料・消毒の匂いなどに反応して吐き気が悪化することがある。 |
| 酸素濃度 | 機内は地上より酸素濃度がやや低く(標高2000〜2500m相当)、貧血気味の妊婦にとっては息苦しさや倦怠感を感じやすい。 |
この時期は、妊娠経過や体調に問題がない場合のみ、慎重に検討すべきである点を強調。
「妊娠初期の自然流産率」
| 年齢層 | 流産率 |
| 24歳以下 | 16.7% |
| 25〜29歳 | 11.0% |
| 30〜34歳 | 10.0% |
| 35〜39歳 | 20.7% |
| 40歳以上 | 44.3% |
妊娠中に飛行機を利用する場合、**最も適しているのは「妊娠中期(14週0日〜27週6日)」**とされています。
この時期は、つわりが落ち着き、胎盤もしっかりと完成してくる比較的安定した時期です。多くの妊婦さんが体調の良さを実感できる時期であり、日常生活への支障も少なくなってくるため、移動や旅行を計画するには最適といえます。
妊娠後期になると、お腹が大きくなり、早産や体調変化のリスクも高くなってきます。そのため、里帰り出産を考えている方は、妊娠中期のうちに移動を済ませることを強くおすすめします。
航空会社によっては、妊娠28週以降は診断書の提出や搭乗制限がある場合もあるため、早めの計画がとても重要です。
妊娠後期(妊娠28週~)
→ ほとんどの航空会社が【搭乗に条件を設けている時期】であること。
→ お腹が張りやすく、酸素濃度の低下によって子宮を圧迫する原因となる可能性。
→ 気圧の変化による【減圧症(めまい・しびれ・呼吸困難など)】を引き起こす可能性もあり、重症の場合は死に至るケースもあります。
【質問者】
「やっぱり妊娠中期が一番安心なんですね!でも、航空会社によっても規定が違うんですか?」
「航空会社ごとの規定」
【先生】
「はい、その通りです。各航空会社で妊婦さんに対する規定が異なりますので、事前に確認しておくことが非常に重要です。」
【先生】
ANA・JALの場合
→ 出産予定日28日~8日以内:【搭乗7日以内に発行された医師の診断書】が必要。
→ 出産予定日7日以内:診断書に加えて【医師の同行】が必要。
→ その他の航空会社(スカイマーク、ピーチなど)も、同様に診断書や医師・助産師の同行を求めるケースがあることを説明。
→ 事前に利用する航空会社のホームページを確認するか、直接問い合わせることを推奨。
「主要航空会社の妊婦搭乗規定(抜粋)」
| 航空会社 | 出産予定日28〜8日以内 | 出産予定日7日以内 |
| ANA・JAL | 搭乗7日以内の診断書 | 診断書+医師の同行 |
| スカイマーク | 診断書 | 診断書+医師または助産師の同行 |
| ピーチ | 診断書(FAX送付) | 診断書送付+医師の同行 |
【質問】
「なるほど、診断書や医師の同行が必要になるんですね。でも、飛行機に乗ることでエコノミークラス症候群とか、気圧の変化って具体的にどういう影響があるんですか?」
「飛行機搭乗のリスクと対処法」
【先生】
「はい、ここからは、妊婦さんが飛行機に乗る際に考えられる具体的なリスクと、それに対する対処法をお話ししていきます。」
【先生】
エコノミークラス症候群になりやすい
→ 妊娠中は血液が固まりやすいため、非妊娠時よりリスクが高い。
→ 血栓ができて足の腫れや痛み、重症化すると肺動脈などを塞ぐ危険性もある。
→ <対処法> → 水分をこまめにとる(炭酸飲料はNG)
→ 30分に1回程度、足や身体を動かす(機内体操など)
→ ゆったりとした服を着る。
気圧の変化による体調不良
→ 機内は気圧の変化と酸素濃度の低下がある。
→ 「つわりの悪化、子宮の圧迫、頭痛、頻尿」などのトラブルが考えられる。
→ <対処法> → 胸やお腹周りがゆったりとした服を着る。
→ トイレに行きやすい通路側の席を予約する
→ エチケット袋やマスクを用意する
胎児への影響は、客室乗務員の流産率が他の職業と大差ないことから、あまり心配ないと補足。
【質問者】
「エコノミークラス症候群、怖いですね…。でも、水分をこまめにとったり、体を動かしたりで予防できるんですね!あと、よく聞くのが金属探知機とか放射線の影響なんですけど、それは大丈夫なんでしょうか?」
「金属探知機・放射線は影響する?」
【先生】
「その心配、よく耳にします。結論からお伝えすると【基本的に胎児への悪影響は心配ありません】。」
【先生】
→ 金属探知機やボディースキャナー → X線などの放射線は照射されていない
→ 母子ともに流産や奇形といった悪影響はないので安心。
金属探知機は、磁場(電磁波)を利用して金属の有無を検出しており、放射線は使用されていません。
ボディースキャナー(ミリ波スキャナー)は、人体に害のない**低出力の電波(ミリ波)**を使っており、胎児への影響はないとされています。
→ 上空での放射線 → 上空は地上に比べて放射線量が高くなっているのは事実。
→ しかし、胎児に影響を与えるほどの被ばく量ではない。
→ 例として、東京からニューヨークまでの飛行機での放射線量は0.19ミリシーベルトで、年間浴びる自然放射線量(2.4ミリシーベルト)と比べても非常に少ないことを説明。
「放射線被ばく量の比較」
| 状況 | 放射線量 |
| 自然放射線(年間) | 2.4ミリシーベルト |
| 東京↔NY(片道飛行機) | 0.19ミリシーベルト |
| 胎児にリスクが出る可能性のある線量 | 100ミリシーベルト |
【質問者】
「そうだったんですね!影響がないと聞いて安心しました。これで、金属探知機も怖がらずに通れますね!」
【先生】
「そうですね。妊娠中の飛行機の利用は、胎児よりも母体への影響が心配されます。安全に出産の日を迎えられるように、妊娠の経過や体調を考慮して、医師と相談しながら慎重に決めてくださいね。」
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