「男の子かな? 女の子かな?」
妊娠中の楽しみの一つといえば、赤ちゃんの性別を知ることですよね。
最近では、「ジェンダーリビールケーキ」でサプライズ発表するなど、性別判明をイベントとして楽しむカップルも増えています。
そんな中、「NIPT(新型出生前診断)なら、妊娠初期から性別が分かる」という話を聞いたことはありませんか?
一般的にエコー検査で性別が分かるのは妊娠20週前後と言われますが、NIPTなら妊娠10週頃から、しかも高い精度で分かると言われています。
「そんなに早く分かるなら、名前もベビーグッズも早く準備できる!」とワクワクする反面、「本当に当たるの?」「外れることはないの?」と不安に思う方もいるでしょう。
実は、NIPTの性別判定には、知っておくべき**「精度の裏側」と、医師だからこそ知る「意外な落とし穴」**が存在します。
今回は、NIPTの専門医であるヒロクリニック・岡弘医師の解説を元に、NIPTによる性別判定のメカニズムから、万が一「結果と違った」場合に考えられる驚きの理由まで、包み隠さずお伝えします。
まず、お母さんの腕から採血するだけで、なぜお腹の赤ちゃんの性別が分かるのでしょうか?
その仕組みは、**「染色体(DNA)」**にあります。
人間の性別は、2本の「性染色体」の組み合わせで決まります。
妊娠中のお母さんの血液中には、胎盤を通じて赤ちゃんのDNA断片がわずかに漏れ出ています。NIPTは、この微量なDNAを分析し、**「Y染色体が含まれているかどうか」**をチェックします。
この遺伝子レベルでの検査は非常に正確で、岡医師によると**「99.9%以上の精度」**を誇ります。エコー検査のように「赤ちゃんの足が閉じていて見えない」「へその緒が邪魔で見えにくい」といった物理的な条件に左右されないため、早期かつ確実に性別を知ることができるのです。
そう思うのは当然ですが、実は日本の認可施設(日本医学会認定の施設)で行われるNIPTでは、原則として性別は通知されません。
これには主に2つの理由があります。
世界的に見ると、性別判定の結果によって「男の子なら産む、女の子なら中絶する」といった命の選別が行われてきた歴史があります(特に一人っ子政策時代の中国など)。日本でも、そうした「安易な産み分け」を防ぐため、日本産科婦人科学会の指針により、性別の開示は行わない運用となっています。
NIPTの本来の目的は、性別を知ることではなく、染色体の数の異常(ダウン症など)を調べることです。
性染色体(XとY)を調べるのも、本来は「ターナー症候群(Xが1本しかない)」や「クラインフェルター症候群(XXY)」といった、性染色体の異常を見つけるためです。その過程で「副産物」として性別が分かってしまうだけなのです。
そのため、一般的な産婦人科や認可施設では、性染色体の検査自体を行わないか、行ったとしても性別については「お答えできません」とされることがほとんどです。
ヒロクリニックのような認可外の専門施設では、ご両親のニーズに応えて性別を開示していますが、あくまで「本来の目的ではない」という点は理解しておく必要があります。
「精度99.9%」とお伝えしましたが、医学に100%はありません。
岡医師によると、実際に6万人以上の検査を行ってきた中で、ごくわずか(2万人に1人程度)ですが、**「NIPTの結果と、生まれてきた赤ちゃんの見た目の性別が違った」**というケースが存在したそうです。
「検査ミスでは?」「検体を取り違えたのでは?」
真っ先にそう疑いたくなりますが、バーコード管理された現代の検査システムで取り違えが起こる可能性はほぼゼロです。
では、なぜそんなことが起こるのでしょうか? 考えられる主な原因は3つあります。
これが最も医学的に重要なケースです。
遺伝子的には「XY(男の子)」であり、精巣も持っているのですが、男性ホルモンを受け取るための「受容体(レセプター)」が壊れている、あるいはホルモンがうまく作られないという体質の場合です。
この場合、体は男性ホルモンの影響を受けられないため、見た目が「女の子」として成長します。
NIPTでは「Y染色体があるから男の子」と判定されますが、生まれてきた赤ちゃんは外見上「女の子」に見えるため、「結果が違った!」となるわけです。
これは単なる判定ミスではなく、赤ちゃんが持つ体質や疾患がいち早く見つかったということを意味します。この場合、将来的な不妊や健康管理のために、専門的な医療フォローが必要になります。
非常に稀ですが、お母さん自身が過去に骨髄移植や臓器移植を受けていた場合です。
もしドナー(提供者)が男性だった場合、お母さんの血液中にドナー由来の「Y染色体」が混ざっていることがあります。すると、赤ちゃんが女の子であっても、NIPTでは「Y染色体あり=男の子」と誤判定されてしまうことがあります。
双子を妊娠している場合、NIPTの性別判定には限界があります。
血液中にY染色体が見つかったとしても、**「2人のうち少なくとも1人は男の子」**ということしか分かりません。「男の子2人」なのか「男の子と女の子のペア」なのかまでは区別できないのです。
また、Y染色体がなければ「女の子2人」であることは分かります。
最近はインターネットなどで、数万円程度で手軽にできる「性別判定キット」も販売されています。これらとNIPTは何が違うのでしょうか?
簡易キットの多くは、「Y染色体があるかないか」だけを調べるシンプルなものです。
一方、NIPT(特に全染色体検査)は、単に性別を見るだけでなく、性染色体の数の異常(ターナー症候群など)も含めて総合的にチェックします。
例えば、簡易キットで「男の子」と出ても、実は「XXY(クラインフェルター症候群)」という疾患である可能性もゼロではありません。NIPTであれば、こうした染色体の本数の異常まで正確に把握できるため、情報の「質」と「深さ」が全く異なります。
「性別が分かれば、名前も決めやすいし、ベビー服も揃えられる」
これは多くのプレパパ・ママの本音でしょう。
岡医師も、「性別を知ることは、ご両親にとって育児の準備を進める上で非常に大きな助けになる」と肯定的に捉えています。
一方で、「生まれるまでのお楽しみにしたい」というご夫婦もいらっしゃいます。
ヒロクリニックでは、そうしたニーズにも対応し、染色体の病気については検査しつつ、**「性別だけは報告書に載せない(隠す)」**という対応も行っているそうです。
「知りたい派」も「知りたくない派」も、それぞれの価値観を大切にできるのが、自由診療であるNIPTのメリットとも言えるでしょう。
NIPTによる性別判定は、99.9%という驚異的な精度を誇ります。
しかし、今回解説したように、ごく稀に「遺伝子の性別」と「見た目の性別」が一致しないケースが存在します。
もしNIPTで「男の子」と言われていたのに、エコーで「女の子かも?」と言われたり、生まれてきた赤ちゃんが女の子だったりした場合、それは単なる「ハズレ」ではなく、赤ちゃんの体に隠された重要なメッセージかもしれません。その時は慌てず、医師に相談して染色体検査などを受けることをお勧めします。
性別が分かることは、新しい家族を迎える準備のワクワクする第一歩。
でも、100%ではないという「医学の限界」も頭の片隅に置きつつ、男の子でも女の子でも、あるいはそのどちらでもない個性を持っていたとしても、目の前の命を全力で愛してあげる準備をしておきたいですね。
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