こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。
NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。
妊娠中、特に初期の段階で「放射線(レントゲンなど)」を避けるべきだということは、多くの方がご存知だと思います。
しかし、「妊娠していない時」ならどうでしょうか?
健康診断のオプションや、ちょっとした不調での検査。
「まだ妊娠していないから大丈夫」と、気軽にCT検査を受けてはいませんか?
実は最近、国際的な医学研究において、**「妊娠前のCT検査が、その後の流産や先天異常のリスクを高める可能性がある」**という衝撃的なデータが発表されました。
「えっ、妊娠前でも影響するの?」
「来週CTの予約をしているんだけど……」
不安を感じた方もいらっしゃるかもしれません。
今日は、この最新の研究データをもとに、CT検査がなぜ妊娠前の体にも影響するのか、そして飛行機などの日常的な放射線との違いについて、分かりやすく解説していきます。
正しい知識で、あなたの体と未来の赤ちゃんを守りましょう。
まず、CT検査がどれくらいの放射線量を持っているのか、具体的な数字で見ていきましょう。
「レントゲン」と「CT」は混同されがちですが、被ばく量には大きな差があります。
私たちが日常生活を送る中で、健康に影響がないとされる被ばく線量の目安(公衆被ばく線量限度)は、**年間1ミリシーベルト(mSv)**とされています。
これに対して、1回のCT検査で受ける線量は以下の通りです。
| 部位 | 1回あたりの実効線量(平均) |
| 胸部CT | 5〜7 mSv |
| 腹部CT | 6〜10 mSv |
| 全身CT(胸〜骨盤) | 10〜20 mSv |
いかがでしょうか。
たった1回の全身CTで、一般の人が1年間に浴びて良いとされる量の10倍〜20倍もの放射線を浴びることになります。
レントゲン(胸部X線)が約0.06mSv程度であることを考えると、CTの線量がいかに高いかが分かります。
「放射線は浴びた瞬間に消えるものじゃないの?」
そう思われるかもしれませんが、問題は**「卵子へのダメージ」**です。
精子は毎日新しく作られますが、卵子はあなたが生まれた時から卵巣の中にずっと保管されている細胞です。新しく作られることはありません。
そのため、過去に浴びた強い放射線の影響が、卵子のDNAに傷(ダメージ)として蓄積される可能性があります。
もし、排卵直前の卵子がCTによる強い放射線を受けてしまったら。
そのダメージが修復されずに受精した場合、受精卵の成長や遺伝情報に影響を及ぼすリスクがある──これが、妊娠前でも注意が必要な医学的な理由です。
では実際に、どれくらいのリスクがあるのでしょうか?
2023年、国際的な医学誌『JAMA Network Open』に掲載された、カナダ・オンタリオ州の大規模研究(1992〜2023年、約514万件の妊娠データ)の結果をご紹介します。
この研究では、妊娠推定日の4週間以内にCT検査を受けた女性において、流産や先天異常のリスクが上昇する傾向が見られました。
【流産リスクの上昇】
CTを受けていないグループと比較して、CTを受けたグループでは以下のように流産率が増加しました。
| CT受検回数 | 流産件数(/1000件) | 増加率(対照群比) |
| 0回(なし) | 101件 | ― |
| 1回 | 117件 | 約 +8% |
| 2回 | 130件 | 約 +14% |
| 3回以上 | 142件 | 約 +19% |
「1回受けただけで約8%増える」という結果は、決して無視できる数字ではありません。
さらに、回数が増えるほどリスクが段階的に上がっている(用量反応関係がある)ことも、放射線の影響であることを強く示唆しています。
特に、**腹部・骨盤・腰(生殖器に近い部位)**のCTを受けた場合や、検査日が妊娠成立に近いほど、リスクが高まる傾向が見られました。
流産だけでなく、生まれた赤ちゃんの先天異常(奇形など)についても、わずかながら増加傾向が確認されました。
| CT受検回数 | 先天異常件数(/1000件) |
| 0回(なし) | 62件 |
| 1回 | 84件 |
| 2回 | 96件 |
| 3回以上 | 105件 |
もちろん、CTを受けたからといって必ず異常が出るわけではありません。多くの赤ちゃんは元気に生まれています。
しかし、統計的に見れば「リスクの底上げ」が起きていることは事実です。
医療において「ベネフィット(利益)」が「リスク」を上回る場合(命に関わる病気の診断など)を除けば、妊娠を希望する時期のCT検査は慎重になるべきだと言えるでしょう。
ここでよくある質問についても触れておきましょう。
「CTがダメなら、飛行機も危ないですか?」
年末年始やハネムーンで海外旅行を計画している方も多いと思います。
地上よりもはるかに高い場所を飛ぶ飛行機では、宇宙から降り注ぐ「宇宙線」の影響で、微量の放射線を浴びることになります。
しかし、その量はCT検査とは桁違いに少ないものです。
【主な路線の被ばく線量(片道)】
※北極に近いルートほど地磁気の影響で線量が高くなり、赤道に近いほど低くなる傾向があります。
一番高いニューヨーク便(往復)でも、合計で約0.2〜0.4mSv程度です。
これはCT検査1回分(約10mSv)の数十分の1〜数百分の1に過ぎません。
毎日空を飛んでいるパイロットや客室乗務員の方々でも、健康被害や妊娠への悪影響は報告されていません(EUの基準でも問題なしとされています)。
ですから、たまの海外旅行や帰省で飛行機に乗ることを過度に心配する必要はありません。リフレッシュのために、安心して旅を楽しんでください。
今回のデータを受けて、私たちができる対策はシンプルです。
**「不要不急のCT検査は避ける、またはタイミングを考える」**ことです。
もし、妊娠を計画している時期に、健康診断やちょっとした怪我などでCT検査を勧められたら、必ずこう伝えてください。
「現在、妊娠を希望しており、妊娠している可能性がゼロではありません」
医師は、被ばくのないMRIや超音波検査(エコー)など、代替の検査方法がないかを検討してくれます。
もちろん、交通事故や脳出血の疑いなど、緊急で命に関わる場合はCTが最優先です。その時は迷わず受けてください。お母さんの命が何より大切だからです。
しかし、「念のため撮っておきましょうか」という程度の検査であれば、時期をずらしたり、別の方法を選んだりする選択肢があります。
その選択が、未来の赤ちゃんを守ることにつながるのです。
今日は、妊娠前のCT検査とリスクについて、最新の研究データをもとにお話ししました。
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
1. 妊娠前のCTにもリスクがある
妊娠前4週間以内のCT検査は、流産や先天異常のリスクをわずかに高める可能性があります。卵子への放射線ダメージが原因と考えられます。
2. CTの線量は高い
1回のCTで、年間の許容線量の10〜20倍の放射線を浴びることがあります。特に腹部や骨盤への照射は、生殖細胞への影響が大きいです。
3. 飛行機は心配ない
飛行機での被ばく線量はごく微量です。旅行を我慢する必要はありません。
4. 医師とのコミュニケーションが鍵
検査が必要になった時は、妊娠の希望や可能性を必ず医師に伝えましょう。より安全な選択肢を一緒に探すことができます。
「知らなかった」で後悔しないために。
そして、過度な不安に振り回されず、正しい知識で自分と赤ちゃんを守るために。
今日の情報が、あなたの賢い選択の助けになれば嬉しいです。
これからも、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にするために、正しい医療情報をお届けしていきます。
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