「いじめられやすい性格」は遺伝する? 脳科学と心理学が明かす、子どもを守るために親ができること【YouTube解説】

こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。

NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けするコラムへようこそ。

「うちの子、ちょっと気が弱くて心配……」

「学校で一人ぼっちになっていないかな?」

子どもが集団生活を始めると、親御さんの心配は尽きません。

特に「いじめ」の問題は、どの親にとっても大きな不安の種です。

できることなら、我が子にはいじめられることなく、たくさんの友達に囲まれて楽しく過ごしてほしいと願うのは当然のことです。

しかし、残酷な現実として、集団の中には「いじめの標的になりやすい子」と「なりにくい子」が存在します。

その違いは何なのでしょうか?

実は、近年の研究によって、「いじめられやすさ」には、生まれ持った性格の傾向、つまり遺伝的な要素が関係している可能性があることが分かってきました。

「遺伝って、生まれつき決まっているの?」

「親の育て方じゃないの?」

そう不安になるかもしれませんが、ご安心ください。遺伝はあくまで「傾向」であり、決定事項ではありません。

本日は、いじめられやすい子に共通する性格の特徴や、意外と知られていない「遺伝と脳」の関係、そしてリスクを乗り越えるために親ができる具体的な関わり方について、科学的な視点から紐解いていきます。


1. 狙われやすい性格の正体。「ビッグ・ファイブ」から読み解く

まず、「いじめられやすい性格」とは具体的にどのようなものでしょうか。

これは決して、被害者に落ち度があるという意味ではありません。しかし、トラブルに巻き込まれやすい「傾向」を知ることは、子どもを守るための重要な手がかりになります。

心理学の世界では、人の性格を5つの要素で捉える**「ビッグ・ファイブ性格特性」**というモデルが広く使われています。

この中で、いじめ被害との関連が特に強いとされるのが以下の3つの特性です。

① 神経症傾向(不安を感じやすい)

ちょっとしたことで動揺したり、緊張したり、感情が不安定になりやすいタイプです。

周囲の反応に敏感すぎるあまり、些細なからかいにも過剰に反応して傷ついてしまいます。いじめっ子からすると「反応が面白い」「いじりがいがある」と認識されやすく、ターゲットにされやすい傾向があります。

2025年の最新の研究(Southwest University, Linghan Sunら)でも、神経症傾向が高い子どもほどいじめ被害に遭いやすいことが報告されています。

② 協調性が高すぎる(NOが言えない)

一見すると「優しくていい子」ですが、行き過ぎるとリスクになります。

争いを避けるあまり、理不尽な要求にも「NO」と言えず、自分の意見を飲み込んでしまいます。いじめられても言い返せず、大人にも助けを求められないため、エスカレートしやすいのです。

(参考:Diepenhorst et al., 2014)

③ 外向性が低い(内向的で孤立しやすい)

集団の中で自分から話しかけるのが苦手で、一人でいることを好むタイプです。

もちろん内向的であること自体は悪いことではありませんが、集団の中で孤立していると、いじめっ子にとっては「攻撃しても守ってくれる仲間がいない」と認識され、格好の標的になってしまうことがあります。

(参考:Calvete et al., 2016)


2. 性格の50%は遺伝? 脳内物質と遺伝子の関係

では、こうした性格はどのように形成されるのでしょうか?

「私の育て方が悪かったから、気が弱い子になったの?」と自分を責める必要はありません。

行動遺伝学の研究によると、性格の約40〜50%は遺伝の影響を受けるとされています。

脳内物質の「運び屋」と「分解役」

私たちの性格や感情の反応には、脳内の神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)が深く関わっています。そして、これらの物質の働き方を決める遺伝子には、生まれつきの個人差(タイプ)があるのです。

  • セロトニン(安心・安定)と「5-HTTLPR」
    セロトニンを運ぶ遺伝子には「傷つきやすいタイプ(S型)」と「おおらかなタイプ(L型)」があります。日本人はS型を持つ割合が高く、不安を感じやすい傾向があると言われています。
  • ドーパミン(やる気・快感)と「COMT遺伝子」
    ドーパミンを分解する酵素の遺伝子です。分解が遅いタイプだと、ドーパミンが長く脳内に留まるため、ストレスや感情の刺激に対して敏感に反応しやすくなります。

つまり、「すぐに不安になる」「傷つきやすい」といった気質の半分は、脳のハードウェア(遺伝子)の特性である可能性があるのです。


3. 遺伝は変えられない? いいえ、環境がカギです

「遺伝で決まっているなら、もうどうしようもないの?」

そう絶望するのは早計です。遺伝子はあくまで「設計図」に過ぎません。その設計図をどう使い、どんな建物を建てるかは、環境(育て方)次第で大きく変わります。

2014年の研究(Kanherkarら)でも、**「遺伝=変えられない運命ではない」**と明言されています。

生まれ持った気質を理解し、それに合った関わり方をすることで、弱みを強みに変え、いじめられにくい心を育てることは十分に可能です。


4. 子どもを守る「心の盾」を作る、親の3つの習慣

では、具体的に親はどう関われば良いのでしょうか?

遺伝的なリスク(不安になりやすい等)を持っていたとしても、それを乗り越えさせる最強の環境、それが**「家庭という安全基地」**です。

① 「愛着」という絶対的な安心感

イギリスの精神科医ボウルビィらが提唱した「愛着理論」をご存知でしょうか。

子どもが不安な時に親が適切に応答することで、「自分は守られている」「困った時は助けてもらえる」という信頼感(内的作業モデル)が育ちます。

この安心感こそが、いじめに対する最大の防御壁になります。

「何かあってもお母さん(お父さん)が助けてくれる」と信じている子は、いざという時に「やめて」と言えたり、すぐに大人に相談できたりします。

逆に、親の顔色を伺っている子は、外でもビクビクしてしまい、いじめのターゲットになりやすいのです。

② 親の「背中」が教科書になる

カナダの心理学者バンデューラの「社会的学習理論」によれば、子どもは親の言動を見て対人関係を学びます。

  • 親が楽しそうに人と関わっている
    → 子どもは「人は信頼できるものだ」と学び、外の世界にも安心して踏み出せます。
  • 親が他人を批判したり、避けてばかりいる
    → 子どもは「人は怖いものだ」「関わらない方がいい」と学び、孤立しやすくなります。

また、親が失敗した時に「ごめんね」と素直に謝る姿を見せることも重要です。「間違えても大丈夫」「修正できる」という感覚は、子どもの自己肯定感を高め、失敗を恐れずに堂々と振る舞う力につながります。

③ 「支配」ではなく「受容」を

「なんで言い返さないの!」「もっとしっかりしなさい!」

不安なあまり、つい子どもを責めていませんか?

これを「心理的統制」と言い、親が感情で子どもを支配しようとする行為です。これを繰り返すと、子どもは「自分はダメな人間だ」と思い込み、ますます自信を失ってしまいます。

いじめられやすい(繊細な)子に必要なのは、叱咤激励ではありません。

「怖かったね」「嫌だったね」と、まずはその感情を丸ごと受け止める(受容する)ことです。

家庭が「どんな自分でも受け入れてもらえる場所」であれば、外で辛いことがあっても、子どもは心折れずに回復することができます。


本日のまとめ

今日は、「いじめられやすい性格」と遺伝、そして親の関わり方について解説しました。

最後に、大切なポイントを振り返りましょう。

1. いじめられやすさには「遺伝的傾向」がある

不安になりやすい(神経症傾向)、NOと言えない(協調性が高すぎる)といった性格の約50%は遺伝の影響を受けています。これは本人の弱さではなく、脳の特性です。

2. 遺伝は「運命」ではない

遺伝子はあくまで傾向です。親との関わりや環境次第で、その特性をポジティブな方向へ導くことができます。

3. 「安全基地」を作ることが最大の防御

「自分は愛されている」「困ったら助けてもらえる」という安心感が、子どもの心の盾になります。親が子どもの感情を受け止め、信頼関係を築くことが、いじめ被害を防ぐ(あるいは深刻化させない)ための一番の近道です。

もし、お子さんが繊細で心配な性格だったとしても、焦る必要はありません。

その繊細さは、「人の痛みがわかる優しさ」や「慎重に物事を考える力」という素晴らしい才能の裏返しでもあります。

無理に強くしようとするのではなく、その子のペースを大切にしながら、一番の味方でいてあげてください。

親御さんの温かい眼差しと、家庭という安全な港があれば、子どもは必ず自分の力で荒波を乗り越えていけます。

これからも、未来のあなたと赤ちゃん、そして成長していくお子さんが笑顔で過ごせるよう、医学的な情報でお手伝いさせていただきます。