レチノイドとレチノールの違いと妊娠禁忌の重要性を徹底解説【YouTube解説】

こんにちは、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする「おかひろし」です。

妊娠中、ホルモンバランスの変化で肌荒れに悩み、「いつものスキンケア」を使い続けていませんか?

特に、エイジングケアやニキビケアに関心のある方の間で、圧倒的な人気を誇る成分があります。

それが**「レチノール(レチ〇〇)」**です。

「肌がつるつるになる」「シワに効く」と評判ですが、実は妊娠中、この成分には**「使ってはいけない重大な理由」**があります。

知らずに使い続けると、お腹の赤ちゃんの形や成長に深刻な影響(先天異常)を与えてしまうリスクがあるのです。

今回は、美容と安全の狭間で悩むママたちのために、なぜ妊娠中に「レチ〇〇」が危険なのか、そして**絶対に見落としてはいけない「ある薬」**について、医師の視点で徹底解説します。


1. そもそも「レチ〇〇」とは何か?

今回テーマにする成分は、**「レチノール」「レチナール」「レチノイン酸」**の総称です。

これらはすべて「ビタミンA」の仲間(誘導体)ですが、体の中での働き方や強さが異なります。

体内で変わる「一方通行」のスイッチ

ビタミンAは、体内で以下のように姿を変えていきます。

  1. レチノール(Retinol):化粧品によく配合されています。
  2. レチナール(Retinal):レチノールが変化したもの。
  3. レチノイン酸(Retinoic acid):最終的な活性型。ここが重要です。

この変化は一方通行です。最終形の「レチノイン酸」になると、もう元のレチノールには戻れません。そして、この「レチノイン酸」こそが、遺伝子に直接働きかける強力なスイッチとなるのです。


2. なぜ妊娠中に使ってはいけないの? 「レチノイド胎児症」の恐怖

「ビタミンAなら栄養だから体に良いのでは?」と思うかもしれません。確かに適量は必要ですが、過剰な「レチノイン酸」は、胎児にとって毒になります。

妊娠初期、赤ちゃんは細胞分裂を繰り返し、心臓や耳、脳などの臓器を作っている真っ最中です。

レチノイン酸は、体内で「どの細胞が、どの臓器になるか」を決める司令塔のような役割を持っています。

もし、外からレチノイン酸(または体内でレチノイン酸に変わるレチノールなど)が過剰に入ってくると、この司令塔が誤作動を起こし、設計図通りに体が作れなくなってしまいます。これを**「レチノイド胎児症」**と呼びます。

【報告されている主なリスク】

  • 耳の変形・欠損(小耳症など)
  • 心臓の奇形(大血管転位など)
  • 中枢神経(脳)の発達異常
  • 口唇裂・口蓋裂
  • 流産・死産

これらのリスクがあるため、アメリカのFDA(食品医薬品局)は、レチノイン酸を**「カテゴリーX(妊娠中は禁忌=絶対に使ってはいけない)」**に指定しています。


3. 化粧品と医薬品、どこまでが危険?

「使ってはいけない」と言われても、市販の化粧品から処方薬まで様々です。危険度のレベルを整理しましょう。

① 化粧品・ドクターズコスメ(レチノール・レチナール配合)

ドラッグストアやデパートで買える「レチノール入り美容液」や「アイクリーム」などが該当します。

医薬品に比べれば作用は穏やかで、皮膚からの吸収量も限定的と言われています。

しかし、「絶対に安全」という保証はありません。

たとえ微量であっても、皮膚から吸収されて体内でレチノイン酸に変換される可能性がある以上、「妊娠中は使用を中止する」のが医学的な正解です。美容も大切ですが、この期間だけは、赤ちゃんのリスクをゼロにすることを最優先にしてください。

② 塗り薬(トレチノイン軟膏など)

【危険度:高】

シミやニキビ治療のために、美容皮膚科で処方される「トレチノイン」や「レチノイン酸トコフェリル」などの塗り薬です。

これらは「レチノイン酸そのもの」を配合しているため、作用が非常に強力です。

「以前処方してもらった余りが家にある」という方もいるかもしれませんが、妊娠中は絶対に使用しないでください。


4. 【最重要】絶対に飲んではいけない「イソトレチノイン」

今回、最も強く警告したいのが、**「イソトレチノイン(内服薬)」**です。

(商品名:アキュテイン、ロアキュテイン、イソトロインなど)

これは重症のニキビ治療に使われる飲み薬で、レチノイン酸の異性体(化学構造が少し違うだけの双子のような物質)です。

日本では保険適用外ですが、美容クリニックの自由診療や個人輸入で手に入れている方が増えています。

催奇形性リスクは極めて高い

この薬は、飲み薬であるため全身に作用し、極めて高い確率で胎児に奇形を引き起こします。

そのため、服用中はもちろん、服用中止後も「最低6ヶ月間」は避妊が必要という厳しいルールがあります。

もし、今この薬を服用していて妊娠を希望する場合、あるいは妊娠の可能性がある場合は、直ちに服用を中止し、必ず処方医と産婦人科医に相談してください。

「知らなかった」では済まされないほど、リスクが高い薬剤です。


5. もし、妊娠に気づかずに使ってしまったら?

ここまで読んで、「妊娠初期にレチノール入りのクリームを使ってしまった!」と青ざめている方もいらっしゃるかもしれません。

まず、落ち着いてください。

市販の化粧品に含まれるレチノールは濃度が低く、皮膚からの吸収も微量です。数回使用した程度で、直ちに赤ちゃんに影響が出る可能性は低いと考えられています。

重要なのは、気づいた時点で「すぐに使用を止めること」です。

過度にストレスを抱えることも赤ちゃんによくありません。使用を中止し、これからの生活で気をつければ大丈夫です。


まとめ:成分表を確認し、迷ったら医師へ

今回のポイントをまとめます。

  1. レチ〇〇は要注意:レチノール、レチナール、レチノイン酸は、胎児の奇形リスク(レチノイド胎児症)を高める可能性があります。
  2. 化粧品も避ける:エイジングケア化粧品は一度お休みし、保湿中心のシンプルなケアに切り替えましょう。
  3. 医薬品は絶対NG:トレチノイン(塗り薬)、イソトレチノイン(飲み薬)は妊娠禁忌です。特に飲み薬は服用中止後も半年間の避妊が必要です。

妊娠中は、ママが口にするもの、肌に塗るもののすべてが、赤ちゃんの成長環境になります。

「キレイになりたい」という気持ちはとても大切ですが、今は「安全」という最高のプレゼントを赤ちゃんに贈ってあげてください。

もし、使用中の薬や化粧品について不安がある場合は、自己判断せず、かかりつけの医師に相談しましょう。

当クリニックでは、NIPT(新型出生前診断)などを通じて、赤ちゃんの健康とご家族の安心をサポートしています。