妊娠中は心身ともに大きな変化が起こる時期であり、眠りの質が低下しがちです。夜中に何度も目が覚める、寝つきが悪い、身体の不快感で眠れない…。こうした睡眠トラブルは妊婦の約8割が経験すると言われています。また、NIPT(新型出生前診断)のような検査を受ける際には、結果を待つ間の不安も睡眠に影響を与える要因になります。この記事では、妊娠中に起こりやすい睡眠の問題とその原因を解説し、専門的な視点から快適な睡眠をサポートする対策をご紹介します。
なぜ妊娠中は眠れなくなるのか?その主な原因とは
ホルモンバランスの変化による影響
妊娠初期から分泌量が急激に増加するプロゲステロンには、眠気を引き起こす作用があります。一方で、このホルモンの影響により体温が上がり、眠りが浅くなる・中途覚醒が増えるといった副作用も報告されています。
また、妊娠後期になるとエストロゲンやリラキシンといったホルモンも影響し、筋肉や靭帯の緩み、頻尿、胎動などが睡眠の質を下げる要因となります。
身体的な不快感
- 背中や腰の痛み
- 胃の圧迫による胸焼け(逆流性食道炎)
- 足のつり(こむら返り)
- 頻繁なトイレ
これらは妊娠週数が進むほどに顕著になり、夜間の連続した睡眠を妨げる大きな原因になります。
精神的ストレスと不安
出産への漠然とした不安や、NIPTなどの出生前検査に関する心配ごとは、眠りに大きく影響します。とくにNIPTの結果を待つ間は精神的緊張が高まりやすく、寝つきの悪さや浅い眠りを引き起こすことがあります。
妊婦におすすめの睡眠改善法7選
睡眠トラブルは妊婦にとって避けがたいものではありますが、ちょっとした工夫で大きく改善できるケースも少なくありません。以下に、専門的な観点からおすすめできる対策を紹介します。
1. 寝る姿勢を工夫する(シムス位・横向き寝)
妊娠後期には「左側を下にした横向き寝(シムス位)」が最も身体に負担が少ないとされています。背骨や内臓への圧迫を軽減し、血流が良くなるため、深い眠りが得られやすくなります。
2. 妊婦用抱き枕の活用
お腹を支えたり、膝の間に挟んだりすることで、身体の安定感が得られます。適切なサポートがあることで筋肉の緊張を和らげ、リラックスした状態で入眠しやすくなります。
3. 夕方以降の水分摂取を控えめに
夜間頻尿は睡眠中断の大きな原因です。日中にしっかりと水分を摂り、夕方以降は控えめにすることで、夜中のトイレ回数を減らせます。
4. 就寝前のリラックスルーティン
アロマディフューザー(妊娠中使用可の精油)を使った芳香浴や、軽いストレッチ、ハーブティーなどを取り入れることで、神経を落ち着かせることができます。
5. 画面から離れる
スマートフォンやタブレットのブルーライトはメラトニン分泌を妨げ、入眠を遅らせることがわかっています。寝る1時間前には電子機器から離れ、穏やかな照明で過ごしましょう。
6. 日中の適度な運動
マタニティヨガやウォーキングなど軽い運動を日常に取り入れることで、睡眠の質向上と入眠スピードの改善が期待できます。夜ぐっすり眠れる身体づくりに役立ちます。
7. 不安な気持ちを言葉にする
NIPTの結果を待つ間の不安や、育児への緊張感などは、日記に書いたり、パートナーと共有したりすることで緩和されることがあります。感情をため込まず「外に出す」ことが心のケアにつながります。

NIPTによる精神的ストレスとその対処法
NIPTがもたらす“見えないストレス”
NIPTは身体への負担が少ない検査である一方、結果が持つ意味の重さから心理的負担が大きくなりがちです。「もし陽性だったらどうしよう」「家族にどう伝えるか」といった不安が、眠れない夜を引き起こす原因になります。
カウンセリングの活用を検討する
多くの認可施設では、NIPTの前後に遺伝カウンセリングを実施しています。専門家に不安や疑問を相談することで、誤解や過度な心配を防ぎ、気持ちを落ち着けることができます。
パートナーとの情報共有が大切
結果に対する考え方を共有し、どのように対応するかを話し合っておくことで、不安の多くは軽減されます。検査に関する情報を一緒に調べる時間も、信頼関係の構築に役立ちます。
妊娠中の睡眠不足が母体と胎児に与える影響
慢性的な睡眠不足はリスク要因になる
妊娠中の慢性的な睡眠不足は、妊娠高血圧症候群や早産、分娩時の合併症のリスクを高めることが指摘されています。胎児の発育にも影響を及ぼす可能性があるため、早期の対処が必要です。
情緒不安定・うつ傾向にも注意
睡眠の質が悪化すると、妊婦のメンタルヘルスにも影響が出ます。産前うつや産後うつのリスクを高める要因のひとつが睡眠障害です。自分の心身の変化を無視せず、必要なときは医療機関に相談する勇気も大切です。
睡眠の質を高める生活習慣を取り入れよう
妊娠中の眠りを快適に保つには、単発的な対策よりも日常的な生活習慣の見直しが効果的です。以下のような習慣を意識することが、より良い睡眠環境づくりにつながります。
- 決まった時間に起きて、朝日を浴びる
- 昼寝は30分以内にとどめる
- 寝室を整え、快適な温度・湿度を保つ
- 寝具(マットレスや枕)の見直し
- 寝る前の「儀式」(読書、呼吸法、アロマなど)を習慣化する
まとめ:快適な睡眠が健やかな妊娠生活をつくる
妊娠中の睡眠トラブルは誰にでも起こりうる自然な現象です。しかし、適切な対処法と心のケアを実践することで、かなりの改善が期待できます。とくにNIPTなどの検査を受ける場合には、精神的負担との向き合い方が睡眠の質にも直結します。「眠れないこと」に焦りすぎず、できることから生活を整えていきましょう。あなたと赤ちゃんの健康のために、まずはよく眠れる毎日を目指してみてください。

