この記事のまとめ
妊娠中の不眠は、ホルモンの変化・頻尿・お腹の張り・胎動・不安が時期ごとに重なって起こるもので、多くの妊婦さんが経験する自然な変化です。妊娠初期は眠気と中途覚醒が入りまじり、中期は昼夜のリズムが乱れやすく、後期はお腹の大きさや胎動で寝苦しくなります。対策の柱は、左を下にした横向き寝(シムスの体位)と抱き枕、夕方以降のカフェインを控える工夫、ぬるめの入浴、日中に体を動かすことです。眠れないからと睡眠薬を自己判断で使うのは避けてください。つらさが続くときは、我慢せずかかりつけの産婦人科へ相談しましょう。
この記事でわかること
- 妊娠中に眠れなくなる主な原因(ホルモン・頻尿・お腹の張り・胎動・不安)
- 初期・中期・後期で変わる不眠のあらわれ方と、時期ごとの向き合い方
- シムスの体位・抱き枕・カフェイン・入浴・日中の過ごし方といった実践策
- 睡眠薬を自己判断で使わない理由と、つらいときの相談先の目安
妊娠すると、寝つきの悪さや夜中の目覚めに悩む方がぐっと増えます。夜中に何度も起きる、体が重くて楽な姿勢が見つからない、結果を待つ不安で頭がさえる。私も妊婦さんの相談に立ち会うなかで、「眠れないのが一番つらい」という声を何度も聞いてきました。この記事では、妊娠中の不眠が起こる仕組みを時期ごとに整理し、今日から試せる眠りの工夫をまとめます。
妊娠中に眠れなくなる主な原因
妊娠中の不眠は、ホルモンの変化・頻尿・お腹の張り・胎動・不安という5つの要因が重なって起こります。どれか一つではなく、いくつもが同時に眠りを妨げるのが特徴です。まずは、体の中で何が起きているのかを見ていきましょう。原因が分かると、対策の的をしぼりやすくなります。
ホルモンの変化で眠りが浅くなる
妊娠初期から分泌が増えるプロゲステロンには、強い眠気を呼ぶ働きがあります。日中に眠くなる一方で、体温が上がって夜の眠りは浅くなりがち。眠いのに深く眠れない、という不思議な状態が生まれます。ホルモンのしわざと知っておくだけでも、少し気が楽になります。
頻尿とお腹の張りで途切れる眠り
大きくなった子宮が膀胱を押すため、夜間のトイレが増えます。せっかく眠ってもトイレで目が覚め、また寝つけない。この繰り返しが睡眠を細切れにします。お腹の張りも寝苦しさの一因。張りが気になるときの過ごし方はお腹の張りの原因と対処の記事もあわせて読んでみてください。
胎動と不安が夜に重なる
赤ちゃんは夜に活発に動くことが多く、胎動で目が覚める方もいます。そこへ出産や検査への不安が加わると、頭がさえて寝つけません。心のざわつきは眠りの大敵。気持ちの整え方は妊娠中の不安をやわらげる考え方の記事でも紹介しています。まずは体と心、両面から原因をほどいていきましょう。
時期別に見る妊娠中の不眠の変化
妊娠中の不眠は、初期は眠気と中途覚醒、中期は昼夜リズムの乱れ、後期は体の重さと胎動というように、時期ごとに姿を変えます。今の自分がどの段階にいるかが分かると、対策も選びやすくなります。下の図で、時期ごとの特徴を整理しました。
妊娠初期は眠気と中途覚醒がまじる
初期はホルモンの影響で日中の眠気が強く、夜は反対に浅い眠りになりがちです。つわりの気持ち悪さで目が覚める方もいます。吐き気で夜がつらいときはつわりの原因と対処の記事も参考になります。まずは眠れるときに眠る、を合言葉にしてください。
妊娠中期は昼夜のリズムが乱れやすい
中期になると体調は落ち着く一方で、生活リズムがずれる方が目立ちます。夜になっても寝つけず、気づけば朝方まで起きている。そんな昼夜逆転の悩みは珍しくありません。Xでも@nmnpomさんが、妊娠18週で昼夜逆転になり、寝るのは早くて2時、遅いと4時になってしまうとつづっていました。夜中にお腹が空いて起き続けてしまう、という率直な言葉が印象的です。リズムが崩れると眠りは浅くなる。だからこそ朝の光と食事の時間を手がかりに、体内時計を整えていきたいところです。
妊娠後期は体の重さと胎動で寝苦しい
後期はお腹が大きくなり、仰向けが苦しくて寝返りも打ちにくくなります。夜間頻尿や胎動も加わり、まとまった睡眠がとりにくい時期。眠りの浅さに焦らず、姿勢の工夫でしのぐのがこつです。次の章で、その具体策を紹介します。
シムスの体位と抱き枕でつくる眠りやすい姿勢
妊娠後期の寝苦しさは、左を下にした横向き寝(シムスの体位)と抱き枕を組み合わせることで、大きく和らげられます。体への負担を減らし、血のめぐりを保つ姿勢です。道具はいりません。今夜からすぐに試せる方法として、まず姿勢から整えていきましょう。
左側を下にした横向き寝が体に優しい
大きな子宮は、背骨の右側を通る太い血管を圧迫しがちです。左を下にして横向きに寝ると、その圧迫がゆるみ、血のめぐりが保たれます。この姿勢がシムスの体位。上側の膝を軽く曲げて前に出すと、さらに楽になります。仰向けで苦しいときは、左向きへ体を傾けてみてください。
抱き枕と寝具で体を支える
横向きで眠るとき、抱き枕があると体の安定感がまるで違います。お腹を下から支え、膝の間に挟むと、腰やお腹の緊張がほどけていきます。バスタオルを丸めた代用でもかまいません。マットレスがやわらかすぎると寝返りがしにくいため、程よい硬さの寝具を選ぶと体が沈み込みません。枕の高さも、首がまっすぐ保てる位置に合わせてみてください。

私が相談を受けるなかでも、抱き枕を取り入れてから「夜中に目が覚める回数が減った」と話す妊婦さんは少なくありません。体をあずける場所があると、心もほどけます。姿勢が整うと、眠りの質は思った以上に変わるものです。
カフェイン・入浴・日中の過ごし方の実践策
眠りの質は、夕方以降のカフェインを控え、ぬるめのお湯にゆっくりつかり、日中に体を動かすという3つの生活習慣で底上げできます。姿勢の工夫に加えて、一日の過ごし方を整えることが夜の眠りにつながります。無理なく続けられるものから取り入れてみてください。
夕方以降のカフェインと水分を調整する
コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには、目をさえさせる働きがあります。妊娠中はとりすぎないよう気をつけたい成分。夕方以降はカフェインの少ない飲み物に切り替えると、寝つきが整いやすくなります。夜間のトイレを減らすには、日中にしっかり水分をとり、寝る前は控えめにしてください。麦茶やルイボスティーなら、夜でも安心して飲めます。
ぬるめの入浴で体を温めてから休む
寝る1〜2時間前に、38〜40度ほどのぬるめのお湯につかると体が芯から温まります。お風呂で上がった体温が下がっていくときに、自然な眠気がやってきます。熱すぎるお湯は体に負担がかかるため避けてください。体を温める暮らしの工夫は妊娠中の温活の記事もあわせてどうぞ。湯上がりに足首を回すと、むくみもやわらぎます。
日中は光を浴びて適度に体を動かす
朝に太陽の光を浴びると、体内時計が整い、夜の眠気が訪れやすくなります。日中はマタニティヨガや散歩など、軽い運動を取り入れてみてください。体を動かすと、ほどよい疲れが眠りを深めます。妊娠中の体の動かし方は妊婦さんの日常動作の記事が参考になります。昼寝をするなら20〜30分にとどめ、夕方以降は避けると夜に響きません。

妊娠期の暮らしの整え方は、公的な情報も心強い支えになります。女性の健康推進室 ヘルスケアラボやこども家庭庁 母子保健の発信も見てみてください。信頼できる情報にあたると、迷いが減ります。
眠れないつらさとの向き合い方|睡眠薬は自己判断で使わない
眠れない夜が続いても、市販の睡眠薬を自己判断で使うのは避け、つらさが強いときはかかりつけの産婦人科へ相談してください。妊娠中は使える薬が限られ、自己判断は思わぬ影響につながりかねません。ここでは、心の負担との向き合い方と相談の目安をお伝えします。
「眠れないとき」の考え方を切り替える
眠らなきゃと焦るほど、目はさえてしまいます。夜にまとめて眠れなくても、昼や夕方の細切れの睡眠で補う。そんな心づもりでいると、気持ちが軽くなります。Xでも@tai_tabetaiiさんが、寝つきが悪く物音でも目が覚めてしまうと打ち明けていました。主治医に相談したところ「昼でも夜でも眠れるときに寝てください」と言われた、とのこと。この助言は、眠れる時間を逃さないという意味で理にかなっています。焦らず、眠れる隙をつかまえてください。
不安を言葉にして外に出す
出産や検査への不安は、抱え込むほど夜に膨らみます。頭の中のもやもやを、ノートに書き出したりパートナーに話したりすると、心が少し軽くなります。感情を外に出すことが、眠りへの近道。誰かに聞いてもらうだけで、こわばりがほどけることもあります。一人で抱えないでください。
つらさが続くときは早めに相談する
眠れない日が何日も続き、日中の生活に支障が出るときは、我慢を続けないでください。妊娠中でも使える対処を医師と一緒に考えられます。慢性的な睡眠不足は、心身の疲れをためこむ引き金にもなります。市販薬に手を伸ばす前に、まずはかかりつけへ。妊娠期の不安をLINEで気軽に相談する窓口も、こころの支えとして役立ちます。
よくある質問
Q. 妊娠中に眠れないのは赤ちゃんに影響しますか?
一晩や数日の寝不足で、赤ちゃんにすぐ影響が出ることはほとんどありません。ただし眠れない状態が長く続くと、心身の疲れがたまりやすくなります。眠れる時間に細切れでも休み、姿勢や生活の工夫で少しずつ整えてください。つらさが続くときは、我慢せずかかりつけの産婦人科へ相談しましょう。
Q. 妊娠中に市販の睡眠薬を飲んでもいいですか?
自己判断で市販の睡眠薬や睡眠改善薬を使うのは避けてください。妊娠中は使える薬が限られ、成分によっては注意が必要です。眠れないつらさが強いときは、まず医師に相談してください。妊娠中でも使える対処を、状態に合わせて一緒に考えられます。安全のためにも、薬は必ず医師の判断のもとで使いましょう。
Q. 寝る姿勢はどうすればいいですか?
妊娠後期は、左を下にした横向き寝(シムスの体位)が体に負担が少ないとされています。上の膝を軽く曲げ、抱き枕をお腹の下や膝の間に挟むと安定します。仰向けはお腹の重みで血のめぐりが滞りやすいため、苦しいときは左向きへ傾けてください。楽に感じる姿勢が、そのときの体に合った姿勢です。
Q. カフェインはどのくらい控えればいいですか?
寝つきを整えるには、夕方以降のカフェインを控えめにしてください。コーヒーや緑茶、エナジードリンクにはカフェインが含まれます。夜は麦茶やルイボスティーなど、カフェインの少ない飲み物に切り替えると安心です。量が気になるときは、担当医に相談して一日の目安を確認しておきましょう。
Q. 夜中に何度も目が覚めてしまいます。どうすればいいですか?
頻尿が原因なら、日中にしっかり水分をとり、就寝前は控えめにすると回数を減らせます。目が覚めても、時計を気にしすぎないでください。眠れないときは、無理に寝ようとせず薄暗い照明のもとで静かに過ごすと、また眠気が戻ってきます。眠れる時間に休むという考え方で、焦りをやわらげてください。
Q. 不安で眠れないときはどこに相談すればいいですか?
まずはかかりつけの産婦人科に相談してください。出産や出生前検査への不安が強いときは、遺伝カウンセリングやLINE相談などの窓口も役立ちます。気持ちを言葉にして誰かに伝えるだけでも、心の負担は軽くなります。妊娠期の病気や体の変化については、日本産科婦人科学会の情報も参考にしてください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医/産婦人科(NIPT・出生前診断)
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
