「妊婦健診のエコーで『順調ですね』と言われたけれど、本当に大丈夫なのかな?」
「高齢出産だから、ダウン症などの障害がないか心配…」
妊娠判明時の喜びも束の間、お腹の赤ちゃんが元気に育っているか、漠然とした不安を抱えている妊婦さんは少なくありません。
一般的な妊婦健診で行われる超音波(エコー)検査は、赤ちゃんの発育サイズや羊水の量を確認することが主目的であり、細かな先天性異常を見つけるには限界があることをご存知でしょうか?
そこで今、注目を集めているのが**「胎児ドック(胎児精密超音波検査)」**です。
今回は、NIPT(新型出生前診断)の専門医であり、多くの妊婦さんの悩みに寄り添ってきたヒロクリニックの岡弘医師の解説を元に、胎児ドックで何が分かるのか、ダウン症は判断できるのか、そしてNIPTと組み合わせるべき理由について、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。
胎児ドックとは、通常の白黒エコーとは異なり、高性能な超音波機器を用いて赤ちゃんの全身をくまなくチェックする**「お腹の中の人間ドック」**のようなものです。
一般的な健診が数分で終わるのに対し、胎児ドックは時間をかけて、赤ちゃんの脳、心臓、消化器、骨格などを詳細に観察します。最新の機器では3Dや4Dで立体的に映し出すことができ、赤ちゃんの表情まで鮮明に見えることもあります。
岡医師によると、胎児ドックを受けるのに最も適した時期は妊娠18週から21週頃です。
この時期を選ぶ理由は明確です。赤ちゃんがある程度の大きさまで成長しており、心臓の部屋の構造や脳のシワ、手足の指の形などの細部まで観察できる環境が整うからです。これより早すぎると小さすぎて見えず、遅すぎると骨が影になって見えにくくなったり、万が一の時の対応の選択肢が狭まったりするため、この「中期」がベストタイミングとされています。
では、具体的にどのような異常が見つかるのでしょうか。動画内で解説された主要なチェックポイントを深掘りします。
脳は神経の塊であり、生命維持の中枢です。胎児ドックでは、脳室(脳の中の部屋)の形や大きさ、大脳・小脳のサイズを測定します。
最も重要なチェック項目の一つが心臓です。心臓には右心房・左心房・右心室・左心室という4つの部屋があり、弁が正常に動いて血液の逆流を防いでいます。
最新のエコーでは、赤ちゃんの顔つきが驚くほどリアルに見えます。「パパ似かな?ママ似かな?」と感動する場面ですが、医学的には重要な診断箇所です。
お腹の中の臓器も詳しく見ます。
手足の長さや指の本数を確認します。
多くの妊婦さんが一番気にされるのが「ダウン症(21トリソミー)などの染色体異常が分かるのか?」という点です。
結論から言うと、**「可能性(兆候)は見つけられるが、確定診断はできない」**というのが正確な答えです。
胎児ドックで見ているのは、あくまで「形(形態)」です。染色体の「数」そのものを数えているわけではありません。しかし、染色体異常がある赤ちゃんには、特有の「身体的特徴(マーカー)」が現れることが多いため、それを手掛かりにリスクを推測します。
【代表的なマーカー】
これらのサインが見つかった場合、「染色体異常の疑いがある」と判断され、確定診断のための羊水検査などを検討するステップに進みます。逆に言えば、「見た目は異常がなくても染色体異常があるケース」もゼロではないということです。
「受けておけば安心」と思われがちな胎児ドックですが、岡医師はデメリットや限界についても正直に語っています。
エコー検査は「音波」を使った検査です。赤ちゃんの向き(うつ伏せや逆子)、羊水の量、お母さんの皮下脂肪の厚さなどによって、見え方は大きく左右されます。
また、「医師の腕(技術)」に依存する部分が非常に大きいのが特徴です。熟練した医師なら見つけられる異常も、経験の浅い医師だと見落とす可能性があります。また、実際に「怪しい影」が見えても、それが本当に病気なのか、たまたまそう見えただけなのかの判断が難しい「グレーゾーン」の結果が出ることもあり、それが逆にお母さんの不安を煽ってしまうケースもあります。
前述の通り、心臓の穴や指の欠損などの「形」の異常は分かりますが、細胞の中にあるDNAの情報や染色体の本数は見えません。機能的な障害(知的障害や自閉症など)もエコーでは分かりません。
保険適用外の自費診療となるため、費用は2万〜5万円、高い施設ではそれ以上かかることもあります。
ここで岡医師が強く推奨しているのが、**「NIPT(新型出生前診断)と胎児ドックの併用」**です。
なぜなら、この2つの検査は「得意分野」が全く異なり、お互いの弱点を完璧に補い合えるからです。
「NIPTはDNAという0か1かのデジタルの世界。再現性が高く、誰がやっても結果は同じで正確。一方、胎児ドックは職人技のようなアナログの世界で、形態を見るもの。この2つを合わせることで、赤ちゃんの状態を多角的に、より深く知ることができます」(岡医師)
例えば、NIPTで「陰性(異常なし)」でも、胎児ドックで「心臓に穴がある」と分かるかもしれません。
逆に、胎児ドックで「首のむくみ(NT)はない」と言われても、NIPTで「陽性」が出ることもあります(見た目に出ない染色体異常など)。
両方受けることで、見逃しのリスクを最小限に抑えることができるのです。
岡医師は、「個人的には全ての妊婦さんが受けるべき検査だと思っている」としつつ、特に以下の方には強く推奨しています。
検査を受けることに対して、「知るのが怖い」「命の選別になるのでは」という意見もあるでしょう。しかし、事前にリスクを知ることは、決してネガティブなことだけではありません。
「予見することで、出産や育児への準備ができます」
もし心臓に病気が見つかれば、すぐに手術ができる高度な医療機関でのお産に切り替えることで、赤ちゃんの命を救える確率が格段に上がります。障害の可能性が分かっていれば、家族で話し合い、心の準備や環境の整備をして赤ちゃんを迎えることができます。
「知る」ということは、赤ちゃんを守るための「最初の親としての行動」とも言えるのです。
妊娠・出産は奇跡の連続ですが、どうしても「100%安全」とは言い切れません。
しかし、現代の医療では、お腹の中にいるうちから赤ちゃんのSOSをキャッチし、備える手段があります。
胎児ドックは、赤ちゃんの体の形を詳しく見る検査。
NIPTは、赤ちゃんの遺伝学的リスクを見る検査。
この両輪を活用することで、漠然とした不安を「具体的な準備」に変えることができます。
もし今、あなたが妊娠中の不安に押しつぶされそうなら、一人で悩まずに専門医に相談してみてください。正しい情報を知り、赤ちゃんの状態を把握することは、あなた自身と、これから生まれてくる赤ちゃんの未来の笑顔を守ることに繋がるはずです。
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