18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群)とは?特徴や起こり得る症状、治療法や予後について【医師監修】

18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群)とは?特徴や起こり得る症状、治療法や予後について 赤ちゃん 足 写真

【医師監修】18トリソミー(エドワーズ症候群)の原因と症状・検査方法を詳しく解説/診断後の家族の心の持ち方や準備についても見ていきます。

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この記事のまとめ

18番染色体トリソミーでは、18番染色体が3本存在するトリソミーという染色体異常によって様々な症状が引き起こされます。主な症状としては、出生時低身長や先天性心疾患、小頭症などがあります。重症の染色体異常であり、1年生存率は10%程度と考えられていますが、最近では新生児集中治療や心臓手術などの治療を積極的に行うことにより、徐々に生命予後は改善してきています。

新生児3,500~8,500人に1人の割合で発症すると言われる18番染色体トリソミー。
18番染色体トリソミーでは、18番染色体が3本存在するトリソミーという染色体異常によって様々な症状が引き起こされます。主な症状としては、出生時低身長や先天性心疾患、小頭症などがあります。重症の染色体異常であり、1年生存率は10%程度と考えられていますが、最近では新生児集中治療や心臓手術などの治療を積極的に行うことにより、徐々に生命予後は改善してきています。
多くの合併症を患う場合が多く、自然流産や早期に亡くなってしまうケースが多いですが、NIPT(新型出生前診断)などの検査により早期に発見することで、出生後の治療やサポートを積極的に行うことが可能です。
その症状や原因、検査方法、予後について詳しく解説していきます。

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18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群)とは?

18番染色体トリソミーは、18番目の染色体が1本多い染色体疾患です。
1960年、イギリスのジョン・H・エドワーズらにより報告されたことから『エドワーズ症候群』と呼ばれます。受精しても出産まで至らないケースが多く、出生後もほとんどが1週間以内に亡くなり、生後1年まで生存する割合は10%未満と深刻な疾患ですが、10歳、20歳を過ぎても元気に過ごされている方もいます。

人の体内には23の染色体があり、いずれも通常2本ずつペアになっています。
これが何らかの原因により、1本多い3本となる状態をトリソミーと呼び、さまざまな症状につながると考えられています。
よく知られた所では、ダウン症候群(21トリソミー)13トリソミー(パトウ症候群)があります。

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18番染色体トリソミーの発生頻度と性別

18番染色体トリソミーは比較的まれな疾患で、現在、18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群)の発生頻度は、出生児3,500~8,500人に1人、性別比は女児の方が多く、男:女=1:3であることが分かっています。

出生する染色体異常の中では、ダウン症候群(21トリソミー)に次いで多く、約10%を占めると言った報告もあります。重症の染色体異常であるため、妊娠中に流産や死産を起こすことが比較的多く見られます。

18番染色体トリソミーの原因

ここでは、染色体異常である18番染色体トリソミーの起こる原因について、生物学の基礎的な知識を説明しながら詳しく解説していきます。

染色体とは?

染色体とは、細胞の中の核に存在している棒状の構造体です。染色体にはヒモ状のDNAが折りたたまれた状態で存在しています。DNAは遺伝情報が含まれており、一つの染色体には複数の遺伝子が存在しています。ヒトの細胞には46本の染色体が存在していますが、父親から受け継いだものと母親から受け継いだものがペアとなって2本ずつが23対存在しています。染色体は概ね大きなものから順番に1番、2番…22番まで番号がつけられています(「常染色体」と呼ばれます)。その他に性別を決定する性染色体(X染色体とY染色体)が1対2本あり、合計23対46本となります。18番染色体トリソミーの原因は、18番目の常染色体である18番染色体が2本ではなく、3本となる「トリソミー」と呼ばれる状態になってしまうことです(染色体の番号と合わせて「18番染色体トリソミー」と呼ばれます)。

体細胞分裂と減数分裂

では、なぜ同じ染色体が2本ではなく、3本になってしまうのでしょうか?
その原因を理解するには、ヒトの細胞分裂の仕組みついて知る必要があります。
ヒトの細胞が分裂して増えていく仕組みには大きく分けて2つの種類があります。一つは体細胞分裂で、もう一つは減数分裂です。
体細胞分裂は、皮膚などの我々の体の大部分の細胞が分裂して増殖していく仕組みで、細胞が分裂するときに染色体が2倍に増えて2つに分裂するため、染色体の数は細胞分裂の前と後では同じ23対46本になります。
一方、減数分裂は精子と卵子といった生殖細胞ができる途中で起こる特殊な細胞分裂の仕組みです。減数分裂の途中で、染色体は「減数」分裂の名の通り減っていき、対になっていた2本の染色体のうちどちらか1本が精子や卵子に入ります。そのため、出来上がった精子や卵子は、23対46本から半分の23本の染色体を持つことになります。減数分裂してできた精子と卵子はそれぞれ23本の染色体を持っており、受精することで46本になります。このようにして、子供の受精卵は父親の精子と母親の卵子から染色体を1本ずつ受け継ぐことができるのです。

染色体不分離

しかし、この減数分裂の途中で、何らかの原因で18番染色体がうまく分裂せず2本とも精子もしくは卵子に入ってしまうことがあります。そうすると、2本の18番染色体を持った異常な精子や卵子が、1本の18番染色体を持つ正常な精子や卵子と受精して、出来上がった受精卵には18番染色体が3本存在してしまいます(これを「染色体不分離」と呼びます)。
18番染色体トリソミーの大部分である80%がこの染色体不分離が原因であると考えられています。染色体不分離と高齢出産が関係あることは知られていますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。
18番染色体トリソミーは遺伝子(染色体)の異常によって起こる疾患ですが、大部分は染色体不分離が原因であるため両親の遺伝子に問題があってそれが子供に遺伝するというわけではなく、「突然変異」によって起こると考えられます。

約10%は転座型と呼ばれるタイプで、両親のいずれかの18番染色体の一部が他の染色体に結合している(「転座」と呼びます)場合に、18番染色体トリソミーの子供が生まれて来る可能性があります。両親は転座している遺伝子を持っていても症状がなく、保因者となります。このタイプは両親から子供へ18番染色体トリソミーが遺伝することになります。

最後のタイプがモザイク型と呼ばれるもので、全体の約10%と考えられています。正常な精子と卵子が受精した後の受精卵が細胞分裂する過程で前述した染色体不分離が生じ、18番染色体が3本になってしまうことで発症します。このタイプも両親から遺伝するわけではなく、「突然変異」によるものです。このタイプの場合は正常の細胞と18番染色体トリソミーの細胞が混ざって存在するため、その他のタイプよりも症状が軽くなります。

染色体

人の細胞は父親由来の23本、母親由来23本の計46本の染色体で構成されています。受精前に精子・卵子のもととなる細胞がそれぞれ染色体を23本1セットに数を減らしながら分裂していく事を『減数分裂』といいます。この『減数分裂』が上手く行かず、18番目の染色体が分かれずに2本一緒に卵子、または精子に入ってしまう場合を『染色体不分離』と言い、それらが受精すると18番染色体トリソミーの状態となります。18番染色体トリソミーの大部分である80%がこの染色体不分離が原因であると考えられています。 18番染色体トリソミーは遺伝子(染色体)の異常によって起こる疾患ですが、大部分は染色体不分離が原因であるため両親の遺伝子に問題があってそれが子供に遺伝するというわけではなく、「突然変異」によって起こると考えられます。
約10%は転座型と呼ばれるタイプで、両親のいずれかの18番染色体の一部が他の染色体に結合している(「転座」と呼びます)場合に、18番染色体トリソミーの子供が生まれて来る可能性があります。両親は転座している遺伝子を持っていても症状がなく、保因者となります。このタイプは両親から子供へ18番染色体トリソミーが遺伝することになります。
最後のタイプがモザイク型と呼ばれるもので、全体の約10%と考えられています。正常な精子と卵子が受精した後の受精卵が細胞分裂する過程で前述した染色体不分離が生じ、18番染色体が3本になってしまうことで発症します。このタイプも両親から遺伝するわけではなく、「突然変異」によるものです。このタイプの場合は正常の細胞と18番染色体トリソミーの細胞が混ざって存在するため、その他のタイプよりも症状が軽くなります。

『染色体不分離』は母親の加齢と関わりがあると考えられ、2015年の理化学研究所の研究、藤田保健衛生大学の研究によると、加齢により正常な染色体の状態を維持するための因子が減少するためである可能性があることが分かっています。

下記は母親の出産年齢と18番染色体トリソミー、21番染色体トリソミーの発生率の関係を示した表です。

母体年齢 (出産時)18番染色体トリソミー発生率21トリソミー発生率
20歳1/100001/1441
25歳1/83001/1383
30歳1/72001/959
35歳1/36001/338
36歳1/27001/259
37歳1/20001/201
38歳1/15001/162
39歳1/10001/113
40歳1/7401/84
41歳1/5301/69
42歳1/4001/52
43歳1/3101/37
44歳1/2501/38
出展:昭和大学医学部産婦人科学講座「母体年齢と出生児の染色体疾患の発生率」
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18番染色体トリソミーの症状

出生前に疑われる所見

出生前に見られる症状としては、胎動微弱、羊水過多、胎盤矮小、単一臍動脈などがあります。胎児の発育不全、先天性心疾患や手首や足首の形態異常も認めるため、妊娠中の超音波検査で疑われた場合は羊水検査や新型出生前診断などの検査を行い、染色体の異常がないかを調べていくことになります。

特徴・症状

18番染色体トリソミーでは、下記のような身体的特徴、先天的疾患・合併症が多く見られます。

心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管狭窄などの心疾患は90%の患者で発生しており、予後に大きく影響するため、早期の発見と治療が重要となります。
先天性心疾患を合併する頻度が非常に高く、約90%に認められると考えられています。先天性心疾患により、心臓に負担がかかりうっ血性心不全や肺高血圧が早い段階で進行することが生命予後に影響すると考えられています。身体的特徴と先天性心疾患の中でも頻度の多いものは以下のとおりです。

身体的特徴起こりやすい疾患・合併症
  • 揺り椅子状の足底
  • あごが小さい
  • 後頭部の突出
  • 手指の重なり
  • 胸骨が短い耳の位置が低い
  • 口唇口蓋裂
  • 小さな体格
  • 小さい顎
  • 小さな胸骨
  • 筋緊張の低下
  • 特徴的な手の握り
    (人差し指が中指や薬指に重なる)
  • 内反足
  • 揺り椅子状足底
    (突出した踵と弯曲した足底)など
  • 精神遅滞
  • 肺高血圧
  • 先天性心疾患
    (動脈管開存症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、大動脈狭窄、両大血管右室起始など)
  • 呼吸器系疾患
    (横隔膜弛緩症・上気道閉塞など)
  • 消化器系疾患(食道閉鎖・胃食道逆流など)
  • 難聴悪性腫瘍
    (Wilms腫瘍、肝芽腫)
  • 泌尿器系疾患
    (馬蹄腎、水腎症、鼠径ヘルニアなど)
  • 筋骨格系系疾患
    (多指症、合指症、橈側欠損、関節拘縮、側弯症など)
  • 悪性腫瘍
    (Wilms腫瘍/腎臓の腫瘍、肝芽腫)
  • 難聴
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18番染色体トリソミーの検査

出生前検査

クアトロテスト:出生前の血液検査としては、「クアトロテスト」と呼ばれる、母親の血液中のβ−hCG、非抱合型エストリオール、インヒビン、αフェトプロテインという4種類のマーカーを測定する方法があります。

18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群)の検査方法は?

18番染色体トリソミーの検査は、超音波(エコー)検査、NIPT(新型出生前診断)などにより行います。

これらの検査で、赤ちゃんに下記のような形態異常や染色体異常が認められた場合、さらに羊水穿刺や絨毛採取を行い18番染色体の数を調べ、確定診断をします。

18番染色体トリソミーが疑われる状態
  • 胎児発育不全
  • 羊水過多
  • 小脳の大きさが小さい(小脳低形成)
  • 手首や足首の形態異常
  • 単一臍帯動脈
    (通常2本あるべき胎児から胎盤に血液を送る動脈が1本しかない状態)
  • 脈絡叢嚢胞
    (脳室の内壁にある脈絡叢という器官の中に見える小のう胞で、26週前後で多くが消失する)
  • 心臓の異常 など

胎児の性別は10週目でわかる

NIPT(新型出生前検査)でわかる疾患
ヒロクリニックのNIPTは、胎児の染色体の数の異常の他、全常染色体全領域部分欠失疾患や全常染色体全領域部分重複疾患、微小欠失症候群といった染...

18番染色体トリソミーの治療

18番染色体トリソミーに特別な治療はなく、半数以上は生後1週間以内に死亡し、生後1年まで生存する割合は10%未満と考えられています。ただ、近年では新生児集中治療や、心臓手術、食道閉鎖手術などを積極的に行うことで、生命予後は徐々に改善してきています。

18トリソミーの治療

NIPT(エヌアイピーティー 新型出生前診断)

最近は新型出生前診断(NIPT:non-invasive prenatal genetic testing)と呼ばれる検査も行われるようになってきました。クワトロテストと同様に母親から血液を採取する検査ですが、母親の血液中にある赤ちゃんのDNA断片を解析して、染色体の病気や異変を調べることができる新しいスクリーニング検査です。感度は99.9%、特異度は99.6%とクアトロテストに比べて診断の正確性が非常に高くなっています。ヒロクリニックNIPTでは、このNIPT(新型出生前診断)を行っています。
ただ、これらの検査はいずれも診断が確定できるわけではなく、あくまでスクリーニングのための検査であり、確定診断には後で説明する羊水検査が必要です。

非侵襲的出生前診断
新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

18番染色体トリソミー(エドワーズ症候群)とNIPT(新型出生前診断)

羊水検査や絨毛検査を行う前の段階で、赤ちゃんの異常を発見するために用いられる検査の一つがNIPT(新型出生前診断)です。

お母さんからの採血により、血液中の胎児のDNAを調べることで異常を発見します。

NIPT(新型出生前診断)は羊水検査や絨毛検査のような、流産などの胎児への影響なく、妊婦さんの身体的負担・リスクの少ない血液検査のみで行えるため、受検を検討される方も多いようです。

しかし身体的リスクが少ないからといって、決して気軽に受けられる検査ではありません。NIPT(新型出生前診断)を希望される方は下記をしっかりとお読みになり、ご家族で理解をされたうえで受けてください。
赤ちゃんにとって、ご家族にとって、最も重要なことです。

羊水検査

血液を用いた検査で18番染色体トリソミーが疑われた場合は、診断を確定するために羊水検査が行われます。超音波検査で胎児や羊水の状態を見ながら、細い針を刺して羊水を採取します。羊水中に含まれる胎児の細胞の染色体を詳しく調べます。

NIPT(新型出生前診断)は『非確定的検査』です

NIPT(新型出生前診断)は、従来の母体血清マーカーや超音波検査と比較し精度が高い点がメリットですが、一方で母親の年齢が高いほど陽性的中率が上がり、年齢が低いほど的中率が下がるなど、100%正しい結果が得られるというものではありません。

あくまで『非確定的検査』であり、陽性の判定が出たからといって、必ず遺伝子異常があるというわけではありません。

正確な診断は、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査により初めて行われます。

カウンセリングが可能な信頼できる施設を選ぶ

検査が比較的容易に行えることから、近年NIPT(新型出生前診断)を扱うクリニックは増加傾向にあります。

それに伴い、内容の説明も不十分なまま受検されるお母さんも増えています。
生まれてくる赤ちゃんのおよそ3%に何らかの先天性異常が発生すると言われます。
思いもよらない治療の難しい疾患が見つかる可能性もあります。

検査の目的や内容、非確定的検査であることを理解しないまま受検し、陽性の結果を受け、混乱・憔悴し、以降の判断が冷静にできなくなってしまうご家族もいらっしゃいます。

NIPT(新型出生前診断)とは、赤ちゃんに異常が見つかった場合、出産後ご家族でどのように迎え入れるか、またどこの病院で適切な治療・サポートを受けられるかなど、計画を事前に立てて準備するためのものです。

決して赤ちゃんの命を淘汰するためのものではありません。

NIPT(新型出生前診断)を検討される方は、しっかりとした知識・経験を持ち、事前にカウンセリングが可能なクリニックを選びましょう。

ヒロクリニックNIPTには、日本産科婦人科学会専門医および出生前コンサルト小児科医、臨床遺伝専門医が在籍しておりますので、より専門的なカウンセリングも対応可能です。

また、診断後も赤ちゃんへの迅速なケア、治療ができる小児科専門医の在籍するクリニックや、お母さんやご家族の精神面でのサポートが可能な精神科医・カウンセラーと密に連携がとれるクリニックを事前に調べておくのも重要なことです。

【参考文献】

【医師監修】18トリソミー(エドワーズ症候群)の原因と症状・検査方法を詳しく解説/診断後の家族の心の持ち方や準備についても見ていきます。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

記事の監修者


水田 俊先生

水田 俊先生

ヒロクリニック岡山駅前院 院長
日本小児科学会専門医

小児科医として30年近く岡山県の地域医療に従事。
現在は小児科医としての経験を活かしてヒロクリニック岡山駅前院の院長として地域のNIPTの啓蒙に努めている。

略歴

1988年 川崎医科大学卒業
1990年 川崎医科大学 小児科学 臨床助手
1992年 岡山大学附属病院 小児神経科
1993年 井原市立井原市民病院 第一小児科医長
1996年 水田小児科医院

資格

小児科専門医

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