13トリソミー(パトウ症候群)とは?【医師監修】

13トリソミー(パトウ症候群)

13トリソミーはパトウ症候群ともいい、5,000人〜12,000人に1人の割合で生まれる可能性のある先天的な染色体異常症です。

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この記事のまとめ

パトゥ症候群は常染色体のうち13番目の染色体が1本多くある状態、またはもう1本の一部が重複してある状態のことを言います。出生約5,000〜12,000人当たり1人の確率で発生し、生育や発達的特徴としては体格が小さいことや、胎児期からの成長や発達がとてもゆっくりであることが挙げられます。

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13トリソミー(パトウ症候群)とは?

パトウ症候群(Patau syndrome)とは、13トリソミー症候群(trisomy 13 syndrome)ともいい、一般的には「13トリソミー」とも呼ばれます。パトウ症候群の「パトウ」とは人の名前から取られたもので、これらの症候群を遺伝の病気と確認した人物の名前にちなんで呼ばれています。

パトウ症候群では、細胞内にある染色体の常染色体(性別を決める性染色体以外の染色体)のうち、13番目の染色体が本来は2本であるはずなのに1本多くある状態(トリソミー)、またはもう1本の一部が重複してある状態になっています。これらの染色体の数の変化や量のアンバランスによって起こる先天的な染色体異常症と言われています。

そもそも、人の細胞には46本の染色体があり、2本ずつ1組のセットとなっています。そのうち22対の44本が常染色体、残り1対である2本が男女の性別を決める性染色体です。1番から22番の常染色体を父親と母親からそれぞれ1セットずつ受け取っているわけです。性染色体は男性は「XY」、女性は「XX」の組み合わせとなっています。

パトウ症候群のようなトリソミー症候群では、ほかにも21トリソミー(ダウン症候群)18トリソミー(エドワーズ症候群)があります。
これらのトリソミーは、顔貌や症状等だけでなく平均寿命などにも違いがあり、13トリソミー(パトウ症候群)は一般にこれら3つのトリソミーの中で平均寿命は一番短いと言われています。

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13トリソミー(パトウ症候群)の特徴

パトウ症候群の生育や発達的特徴としては、体格が小さいことや胎児期からの成長や発達がとてもゆっくりであることが挙げられます。

身体的な特徴では、生まれつき口唇(くちびる)や口蓋(くちの中の天井)に裂があるなど顔や脳に外見的な特徴が見られたり、心臓の病気を持っていたりします。パトウ症候群のある赤ちゃんの約8割に重い心臓の病気が見られるとも言われています。また、男の赤ちゃんには精巣が正常な位置にない停留精巣が見られたり、女の赤ちゃんには双角子宮といった子宮の形の異常が見られるなど、高い頻度で生殖器に特徴的な症状があります。

乳児期の早い時期には、呼吸のない状態が長く続く無呼吸発作がよく起こります。

また、パトウ症候群は比較的重い知的障害が見られることも特徴です。

13トリソミー(パトウ症候群)の確率

生まれる赤ちゃんのうち約5,000〜12,000人当たり1人の割合が、パトウ症候群であると言われています。パトウ症候群のうち約8割が完全な13トリソミー(13番目の常染色体が3本)です。

13番目にある1本多くなった染色体は、通常お母さんから受け継がれ、35歳以上などお母さんの年齢が上がるほどパトウ症候群の赤ちゃんが見つかる可能性が高くなります。

パトウ症候群の赤ちゃんが見つかる確率は、妊娠16週の羊水診断においては1/1,000の確率、生まれる時では1/12,000の確率と言われています。

気になるのが、一度パトウ症候群の赤ちゃんを妊娠したお母さんがその次の妊娠でも、同じパトウ症候群などの染色体に異常が見られる赤ちゃんを妊娠する可能性があるということです。

これに関しては、過去にパトウ症候群である赤ちゃんを出産した経験があるお母さんが、次の妊娠時にパトウ症候群などの染色体異常の赤ちゃんを妊娠する可能性は低いとも言われています。

パトウ症候群の確率

13トリソミー(パトウ症候群)の原因

上述のようにパトウ症候群は、13番目の常染色体の全長または一部が重複することで、細胞内の染色体の数が増えたり、遺伝子の量がアンバランスになり、様々な遺伝子が正常に働かなくなることで、特徴的な生まれつきの症状が表れます。

ここで疑問に思うのがなぜ、13番目の染色体の数が増えてしまうのかということです。

その理由として、精子と卵子の受精の過程で染色体がうまく分離できなかったことが一つの要因として挙げられます。

卵子と精子が受精をする前の細胞では、染色体は23本1セットと分かれていくはずなのに、何かの理由により、13番目に大きい染色体が2本一緒に卵子または精子に入ってしまったのです。

ほかにも「転座」と言って、染色体が23本に分かれる前のステップで、異なる2本の染色体がそれぞれ千切れてしまい、お互いの染色体断片を交換してくっつけてしまうことも起こります。この場合、13番目の染色体の一部分だけがトリソミーになってしまう「部分トリソミー」が生じる可能性があります。

このような精子と卵子の分裂や受精の過程で、生殖細胞の中の染色体がうまく分離できないことでトリソミーとなり、これらが生じる傾向はお母さんの年齢が高いことにも関連があるとも言われています。

13トリソミー(パトウ症候群)の症状

パトウ症候群の主な特徴でも述べましたが、パトウ症候群には、胎児期からの成長や発育の遅れや様々な身体的特徴や心臓の病気などの合併症が多く見られます。

他にも、以下のような先天的な特徴や病気がパトウ症候群の症状として存在します。

身体的な特徴

  • 小頭症(脳の発育が遅れる)
  • 頭皮欠損
  • 頭蓋骨部分欠損(頭蓋骨が一部欠損している)
  • 小さな眼・単眼(目が一つしかない)、無眼球症
  • 両目の間隔が開いている
  • 鼻筋が低い
  • 虹彩コロボーマ(目に入る光をコントロールする虹彩の一部の欠損)
  • 瞳孔(眼球の色が付いた部分)の欠損
  • 網膜(目の奥にある光を感じ取る透明な構造物)の発育不良
  • 口唇口蓋裂・高口蓋
  • 耳の変形
  • 耳が低い位置にある
  • 首の後ろに皮膚のたるみがある
  • 手のひらに一直線の深いしわがある
  • 手足の指が余分にある
  • 指が他の指に重なるような手の握り方をする
  • かかとの突出
  • 爪の発育が不良

中枢神経系に関する合併症

  • 全前脳胞症(左右の大脳半球=前脳の分離がうまくいかず一つのままになる)
  • けいれん

呼吸器系に関する合併症

  • 無呼吸発作(呼吸がない状態が長時間続く)
  • 咽頭・気管軟化症

先天性の心臓の病気

  • 心室中隔欠損(左右の心室の間の壁にあなが開いている)
  • 動脈管開存(大動脈と肺動脈をつなぐ管が開いたままになっている)
  • 心房中隔欠損(左右の心房の間の壁にあなが開いている)

泌尿器に関する合併症

  • 腎臓の形の異常
  • 鼠径ヘルニア(腹部の筋肉の薄い部分から腸や内臓脂肪が出てしまう)
  • 小陰茎(陰茎が小さい)
  • 停留精巣(精巣が正常な位置にない)
  • 子宮の形の異常(子宮が二つに分かれる双角子宮など)

内分泌系に関する合併症

  • 甲状腺機能低下症
  • 遷延性低血糖(重度の低血糖)

血液学的異常

  • 細菌などの侵入物に対する防御反応を起こす好中球という白血球の形が異常

その他の特徴

  • 難聴
  • 知的・発達障害がい
  • 胃食道逆流症(胃の中の酸が食道へ逆流する)
  • 臍帯ヘルニア(へその緒の中に胃腸・肝臓などが出たままになる)
  • 総胆管拡張症(胆管が拡張し胆汁うっ滞などが起こる)
  • 胆汁うっ滞

これらの特徴や病気など、症状の現れ方は赤ちゃんそれぞれです。しかし、中でも重い知的障がいや顔や足の特徴、心臓の病気や難聴、発達の遅れや無呼吸発作などがよく起こると言われています。

13トリソミー(パトウ症候群)の検査

パトウ症候群の診断を確定するための検査は、赤ちゃんが生まれる前でも後でも実施することが可能です。

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生まれる前:超音波検査・お母さんの血液検査

13トリソミーは、出生前のエコー検査(超音波検査)では以下のような赤ちゃんの発育の遅れや身体的な特徴から見られることでわかることもあります。

  • IUGR(胎児発育不全)
  • 全前脳胞症
  • 口唇裂・口蓋裂
  • 小頭症
  • 小眼球症
  • 単眼症
  • 心臓の異常(心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存)
  • 腎嚢胞(腎臓に球状の袋が見られる)
  • 羊水過多(羊水量が多い)
  • 多指症(指の数が多い)
  • 単一臍帯動脈(臍帯動脈が1本のみである)
  • 臍帯ヘルニア

このような所見が超音波検査で見られたら、次にお母さんの血液を用いたNIPT(新型出生前診断)が行われます。

そこでパトウ症候群が疑われる・結果が不確定などがあった場合は、他に赤ちゃんに見られる染色体異常との判断をするためにも、羊水検査や絨毛検査が行われます。

染色体の同定や細かい染色体部の欠失を調べることができる「蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH=Flourescence In Situ Hybridization)」法や「染色体マイクロアレイ検査(CMA)」といった染色体を調べる検査を行います。

そこで、13番目の染色体が3本あることが分かれば、パトウ症候群と確定診断されます。確定診断が行われる前後、検査を受ける前後には、十分な情報提供と遺伝カウンセリングが必要となります。

パトウ症候群の検査

生まれた後:身体的特徴の判断と赤ちゃんの血液検査

赤ちゃんが生まれた後は、身体的な特徴・外見からパトウ症候群を疑い、その後赤ちゃんの血液検査で診断が確定されます。

他にも心臓の先天異常を調べるための心臓超音波検査や脳の状態を確認するための頭部超音波検査・MRI検査、消化管や腎臓に異常がないかを調べるX線検査やCT検査などが行われます。

13トリソミー(パトウ症候群)の治療

パトウ症候群の赤ちゃんが持つ合併症に対して、現在のところ根本的な治療法はありません。それぞれの赤ちゃんに見られる合併症に対して、症状を和らげるなどの支持療法が行われます。

なかには、生まれつきの心臓の病気に対して手術が行われる場合もあります。

他にも、見られる症状によって酸素の投与や人工呼吸器を使ったり、点滴や内服薬によるサポートなどを行います。口からうまく哺乳ができないときは、経管栄養や胃ろう造設なども検討されます。

いずれの治療の選択においても、家族とよく話し合い、家族の意思を尊重して、予後や治療・手術のリスクなどの十分な情報提供がある上で、治療方針を決めていくことが大切です。

13トリソミー(パトウ症候群)の予後

赤ちゃんと家族がより良く過ごせるような医療・心理・福祉面からの支援が重要と言われています。

以下の日本遺伝子診療学会のデータベースリンク集では、主な医療機関の遺伝子治療、遺伝相談等担当部局のホームページ(http://www.gene-dt.jp/frame/f_DB.html)を調べることができます。

また、「13トリソミーの子供を支援する親の会」(http://www.13trisomy.com/next.html)のようなパトウ症候群の子供を持つ家族を支援する会もあります。

実際にパトウ症候群の赤ちゃんが生まれる頻度は少ない傾向があり、どのようなケアが必要なのか、これまで症例を追うことが難しい面もありました。

しかし、最近では小児医療の進歩により病院のNICU(新生児集中治療室)を退院して自宅で療養するケースも増えてきており、パトウ症候群の子どもに対する医療的な介入を行う方へ向きつつあるようです。

自宅では、息止め発作が頻回に見られる、気管切開をしている子どもは人工呼吸器を使用するなど呼吸管理や呼吸ケアが必要であること、てんかんのケアも必要であること、また状態を自宅で診療してくれる訪問医の存在も大切です。

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まとめ

パトウ症候群は、13番目の常染色体が本来2本であるはずなのに3本になることで起こる染色体の異常症です。ほかの染色体異常症の中でも比較的起こる頻度が高いと言われています。お母さんが高齢であるほど起こる確率が高まるのも特徴です。

赤ちゃんは子宮の中でも時に発育の遅れはあるものの正常に育っていきますが、超音波検査やNIPT(新型出生前診断)などによる早期の発見と生まれてからの対処や治療が必要です。現在のところ根本的な治療法はないといえ、超音波検査や出生前診断、羊水検査、絨毛検査を受ける時や生まれたあとの支持療法、そして治療の際には、事前に十分な説明と両親をサポートする医療・福祉・療育体制が必要不可欠であると言えるでしょう。

13トリソミーはパトウ症候群ともいい、5,000人〜12,000人に1人の割合で生まれる可能性のある先天的な染色体異常症です。

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記事の監修者


水田 俊先生

水田 俊先生

ヒロクリニック岡山駅前院 院長
日本小児科学会専門医

小児科医として30年近く岡山県の地域医療に従事。
現在は小児科医としての経験を活かしてヒロクリニック岡山駅前院の院長として地域のNIPTの啓蒙に努めている。

略歴

1988年 川崎医科大学卒業
1990年 川崎医科大学 小児科学 臨床助手
1992年 岡山大学附属病院 小児神経科
1993年 井原市立井原市民病院 第一小児科医長
1996年 水田小児科医院

資格

小児科専門医

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