こんにちは、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする「おかひろし」です。
このコラムでは、NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなく「データ」を元に分かりやすくお届けしています。
子育てをしていると、ふとした瞬間に**「あれ? うちの子、他の子と少し違うかも…」**と感じることはありませんか?
夜泣きが激しい、目が合わない、こだわりが強い、集団行動が苦手…。
こうした行動を前にしたとき、「まだ小さいから」「性格のせいだろう」と自分に言い聞かせつつも、心のどこかで不安を感じている親御さんは少なくありません。
発達障害のサインというのは、実は非常に見逃されやすい特徴を持っています。特に乳幼児期の「ちょっと気になる行動」をどう受け止め、どう解釈するかで、その後の親御さんの安心感や、お子さんへのサポートの質が大きく変わってきます。
そこで今回は、**【医学的に見る“見逃しがちな発達障害のサイン”】**をテーマに、以下のポイントを深掘りして解説します。
「もしかして?」という不安を「なるほど!」という理解に変え、適切なサポートにつなげるためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。
まず、「発達障害」という言葉の定義から整理しましょう。
世間では「落ち着きがない」「コミュニケーションが苦手」といったイメージが先行しがちですが、医学的な本質は**「脳の機能的な偏り(特性)」**にあります。
発達障害とは、脳の情報処理の仕方に生まれつきの特徴があり、そのために「注意のコントロール」「対人関係の構築」「特定の学習」などに独自の傾向が出る状態を指します。親のしつけや愛情不足が原因ではなく、あくまで脳のタイプの違いなのです。
代表的な分類として、以下の3つが挙げられます。
| 分類 | 名称 | 主な特徴 | 困りごとの例 |
| ADHD | 注意欠如・多動症 | 不注意、多動性、衝動性 | 集中力が続かない、じっとしていられない、思いついたことをすぐ行動に移してしまう。 |
| ASD | 自閉スペクトラム症 | 社会性の困難、こだわりの強さ | 相手の気持ちを読むのが苦手、興味が限定的、予定の変更にパニックになる。 |
| LD | 学習障害 | 読み書き・計算の困難 | 知的な遅れはないのに、文字を読むのが極端に遅い、計算だけができない。 |
「発達障害」と聞くと、何か特別な、ごく一部の子どもの話だと思っていませんか? 実は、皆さんが思っている以上に身近な存在です。
文部科学省が令和5年度に公表した全国調査(※)によると、通常の学級に在籍する小中学生のうち、およそ8.8%に発達障害の可能性があると報告されています。
これをクラスの人数に換算すると、「およそ12人に1人」、つまり30人学級であればクラスに2〜3人は、何らかの発達特性による困難を抱えている計算になります。
※ここがポイント
この「8.8%」という数字は、医師の診断を受けている数だけではありません。「学習面や行動面で著しい困難を示す」子どもの割合です。つまり、診断名はついていなくても、現場で配慮や支援を必要としている子どもたちが、どの学校、どの地域にも当たり前に存在していることを示しています。
発達障害はもはや「特殊な病気」ではなく、**「誰もが持っている発達の多様性(ニューロダイバーシティ)のひとつ」**として捉える時代に来ているのです。
では、実際にどのような行動がサインとなるのでしょうか?
発達の特性は、ある日突然現れるものではありません。実は、乳幼児期からすでに小さなサインが見え始めていることが多いのです。しかし、幼い頃は「赤ちゃんだから」「個性だから」として見過ごされがちです。
ここでは、年齢ごとのステージに合わせて、特に見逃しやすいサインを具体的に見ていきましょう。
言葉が未発達なこの時期は、生理的な反応や基本的な動作にサインが現れます。
幼稚園や保育園などの集団生活が始まると、家庭内では気づかなかった「他のお子さんとの違い」が浮き彫りになります。
小学校に入ると、求められるルールや学習のレベルが上がり、新たな困りごととしてサインが表面化します。
ここまで読んで、「うちの子にも当てはまるかも…でも、違うかも…」と迷われる方も多いでしょう。
実は、発達障害のサインを見逃してしまう原因には、親御さんや周囲の大人が陥りやすい**「3つの思い込み(落とし穴)」**があります。
子どもは誰でも落ち着きがなかったり、癇癪を起こしたりするものです。しかし、重要なのはその**「頻度」と「強度」**です。
たまにある程度なら問題ありませんが、「毎日登園のたびにパニックになる」「一度泣き出すと1時間以上泣き止まない」「生活に支障が出るレベルで偏食がひどい」といった場合は、単なる「よくあること」の範疇を超えている可能性があります。
「昨日は大人しく座っていられたから、できないのは気分の問題だろう(甘えだろう)」と考えてしまうケースです。
発達特性のあるお子さんは、環境や体調、刺激の量によってパフォーマンスが大きく変動します。「できる日がある」ということは、「常にできる能力がある」のではなく、「条件が整えばできるが、維持するのに莫大なエネルギーを使っている」状態かもしれません。ムラがあること自体が特性の一つなのです。
これが最も見逃されやすいパターンです。
大人びた言葉を使ったり、特定の分野(電車、恐竜、数字など)の知識が凄まじかったりすると、「この子は賢いから大丈夫」と思われがちです。
しかし、ASDのお子さんの中には、語彙は豊富でも「相手の文脈に合わせた会話」が苦手なタイプがいます(積極奇異型など)。
「一方的に喋り続けるけれど、会話のキャッチボールにならない」「難しい言葉を知っているのに、友達の気持ちは分からない」というギャップこそが、支援が必要なサインかもしれません。
では、具体的にどのような状態になったら専門家へ相談すべきでしょうか?
以下に、受診を検討する目安となるサイン(レッドフラッグ)をまとめました。
| 年齢 | 相談を考える具体的な目安 |
| 1歳半〜2歳 | ・指差しをしない、目が合わない ・名前を呼んでも反応が薄い ・意味のある言葉(マンマ、ワンワン等)が出ない |
| 3歳〜4歳 | ・ごっこ遊びが発展しない、一人遊びばかり好む ・同年代の子に関心がない、または関わり方が一方的 ・パニック(癇癪)が激しく、切り替えが極端に困難 |
| 5歳〜6歳 | ・集団行動に入れないことが頻繁にある ・特定の音や感触への過敏さが生活に支障をきたす ・ルーティンへのこだわりが強すぎて融通がきかない |
| 小学生〜 | ・授業中に離席してしまう ・読み書きや計算の遅れが学年をまたいで続く ・友人トラブルが絶えない、または孤立している |
これらのサインが見られたからといって、すぐに「障害」と診断されるわけではありません。
重要なのは、診断名をつけることではなく、**「お子さんが何に困っているのか、その背景を知る」**ことです。
地域の保健センター、児童発達支援センター、あるいは小児科(発達外来)などに相談することで、「親の関わり方のコツ」を教えてもらえたり、必要であれば療育(発達支援)につなげたりすることができます。
最後に、私のクリニックでもよく聞かれる質問について、医学的な視点から回答します。
A. 医学的な根拠はありません。
これは非常によくある都市伝説のようなものですが、現時点での医学研究において、胎動の激しさが将来の発達障害(ADHDなど)に直結するというエビデンスは確認されていません。
胎動が激しいというのは、赤ちゃんが子宮の中で元気に動ける十分なスペースとエネルギーがあるという証拠です。むしろ健康なサインと言えるでしょう。
「胎動が激しかったから多動になるのでは…」と不安になる必要はありません。生まれた後の実際の行動を丁寧に見てあげてください。
A. いいえ、育て方は原因ではありません。
かつては「冷蔵庫マザー(冷たい母親)」説などが唱えられた時代もありましたが、現在は完全に否定されています。
発達障害は、遺伝的要因や胎児期の脳形成に関わる複雑な要因が組み合わさって生じる「脳の機能特性」です。親の愛情不足やしつけの厳しさ(あるいは甘さ)によって発症するものではありません。
自分を責める必要は全くありません。むしろ、「原因探し」よりも「今、どう環境を整えてあげればこの子が生きやすくなるか」という**「環境調整」**にエネルギーを向けることが、お子さんにとっても親御さんにとってもプラスになります。
今回は、見逃しがちな発達障害のサインについてお話ししました。
発達のサインは、日々の生活の中に「ちょっとした違和感」として紛れ込んでいます。
「気にしすぎかな?」と思うようなことでも、それが**「頻繁」に起き、「生活に支障(困り感)」**が出ているのであれば、それはお子さんからのSOSかもしれません。
どうか、一人で抱え込まないでください。
「診断されたらどうしよう」と怖くなる気持ちは痛いほど分かります。しかし、早期に特性に気づき、適切な環境(療育や配慮)を用意してあげることは、お子さんの自己肯定感を守り、二次的な問題(不登校やうつなど)を防ぐ最強の手段になります。
子どもの発達は「競争」ではなく、「理解と支援」の積み重ねです。
お子さんの「苦手」の背景にある「特性」を理解したとき、今までイライラしていた行動が「そうだったのか」と腑に落ち、親子の関係がふっと楽になる瞬間が必ず訪れます。
当クリニックでは、出生前診断を通じて赤ちゃんの健康に向き合うだけでなく、生まれた後の発達や育児の悩みについても、科学的根拠に基づいた情報発信を続けていきます。
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