骨形成不全症II型(Osteogenesis Imperfecta Type II)

ハート

骨形成不全症II型、あるいはII型OIという診断名を聞き、情報を求めてこのページにたどり着かれたご家族の方へ。

おそらく、妊娠中の超音波検査や、出産直後の診断でこの病名を告げられ、医師から非常に厳しい説明を受けられたのではないでしょうか。「周産期致死型」や「命の危険が高い」といった言葉に、目の前が真っ暗になり、深い悲しみと混乱の中にいらっしゃることと思います。

骨形成不全症は、骨の強さに関わる遺伝子の変化によって起こる生まれつきの体質ですが、その症状の現れ方はタイプによって劇的に異なります。

今回解説するII型は、数あるタイプの中で最も症状が重く、生命を維持することが非常に難しいとされるタイプです。

お母さんのお腹の中にいる胎児期からすでに多くの骨折が起きており、生まれたときには呼吸をすることが難しい状態であることが多いのが現実です。

しかし、医学的な分類としての「致死型」という言葉が、赤ちゃんの一生懸命生きようとする力や、ご家族と過ごす時間の価値を否定するものではありません。

現代の医療では、たとえ短い時間であっても、苦痛を取り除き、ご家族との温かい時間を作るための「緩和ケア」の考え方が浸透してきています。また、稀ではありますが、呼吸管理などを行うことで乳児期を超えて生存されるお子さんも報告されています。

今はどんな言葉も心に届かないほどお辛い状況かもしれませんが、正しい知識を持つことは、赤ちゃんのために何ができるかを考える上で、小さな灯りとなるはずです。

概要:どのような病気か

まず、この病気がどのような位置づけにあるのかを理解しましょう。

骨形成不全症とは

骨形成不全症は、骨がもろく、弱い力でも骨折しやすくなる病気です。英語ではOsteogenesis Imperfectaといい、頭文字をとってOIと呼ばれます。

全身の結合組織、つまり体を支える組織に影響が出るため、骨だけでなく、皮膚や目、耳などにも症状が出ることがあります。

II型という分類について

骨形成不全症は、症状の重さや特徴によってI型からIV型、あるいはさらに細かい型に分類されています。これをサイレンス分類と呼びます。

  • I型: 最も軽く、日常生活への影響が比較的少ないタイプ。
  • II型: 最も重く、周産期(妊娠中から生後間もない時期)に亡くなることが多いタイプ。
  • III型: 重症で、進行性の変形が見られるが、長期生存が可能なタイプ。
  • IV型: I型とIII型の中間にあたる中等度タイプ。

II型は、かつては「先天性骨形成不全症」とも呼ばれていました。

最大の特徴は、出生時、あるいは出生前から極めて重度の骨の脆弱性、つまり骨のもろさが見られることです。

そして、生命予後を左右する最も大きな要因は、骨折そのものではなく、胸郭の形成不全による呼吸障害です。

「周産期致死型」という言葉の意味

II型は医学的に周産期致死型と分類されます。

これは、多くの赤ちゃんが死産となったり、生後数時間から数日、あるいは数週間で呼吸不全により亡くなってしまったりするという統計的な事実に基づいています。

しかし、これは「全ての赤ちゃんがすぐに亡くなる」という意味ではありません。近年の新生児医療の進歩や、ご家族の希望による積極的な呼吸管理によって、数ヶ月、あるいは年単位で生存されるケースもわずかながら存在します。

そのため、最近では「周産期致死型」という呼び方ではなく、「重症型」と呼ぶ動きもありますが、依然として非常に厳しい病状であることに変わりはありません。

発生頻度

骨形成不全症全体の発症率は約2万人に1人から3万人に1人と言われていますが、II型のような重症型は約6万人に1人程度の頻度と考えられています。

主な症状

II型の症状は、全身の骨格と呼吸器に極めて強く現れます。

超音波検査(エコー)や出生後の身体所見で確認される特徴について詳しく見ていきましょう。

1. 呼吸不全と胸郭低形成

II型の赤ちゃんの生命にとって最大の壁となるのが、呼吸の問題です。

私たちの肺は、肋骨や背骨で囲まれた「胸郭」というカゴの中に守られています。息を吸うと胸郭が広がり、肺に空気が入ります。

しかし、II型では肋骨が非常に細くもろいため、お腹の中にいる間に肋骨が多発骨折を起こしてしまいます。

折れた肋骨は短くなり、波打つように変形します。その結果、胸郭全体が非常に小さく、狭くなってしまいます。これを胸郭低形成と呼びます。

胸郭が小さいと、その中にある肺が十分に成長することができません(肺低形成)。

生まれた直後、赤ちゃんが自分で息をしようとしても、肺が小さすぎて十分な酸素を取り込めない、あるいは胸郭が柔らかすぎて呼吸の動きを支えられないため、重篤な呼吸不全に陥ります。

2. 子宮内骨折と四肢の短縮

II型の赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいる胎児期から、子宮の壁に当たるなどのわずかな刺激で骨折を繰り返しています。

生まれたときには、すでに全身の骨に多数の骨折が見られます。

特に、腕や足の長い骨(長管骨)は、骨折と修復を繰り返すことで短く押しつぶされたようになり、アコーディオンのようにくしゃくしゃに変形してしまうことがあります。

その結果、手足が極端に短くなり、特徴的な姿勢をとることが多いです。

3. 頭蓋骨の特徴

頭の骨の形成も非常に悪く、ほとんど骨として硬くなっていない状態です。

触ると非常に柔らかく、ブヨブヨとした感触がすることがあります。これを膜性頭蓋と呼びます。

頭の骨が柔らかいため、産道を通るときの圧力で脳にダメージを受けやすく、頭蓋内出血を起こすリスクも高くなります。

また、おでこが広く、あごが小さい顔立ちや、眼球が相対的に飛び出して見えることがあります。

4. 強膜の色(濃い青色)

骨形成不全症の特徴である青色強膜が見られます。

白目の部分が非常に薄いため、眼球の内側の色素が透けて見え、濃い青色や灰色に見えます。

5. レントゲンでの特徴的所見

医師が診断を下す際、レントゲン写真は非常に重要な情報源となります。II型には特有の写り方があります。

  • 数珠状肋骨: 肋骨があちこちで骨折し、治りかけた部分が団子状に膨らむため、まるで数珠がつながっているように見えます。
  • アコーディオン状の大腿骨: 太ももの骨がくしゃくしゃに押しつぶされ、太く短く変形しています。
  • 頭蓋骨の透亮像: 頭の骨が薄すぎてレントゲン線を通してしまうため、骨の影がほとんど写らず、透明に見えます。
医者

原因

なぜ、これほどまでに骨が作られないのでしょうか。その原因は、骨の「鉄筋」にあたるタンパク質の構造に致命的な欠陥があるためです。

I型コラーゲンの「質」の異常

骨形成不全症II型の原因は、I型コラーゲンというタンパク質を作る遺伝子の変異です。

骨は、カルシウムなどのミネラル成分(コンクリート)と、コラーゲン繊維(鉄筋)の組み合わせでできています。

I型コラーゲンは、3本の鎖がらせん状に絡まり合ってできる、非常に丈夫なロープのような構造をしています。

II型の患者さんでは、この鎖を作る遺伝子に変異があり、アミノ酸の配列が書き換わっています。

I型コラーゲンのらせん構造は、非常に精密なバランスで成り立っており、中心部分には必ず「グリシン」という一番小さなアミノ酸が来なければなりません。

しかし、II型ではこのグリシンが別のアミノ酸に置き換わってしまっています。

ドミナント・ネガティブ効果

これがII型を重症化させる最大の要因です。

軽症のI型(骨形成不全症I型)では、正常なコラーゲンが半分しか作られない「量の減少」が原因です。量は少ないですが、質は良いため、ある程度の強度は保たれます。

一方、II型では、変異を持った異常な鎖が作られます。

コラーゲンは3本の鎖が絡まって完成するため、たった1本でも異常な鎖が混ざり込むと、完成品であるコラーゲン繊維全体の構造が歪み、機能しなくなってしまいます。

さらに悪いことに、異常なコラーゲンが細胞の中に溜まってしまい、細胞自体にストレスを与えたり、正常な骨作りを邪魔したりします。

これをドミナント・ネガティブ効果といい、正常なコラーゲンが半分あるにもかかわらず、全体として壊滅的な影響が出てしまう理由です。

原因遺伝子と遺伝について

原因となる遺伝子は、COL1A1またはCOL1A2です。これらはI型コラーゲンの鎖の設計図です。

この病気は常染色体顕性遺伝という形式をとりますが、II型の患者さんのほぼ全員が、ご両親からの遺伝ではなく、お子さんの代で初めて変異が起こる突然変異によるものです。

これは、受精卵ができる過程、あるいは精子や卵子ができる過程で偶然に起きた変化であり、誰のせいでもありません。

「妊娠中の栄養が悪かった」「無理をして動いた」といったことは一切関係ありません。

次のお子さんが同じ病気になる確率は、一般的には低いですが、稀に「性腺モザイク」といって、親御さんの卵子や精子の一部にだけ変異があるケースがあるため、遺伝カウンセリングでの相談が推奨されます。

診断と検査

診断は、出生前診断で見つかることもあれば、生まれた直後の身体所見とレントゲン検査で判明することもあります。

1. 出生前診断(超音波検査)

II型は症状が重いため、妊娠中期の超音波検査(エコー)で発見されることが多いです。

  • 手足の骨が極端に短い。
  • 骨が曲がっている。
  • 胸郭が小さく狭い。
  • 頭の骨が薄く、脳の構造が透けてよく見える。
    これらの所見が見られた場合、骨形成不全症II型などの重篤な骨系統疾患が疑われます。
    確定診断のために、羊水検査や、近年ではNIPT(新型出生前診断)などの遺伝学的検査が行われることもあります。

2. 出生後の診断

生まれた直後、呼吸が弱いことや、手足の変形、頭の柔らかさなどから疑われます。

全身のレントゲン撮影を行うことで、先述した「数珠状肋骨」や「アコーディオン状の大腿骨」などの特徴的な所見を確認し、診断が確定します。

3. 遺伝学的検査

血液を採取し、DNAを解析してCOL1A1またはCOL1A2遺伝子に変異があるかを調べます。

これにより、正確な診断とともに、将来的な遺伝カウンセリングのための情報を得ることができます。

治療と管理

II型に対する治療は、以前は「治療の手立てがない」とされることもありましたが、現在は赤ちゃんの尊厳を守り、苦痛を取り除くことを最優先にしたケアが行われます。

1. 緩和ケア(コンフォートケア)

II型の赤ちゃんにとって、最も大切な治療です。

骨折による痛みや、呼吸困難による苦しさを、薬や環境調整によって最大限に取り除きます。

  • 疼痛管理: 鎮痛薬を使って痛みを取ります。抱っこや着替えの際は、骨折させないように細心の注意を払ったハンドリング(抱き方)を行います。
  • 保温と保湿: 赤ちゃんが心地よく過ごせる環境を整えます。

2. 呼吸管理の選択

ここがご家族にとって最も難しく、重要な決断となります。

自力での呼吸が難しい場合、どこまで医療的な介入を行うかという話し合いが必要になります。

  • 酸素投与のみ: マスクなどで酸素を補い、苦しさを和らげます。
  • 人工呼吸器: 気管内挿管を行い、機械で呼吸を助けます。これを行うことで命をつなぐ時間は長くなりますが、根本的な胸郭の小ささは治らないため、人工呼吸器を外すことが難しくなる可能性があります。

近年では、ご家族の価値観や希望を尊重し、医療チームと話し合いながら方針を決めるACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方が重視されています。

「一日でも長く生きてほしい」という願いも、「苦しい思いをさせたくない」という願いも、どちらも親として当然の深い愛情です。正解はありません。

3. 薬物療法(ビスホスホネート製剤)

本来は骨を強くするお薬ですが、II型のお子さんに対しては、主に「骨折による痛みを和らげる」目的で使用されることがあります。

点滴で投与することで、痛みが減り、表情が穏やかになる効果が期待されます。

4. 家族との時間を作る

NICU(新生児集中治療室)などの環境であっても、できる限りご家族が赤ちゃんに触れ、声をかけ、抱っこできるような工夫が行われます。

クッションやタオルを使って骨折しないように支えながら抱っこする方法を、看護師や理学療法士がサポートします。

手形や足形をとったり、写真を撮ったり、兄弟姉妹と面会したりといった、家族としての思い出作りも大切なケアの一つです。

まとめ

骨形成不全症II型についての解説をまとめます。

  • 病気の本質: I型コラーゲンの質の異常により、骨が極端にもろく、形成不全が起きる病気です。
  • 主な特徴: 胎内からの多発骨折、著しい四肢短縮、そして胸郭低形成による重篤な呼吸不全が特徴です。
  • 予後: 周産期致死型と呼ばれ、呼吸不全により早期に亡くなることが多いですが、生存期間には個人差があります。
  • ケアの中心: 苦痛を取り除く緩和ケアと、ご家族の意向を尊重した呼吸管理、そして赤ちゃんとの時間を大切にすることが中心となります。

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